『敗者のゲーム』の要約。資産運用で押さえるポイント
チャールズ・エリスさんの著作『敗者のゲーム』
長期投資が信条の私にとっては、絶対に読まなければいけない本でした。
だけど…積読。
本棚に2年近くも積読されていたんです。歴史的な名著は積読率が高くなっています。
どういうわけか、いまどきの話題本ばかり読んでしまうんですよね。
反省も踏まえて、この度ついに読むことにしたんですが、これが素晴らしい。どうして早く読まなかったのか…反省しております。
株式を長期保有ガチホするなら、絶対に必読の書です。
なので、これから要約を書いていきます。
最初は資産運用のポイントを解説します。資産運用は必須です。あなたのお金にも働いてもらいましょう。
資産運用で押さえるポイント
運用は「敗者のゲーム」になった
機関投資家の運用成績は、実は期待外れなことが多いです。
機関投資家の実績を見てみると、投資信託や年金なども市場平均を上回れていない。
もちろん、ときどきは市場平均を上回ることもありますが、長続きはしていないです。
・1年間では約6割のマネージャーが市場平均を下回る
・10年間では約7割のマネージャーが市場平均を下回る
・20年間では約8割のマネージャーが市場平均を下回る
言うまでもなく、個人投資家の運用成績はさらに悪いです。
資産運用は、この数十年で「勝者のゲーム」から「敗者ゲーム」変わりました。証券運用の世界で根本的な変化が起きてしまったことが原因。
市場平均よりも高い成果を得ようとする機関投資家があまりにも増えすぎて、市場を支配する状況になってしまったんです。
ヘッジファンド、投資信託、年金基金など、数多くの機関投資家が一日も休まず激しい運用競争をしています。私を含む個人投資家は、圧倒的な情報、知識や経験を備えた機関投資家であることを知っておくべき。
結論を言ってしまえば、運用機関が市場平均を上回れないのなら、市場を忠実に反映するインデックス・ファンドへの投資が無難だと思います。
投資に勝つ方法は、長期投資。目標設定を明確にして、その目標を実現するために合理的で現実的な戦略を立てることです。さらに何があってもブレず、忍耐強く目標を貫きましょう。
運用機関の本当の役割とは
投資家が運用目標を達成できないケースは、本当に多いです。
これってもちろん投資家自身に問題があるわけですが、責任の多く運用機関にあります。
資産運用業はとても複雑に見えますが、本質的な性格は2つです。
①投資家のために最善をつくす
➁収益追求の事業
顧客満足こそが、運用機関にとっての大きな目標。そしてビジネス成功への基本となります。
インデックス・ファンドは投資のドリーム・チームだ!
インデックス・ファンドを使えば、「ドリームチーム」のスタッフ抱えるのと同じメリットを得られます。
投資で勝つためには、そして勝ち続けるには、インデックス・ファンドを活用することです。
さらに個人投資家にとって大切なのは…
・適切なリスクをとること
・長期的に、合理的に期待できるリターンが、目的に合っていること
インデックス・ファンドのメリットを確認しておきましょう。
・相対的にリターンが高い
・低コストである
・運用実績を管理する手間が少ない
・あまり不安や後悔を感じない
・運用目的や長期投資の方針などに専念できる
インデックス・ファンドのメリットを得るには、適切なファンド選びが必要です。国際的に最大限分散された最小コストのファンドを選びましょう。
インデックス・ファンドは多数ありますが、その手数料はまちまちです。
インデックス・ファンドに代わるものとしては、上場投資信託(ETF)があります。
ETFは取引所の営業時間内であれば、いつでも購入及び売却が可能です。
しかも、運用報酬がインデックス・ファンドよりも約0.1%安い。一方でインデックス・ファンドの購入手数料は無料であることが多いですが、ETFは証券会社の手数料が掛かってしまいます。(運用報酬や購入手数料は証券会社によって差がある)
なので定期的に投資する場合は、インデックス・ファンドの方がいいです。
どうしても運用につきまとう矛盾
資産運用は矛盾だらけです。運用機関のほとんどが、市場平均を上回るという無意味で難しいことに時間を費やしています。
運用機関と投資家が追求すべき目標は4つです。
①投資家のニーズを理解する
➁個人投資家・機関投資家の目的に合った運用目的を定める
③投資家のリスク・リターン特性に合った資産配分を作成する
④長期運用目的を達成するように、明確で合理的な運用基本方針を作成する
ほとんどの運用機関は、投資家の本当の目的を理解していない。ハッキリとした合意がないままポートフォリオ運用をさせれています。これは投資家の責任ですよね。
投資家は自らの運用目的を見つめ直すことです。市場平均を上回ろうとして無駄な努力をしないで、投資家自身が長期運用方針を作りましょう。
そうすることで、合理的で達成可能な目標に全集中できます。
運用を理論的に見てみよう
どうして運用基本方針が必要なのか
投資家は長期の運用基本方針を作ったら、文字にして書き残すべき。
なぜかというと短期的な市場危機で方針変更せずに、長期方針を貫くためです。
長期方針を短期的な危機や不安心理から守るためには、自分自身の性格や自分の投資目的を深く理解することです。
なので、投資戦略を書き残しておくことが大切になってきます。
周りがパニックになると、冷静な判断を下すことは難しくなって狼狽売り…
自分だけは冷静でいられるなんて思わないことです。
株価が下がると株を買うのをやめる。それどころか狼狽売り。株価が上がれば、追加投資のリターンは低下するのにニコニコする。
目標通りの成果を得ることができれば、投資家としては成功と言えるでしょう。
自分自身の長期目標に合わせて作った長期運用方針に従えば、目標は達成されます。
成功する運用基本方針策定のポイント
全ての投資家にとって、投資で成功する秘訣は…
①証券会社、投資信託の宣伝広告、ファンドの運用成績、市場見通しなどを完全に無視すること
➁長期的に見て、もっとも可能性が高い運用基本方針をつくること
□運用基本方針のチェックポイント
✓運用基本方針が、あなたの長期的目標に合っているか
✓あなたの意図に合わせられるように、方針が明文化されているか
✓常識が覆されることが多かった過去50年間(特に2008年)の混乱期に運用していたら、あなたは自分自身方針を貫くことができたか
✓貫けたとして、あなたは長期目標を達成できたか
上記のチェックポイントを全てクリアできるなら、適切な運用基本方針と言えるでしょう。
運用成果測定の狙い
ファンドマネージャーの優秀さや、マネージャー変更が必要か判断する場合、どのようなデータを用いても正確な情報ではないでしょう。
サンプルが少なすぎたり、測定期間が短かったりします。
当然、測定期間長ければ正確性は増しますが、それでも結果が極端でない限り、運用機関が優秀かどうかの根拠にはならないです。
ポートフォリオ運用の成績は、短期間では判断できません。
ここでお知らせがあります。長期にわたって市場平均を2%以上上回る投資信託は無いんです。
有名ファンドの大部分は計測期間を都合よく選んで、最低2%は市場平均を上回っていると宣伝しています。
データの上では、最近まで好成績を収めていたファンド・マネージャーであっても、その後調査するとパフォーマンスが低下していることが多いです。
運用成績が低かったとします。それは運用機関の方針が、たまたま市場動向に合わなかったからでしょう。
反対に市場動向が運用機関の方針に合った場合、市場平均以上の収益があがります。
なので計画自体がうまく進んでいるなら、その運用機関に資金を多く任せるべきです。
市場予測は難しい
投資期間が長期にわたるほど「平均値」へ向かう動きが多く見られます。
もちろん、株式市場は多くの企業の動向だけではなく、経済全体が反映される難しい生き物です。
投資家にとって大切なことは…
①企業収益水準(さらに配当)
➁PER(株価収益率)
長期的な株価水準を大雑把に予想するのは、決して難しくありません。
正確に予想するのは不可能ですけどね。
また、長期的に株価の水準を予想することはできても、短期的な株価水準を予想するのは難しいです。そもそも、そんな予想って無意味だと思います。
個人投資家へのアドバイス
個人投資家の課題
個人投資家は、株価や相場見通しを無視して売買することが多いです。
ボーナスとか臨時収入が入ったとき、買っちゃたりしますよね。
それとは逆に、大きな買い物をしたり出費が多くなったときに株を売ります。
ただ、個人投資家が市場を見て売買すると…失敗することが多いのも事実です。
楽観的すぎたり悲観的すぎて、相場に乗り遅れてしまうからだと思います。
個人投資家は機関投資家と違って、市場全体を見渡して銘柄を探すことが困難で、2~3社の動向すら理解できないです。
あなたが買う株の価格が低ければ低いほど、投資1,000ドル当たりの株数は多くなって配当金額も増加します。
あなたにとって本当に有利と言えるのは、株価が大きく値下がりして低迷することです。そうなれば、同じ金額でも多くの株を安い価格で購入できます。
そして多くの配当を獲得することができるんです。
□投資家のための十戒
①貯蓄すること。将来の幸せと安定、子供の教育に投資すること。
➁相場の先行きに賭けない。プロ(機関投資家)を相手にしていることを自覚すべき。
③税法上有利という理由で動かない。それらの商品は投資対象ではない。
④自宅を投資資産と考えない。
⑤商品取引(コモディティ取引)は投機にすぎない。
⑥証券会社の担当者を信用しない。
⑦新金融商品に投資しない。
⑧元本、利息が安全、リスクが少ないなどの理由だけで債権に投資しない。
⑨長期投資目的と投資方針、資産計画を書き出して行動すること。そして定期的に見直すこと。
⑩直感を信じて投資しない。
投資信託をどう選ぶか
インデックス・ファンドを買いたくなければ、2つの方法があります。
①自分で投資判断をする
➁アクティブ運用の投資信託を買う
自分で判断する個人投資家の運用が上手くいってない実証研究は、限りなくあります。
証券会社が損失を取り返してくれることはありません。
では、どうやって投資信託を選べばいいんでしょうか?
①『マネー』『フォーブス』『ビジネス・ウィーク』などの有力雑誌を見る
➁401(k)などの確定拠出年金(日本だとiDeCo)に使われる主要な投資信託をリストアップする
敗者のゲームに勝つには
運用における最大の責任者は誰でしょうか?それは運用機関ではなく、投資家自身です。
投資家は自分の置かれた投資環境、リスクに対する精神的許容度、マーケットの歴史を把握しておきましょう。
投資は「敗者のゲーム」です。しかし「敗者のゲーム」に勝つ方法は存在します。
その方法は、時代遅れになった従来のルールでプレーしないことです。
長期資産配分と運用基本政策の作成、それを堅持することで「勝者のゲーム」になります。
個人投資家はプロの投資家に勝つ必要はありません。勝たなくても、投資に成功することはできるんです。
「マーケットに勝つ」ことを考えていては、自分自身の重要な目的(最適な長期投資)ができなくなってしまいます。
まとめ
チャールズ・エリスさんの著作『敗者のゲーム』の要約を書きました。
冒頭でも書きましたが、今まで読まなかったことを後悔しました。
長期投資をする上でとても役に立つ本です。
覚えておきたいポイントは…
①資産運用は「敗者のゲーム」になった
➁インデックス・ファンドを購入する
③相場の先行きに賭けない
④プロ(機関投資家)を相手にしていることを自覚する
要するにインデックス・ファンドを定期購入して、長期保有ガチホすることが大切です。