22/12/20 (火) 「サプライズとなった日銀金融政策決定会合」引け後情報
サプライズとなった日銀金融政策決定会合
月曜日の欧米市場で欧州株はプラスが多く、一方で米国株市場では主要三指数が4営業日続落となりました。
そんな中で日経平均株価は自律反発的にプラス圏で始まり、前場では一時は上げ幅を100円程度まで伸ばし、上昇が続くという展開ではなかったものの底堅さがみえました。一方でNASDAQの下落もあってかマザーズ指数に関しては軟調さがみえていました。
ところが前引け後の市場の昼休み中、日銀の金融政策決定会合の結果が出ると、大方の予想では現状維持となっていたようですが、それに反して長短金利操作(イールドカーブコントロール、以下YCC)の運用の見直しが発表され、長期金利の変動幅の上限をこれまでの0.25%から拡大し、0.50%へ上昇することになりました。
発表直後に事実上の利上げとして市場に捉えられたのか、今回の突然の対応によって日経平均先物は急落し、一方で為替では円高方向に大きく振れる動きになりました。
日経平均株価は安いところで800円以上下落する場面もあり、マザーズ指数は5%以上下落する場面もあるなど、今回のサプライズによって大きく売られてしまいました。
業種別指数をみると、金利の上昇をポジティブ材料として見ることもできる業種として注目されそうな銀行業、保険業が実際大きく上昇した一方、逆にネガティブにみられそうな不動産業が最も大きく下落し、東証REIT指数も大きく下落しました。
また東証グロース市場の値上がり数は14銘柄だけで、全体のわずか2%になるなど全体として売られたほか、東証プライムも値上がりが全体の11%(値下がりが87%)という結果になりました。
日銀金融政策決定会合の結果と会見
15時半からの黒田総裁の会見の中で個人的に特に気になった発言などのごく一部をまとめてみます。
まず今回のYCCの運用見直しについての意図は「春先からの高まっている金融資本市場のボラティリティが最近再び高まっており、歪みが生じてきたYCCの形状がなかなか是正されていない。金融緩和の効果をより円滑に波及させるために歪みを正す必要があり、そのための措置」というような説明をしました。
(「イールドカーブの歪み」については日銀のホームページの今日の公表文の中の「イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直し」というPDFファイルに残存年限10年の位置で歪みのあるグラフが描かれています。)
冒頭の説明でも「必要あれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」とのいつも通りの立場を示した上で、事実上の利上げにはあたらないのかという質問に対し、「市場機能を改善させるための措置であり、利上げではない」という説明をおこないました。
また昨日報道で「政府と日銀の共同声明について改定する方針が出された」とされ、その後松野官房長官が否定しましたが、この修正の必要性について質問されると「現時点で共同声明の見直しが必要であるとは考えていない」と
「以前は上限の引き上げは金融緩和の効果を阻害すると発言していた」と質問の中で指摘されると、「国債の買い入れを増額する上、指し値オペを10年物だけでなく必要となれば各年限で実施していく。さらに春先から現在にかけて予想物価上昇率の上昇により実質金利は下がってきているため、金融緩和の力は物凄く増加していることも背景してある」という発言をしました。
今回のYCCの運用見直し措置に対して、「利上げではない」とし、さらに「出口戦略ではない。出口戦略などについて具体的に論じるのは時期尚早」という発言をするなど、あくまで金融緩和の効果をより円滑に波及させるための措置という点を強調しました。
ドル円をみると、見直しの発表の直前は137円台でしたが、そこから一気に133円台になり、会見の直前には132円台にもなりました。会見の中身は利上げの否定となっていたものの、133円半ばまでしか会見中は戻さず、会見後も円買いが進み、一瞬131円台にもなりました。
明日の注目ポイント
今回の突然の大規模緩和の修正決定によって日経平均株価が大きく下落したことにより、テクニカル的にも大きな動きになってしまったため、最近の下落で一気に近づいていて、下値形成として意識されていたであろう200日移動平均線を大きく下に抜けることになるなど、チャートも乱れている状況ですので、テクニカル面での動きも気にしておきたい年末になりました。
またマザーズ指数は直近IPO銘柄の多くが大きく値を下げ、心配される需給面にネガティブな印象を与えてしまった形になっています。
S&P500先物やNASDAQ100先物なども、プラスで推移していたところから下げ幅を縮めマイナスに転じるなど、他国の市場にも影響が及んだような動きをみせましたが、会見後は切り返したものの、欧州株が反落していることもあってなのか上げ幅は下落前より小さくなっています。
ただ日本の株価先物は会見後も夕方時点ではあまり戻す様子を見せておらず、これが「日銀のスタンスを否定し出口戦略に一歩だと判断しているからなのか」、「欧米時間が本格的に始まるまで待っているからなのか」、それとも「会見の内容をうまく消化できず様子見しているからなのか」、はたまた「年末を前にあまり動きたがらないからなのか」……
様々な可能性が考えられるため、まずは欧米が本格的に動く時間を待ち、さらに明日の実際の市場の動きも朝からチェックしようと思います。
来年の日銀金融政策決定会合を考える上で、今回話題になったイールドカーブの歪み(特に8年物、9年物、10年物あたりの利回りの歪み)を次回1月17~18日の会合に向けてしばらくチェックしておこうと思います。
指数・今後の重要イベント
12/20 終値
日経平均株価:26568.03 (-2.46%)
TOPIX : 1905.59 (-1.54%)
マザーズ : 726.83 (-4.71%)
東証プライム市場指数 : 980.53 (-1.54%)
東証スタンダード市場指数 : 990.55 (-1.63%)
東証グロース市場指数 : 921.90 (-4.58%)
スタンダード市場トップ20: 966.41 (-1.26%)
グロース市場コア : 872.46 (-5.00%)
東証プライム 売買代金:40756億円
イベント
2022年12月第4週
12/20 (火):米11月住宅着工件数
12/21 (水):米11月中古住宅販売件数
12/23 (金):米11月個人所得・個人支出・PCEデフレーター
12/23 (金):米11月新築住宅販売件数
12/23 (金):米11月耐久財受注 速報値
2022年12月第5週
12/26 (月):クリスマス 米休場
12/28 (水):配当・株主優待 権利付き最終日
12/30 (金):大納会
2023年1月第1週
01/02 (月):元日振替休日 日米休場
01/03 (火):日本休場
01/04 (水):11月JOLTS雇用動態調査
01/04 (水):米12月ISM製造業景気指数
01/04 (水):FOMC議事要旨公表
01/05 (木):米12月ADP雇用統計
01/06 (金):米12月ISM非製造業景気指数
01/06 (金):米12月雇用統計
2023年1月第2週 (SQ週)
01/09 (月):成人の日 日本休場
01/12 (木):米12月消費者物価指数
01/13 (金):米1月ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値