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25/02/21 (金)「雑な長期金利発言と今日の補足説明」引け後情報


【コラム欄要点】

タイトル:
雑な長期金利発言と今日の補足説明

今回の内容は、


国内の長期金利が最近大きく上昇しているだけに、日銀や政府高官が長期金利に発言する機会も増えています。
水曜日の日銀メンバーには無かった発言が、今日の衆院予算委員会における植田総裁発言があったことに注目。

という話。

植田発言により円高一服で下げ渋る動き

簡単な今日の日本の相場の振り返り

本日の日経平均株価、TOPIXは3営業日ぶりの反発📌となりました。
前日の米国株の下落に加え、引き続き好材料に乏しく、ドル円の円高方向への動きも重しとなった日本株の指数は続落スタート。
しかし、前場の途中で植田総裁の発言が伝わると、国内長期金利の下落とともに円安方向への動きがみられ、日経平均株価やTOPIXはプラス圏に浮上しました。
3連休前であり、他に明確な好材料がないということもあって、両指数は前日終値付近から一段と買い上がる形にはならなかったものの、底堅い値動きとなって終えました。

(日経平均株価 日足チャート)

より詳細な振り返りはコラム欄のあと。
今朝のnoteにて注目ポイントとした点を中心に振り返っていきます。


コラム:雑な長期金利発言と今日の補足説明

(今回コラム欄の文字数:1663文字)

-- やはり出た、長期金利に関する言及 --

今週は日本国内の長期金利(10年物国債利回り)上昇の動きが続いたため、日銀や政府高官に長期金利の動向についてコメントを求められることが多くなっていました。

今週の水曜日の高田審議委員の会見の中でも、長期金利について聞かれることがありました。

昨日の夕方noteの最後に私の一言コメントとして、その日銀発言の"雑さ"に触れたコメントをしてしまいましたが、今日はさっそくそれをフォローするような追加説明が衆院予算委員会の中での植田総裁の答弁にありました📌ので、まとめておきます。


-- 雑な発言とその修正 --

高田審議委員の発言とその見方については以前のコラム欄でまとめたため、軽くだけ触れ直す形にします。

長期金利の上昇について触れられた高田審議委員は、その上昇の背景を
「YCCをやめた後の先行きに対する経済ですとか、それから物価に対する見通しですとか、そういったものを普通に反映したもの」
という表現にして、懸念点などをあげるようなことはしませんでした。

しかし以前のコラム欄でもまとめたように、米国ではFed高官は金利上昇の背景については財政の問題が影響したりといった債券市場の需給の問題でも上下するリスクを丁寧に説明する場合があります

これは、
「現状の水準が必ずしもFRBの今後の動きを市場が正しく予測して反映しようとしているだけではない」
ということのアピールであったり、
「FRBが想定している以上の金利上昇効果が市場に出てしまう(または金利水準を過小評価されて思うより金利の効果が出ていない)リスクがやや高まっている」
ということの主張するためだと考えられます。

そんな中、今日は衆院予算委員会で植田総裁が発言
長期金利の上昇の背景は高田審議委員の発言とズレは無く、
「基本的には景気の緩やかな回復が持続していることや、基調的な物価上昇率が高まってきていることを反映した動き」
としました。
ただし、例外的に上昇する場合には「機動的に国債買い入れの増額等を実施する」という発言📌📌をしました。

結果としては、高田審議委員発言の際には足りなかった、「インフレ見通しなどの変化とは関係ない動きでの上昇リスクには対応する」という補足をした📌ことになります。


-- "正常な金融政策運営の国"を早くも気取る --

やや批判的なコメントになってしまいますが、個人的に気になったのは、丁寧な発信を"日銀メンバー"がしっかり出来ていないということの頼りなさです。

先に述べたように、FRB高官の一部には長期金利の動きの背景を説明する際には「市場は正しく今後の動きを織り込んでいる」という"だけ"のコメントにならないような配慮がみられます。
財政の問題は大きくなりがちな米国にとって、そうした問題が債券市場の需給に働きかけることを常に認識しておかなければならないという気持ちがあるからなのだと感じます。

一方、日本では(財務省が大騒ぎするのを除けば)財政のリスクが市場の中で大きな話題となることがありません。そのため、そうした配慮が馴染んていないという面もあるでしょう。

しかし、日本は昨年までYCC(イールドカーブ・コントロール)のもとで、長期金利を一定の水準まで動かないように操作してきました。
YCC撤廃までの約1年間の中で、植田総裁のもとで「長期金利が市場の中で動けるような環境作り」としてYCCの調整を繰り返した甲斐もあって(これは植田総裁の大きな成果だと感じます)、長期金利の大きく歪んだ動きをなるべく起こさないようにできています。
しかし、そのYCC調整を「債券市場のリハビリ」と表現するのであれば、未だ日本の債券市場は"リハビリ明け"📌📌だと感じます。

植田総裁は今日の予算委員会で「注意深く市場の状況を見守る」と表現しました。
そうした発言を出来なかったという意味で、先日の高田審議委員の発言は、早くも日本を「通常の金融政策運営をおこなっている国」という過大評価にしているように感じてしまいます

しかしバランスシートなどをみても、日本は"正常化の最中"
驕りから思わぬショックなどを起こさないよう、気を引き締めた金融政策運営の継続をしてほしいと思います。


今日の相場(朝の注目点との照らし合せ)

(①、②などの番号は前回のnoteで注目ポイントとした内容の番号に連動して割り振っています)

-- ①ドル円の上下に合わせ --

(朝の注目点:CPIへの反応)

昨日の日経平均株価、TOPIXから振り返ると、国内長期金利の上昇、一方で米長期金利の下落という動きの中でドル円が大きく円高方向に進みました。
好材料が不足しており、むしろトランプ政策の不透明感など重しが目立つ日本株にとって、ドル円の円高もまた大きな重しとなり、株価指数の下落に繋がっていました。

昨晩の米国株もまた好材料が無い中で売りに押され、主要三指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ総合)が揃って下落した状態で、今朝の日本時間へと折り返してきました。

今日は株式市場の開始前に日本の1月全国CPI(消費者物価指数)の発表がありました。CPIの加速自体は市場で既に織り込まれており、ドル円は大きく反応しなかったものの、昨晩の米国株安と好材料不足、またドル円が150円割れとなっていることは、今朝も日本株の重しとなっていたのか、日経平均株価とTOPIXは続落スタート📌

しかし、前場の途中で日銀の植田総裁が衆院予算委員会の中で国内長期金利について例外的に上昇する場合には「機動的に国債買い入れの増額等を実施する」という発言📌をしたことを受け、国内長期金利がやや低下。
それに合わせてドル円も円安方向に進み、150円台に戻していきました。
日本株もそれに合わせて下げ幅を縮めていく動きとなりました。


-- ②好材料不足で特定銘柄に資金集中 --

(朝の注目点:好材料不足)

ただ、明日から日本は3連休。
相場全体を支えるような好材料が不足している状態は変わらず、積極的に上値を買っていく動きは見られませんでした。
プライム市場の売買代金は月曜日の米国の祝日もあって盛り上がりに欠けた月曜日・火曜日を下回り、今週の中では最低📌となりました。

そんな中で、最近は材料があって需給の良い銘柄に短期資金も巻き込んで集中する傾向📌📌が出ています。
今日はDeNAがいちよし証券による投資判断格上げと大幅な目標株価引き上げを受けてか、急騰の動きをみせており、プライム市場の売買代金トップとなりました。


東証業種別・市場別指数などの動き:

東証の業種別指数をみてみると、33業種中19業種上昇でした。
(左側の『25日移動平均』は、各業種の25日移動平均値。
その隣の割合は、移動平均に対する現在地の乖離率。)

・医薬品、ゴム製品
医薬品セクター、ゴム製品のセクターがそれぞれ4営業日ぶり反発。
ただ年始からのパフォーマンスでいえば、医薬品は軟調、ゴム製品は(ブリヂストンの値動きによって)好調となっており、対照的。

・非鉄金属
最近は電線関連を含むため注目される非鉄金属セクターですが、これで7営業日続落

東証の発表した本日の空売り比率の合計は40.4%
前日より低下。
日経平均ボラティリティー・インデックスは前日終値付近で推移。
終値としてはわずかに上昇。

その他の主な動き:

本日の全市場の売買代金ランキング上位25位、スタンダード、グロース市場の上位10位はこのようになっていました。

・DeNA、サンリオ
今週は決算を受けて週明けにサンリオがプライム市場の売買代金トップとなったように、普段まったく最上位にならないような銘柄が半導体株などを差し置いてトップになることが増えています。
今日は投資判断引き上げを材料視されたDeNAが急騰。
サンリオも上昇

・日産自動車
Financial Timesの報道によってTeslaによる投資に関する思惑が広がり、後場に急騰。
ただし、イーロンマスク氏は報道に対してX(旧Twitter)にて、Teslaの工場"そのもの"が製品(つまりは強み)だとするポストを投稿。
大引け後のPTSも含め、その真意を探るような値動きも。


来週の注目ポイント

-- 今晩の米国市場 --

今晩の米国市場のポイントとして、
PMI発表後の長期金利の動き
を挙げます。

今晩は欧米のPMI速報値の発表があります。
米国では長期金利(10年物国債利回り)が最近は右往左往。
そのため、PMI速報値の発表後の動きにも注目。

-- 来週の日本市場 --

来週は水曜日の米取引時間終了後にNVIDIAの決算が控えています。
最近は半導体株による盛り上がりが薄い日本株。
それが方向感の欠けた動きにも繋がっていそうです。
今回の25年度4Q決算がどうなるか、そして2026年度決算にむけてどんな見通しを出してくるのか。
DeepSeekが大きな話題となってからの初めての決算となるため、市場がどんな織り込み方をしていて、その織り込みに対してどの程度の強さの見通しになるのか📌に要注目。


今日の小言

(相場に関係ある話・ない話をテキトーにつぶやく場)

正直、生意気に批判的に今回のコラム欄を書き過ぎたかな……と思っています。
しかし、先日の高田審議委員の発言は、タカ派だとかハト派だとかいう以前に、「雑な返しだな……」という印象でした。
仮に日銀がこの先の長期金利の更なる上昇もあり得ると見ていて、金利の上昇を妨げるような発言を意図的に控えているなら「しょうがないか」とも思えたのですが、今日の植田総裁の発言を聞いてしまうと
「やっぱり付け加えることがあるじゃん!」
と思えてしまう内容でした。
(とはいえ、水曜日の市場ではメディアもマーケットも長期金利発言に一切フォーカスしている様子を見せなかったので、やっぱりここまで目くじらを立てるように批判する必要も無かったのかなぁ……)

昨晩は米国でもベッセント財務長官が中長期債の増発時期についてコメントをしていました。
やはり今の相場では、日米それぞれの長期金利の動向は非常に重要な動きであると感じます。


指数・今後の重要イベント

終値
日経平均株価       : 38,776.94 ( +0.26% )
TOPIX        :  2,736.53 ( +0.07% )
東証グロース市場250  :    680.22 ( -0.46% )
スタンダード市場トップ20: 1,239.57 ( -0.23% )
グロース市場コア     :  930.50 ( -1.20% )

東証プライム 売買代金: 43160億円


イベント
(誤字、表記ミスがたまにあるため、必ず自身でもご確認を)

2025年2月第3週
02/21 (金): 日本1月全国消費者物価指数
02/21 (金): 欧米2月PMI 速報値
02/21 (金): 米1月中古住宅販売件数

2025年2月第4週
02/24 (月): 天皇誕生日 振替 日本休場
02/25 (火): 米2月消費者信頼感指数
02/26 (水): 配当・株主優待 権利付き最終日
02/26 (水): 米1月新築住宅販売件数
02/27 (木): 米実質GDP(改定値) Q4
02/27 (木): 米1月耐久財受注 速報値
02/28 (金): 日本2月東京都区部消費者物価指数 速報値
02/28 (金): MSCI定期見直し実施前日(リバランス発生見込み) 
02/28 (金): 米1月個人所得・個人支出・PCEデフレーター

2025年3月第1週
03/03 (月): 米2月ISM製造業景気指数
03/05 (水): ベージュブック公表
03/05 (水): 米2月ADP雇用統計
03/05 (水): 米2月ISM非製造業景気指数
03/06 (木): ECB理事会
03/07 (金): 日銀公表 1月消費活動指数
03/07 (金): 米2月雇用統計
03/09 (日): 米サマータイム 開始

2025年3月第2週(メジャーSQ週)
03/10 (月): 日本1月分毎月勤労統計調査 速報
03/10 (月): 景気ウォッチャー調査 2月調査
03/11 (火): 日本実質GDP(二次速報値) Q4
03/11 (火): 日本1月分家計調査
03/11 (火): 1月JOLTS雇用動態調査
03/12 (水): 米2月消費者物価指数
03/13 (木): 米2月卸売物価指数
03/14 (金): 米3月ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値

2025年3月第3週
03/17 (月): 米2月小売売上高
03/18 (火): 日銀金融政策決定会合(~03/19 19日に会見予定)
03/18 (火): FOMC(~03/19 日本時間20日早朝にパウエル議長会見予定) 
03/18 (火): 米2月住宅着工件数
03/18 (火): 米2月鉱工業生産
03/20 (木): 春分の日 日本休場
03/20 (木): 英国金融政策委員会
03/20 (木): 米3月フィラデルフィア連銀製造業景気指数
03/20 (木): 米2月中古住宅販売件数
03/21 (金): 日本2月全国消費者物価指数

2025年3月第4週
03/24 (月): 欧米3月PMI 速報値
03/25 (火): 米2月新築住宅販売件数
03/25 (火): 米3月消費者信頼感指数
03/26 (水): 米2月耐久財受注 速報値
03/27 (木): 配当・株主優待 権利付き最終日
03/27 (木): 米実質GDP(確報値) Q4
03/28 (金): 日本3月東京都区部消費者物価指数 速報値
03/28 (金): 米2月個人所得・個人支出・PCEデフレーター

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