架空戦記:2030年の戦場~朝鮮半島に散る氷河期世代~
全体のあらすじ
2030年、世界は再び大きな戦争の危機に直面していた。北朝鮮はロシアからのエネルギー供給を背景に軍事力を急速に増強し、少子化による兵力不足に悩む韓国を圧迫。朝鮮半島は一触即発の状態に陥っていた。台湾海峡での米中対立も緊張感を増していたが、この物語の焦点は朝鮮半島に絞られる。
日米安保条約はトランプ政権の影響で事実上空文化され、日本は防衛費を対GDP比4%にまで引き上げる大規模な軍拡を余儀なくされた。しかし少子化の進行により、若年層だけでは十分な兵力を確保できず、政府は苦渋の決断として事実上の徴兵制を導入。その対象となったのは、人口が多く、社会的な責任が比較的軽い氷河期世代の独身者だった。
山田アキラ(54歳)はその一人である。長年、不安定な非正規雇用に苦しみ、社会から冷遇されてきた彼は、自身の不遇を嘆きながらも、軍隊の一員として戦場へ向かう。日本の支援を受けた韓国軍は北朝鮮軍との熾烈な戦闘に突入し、山田たちは激戦を繰り広げる。
物語は、戦場での理不尽さと、氷河期世代の兵士たちが見せる人間的な強さを描きながら、山田が激戦の末に命を散らすまでを追う。
登場人物の概要
山田アキラ(54歳) 主人公。氷河期世代の独身男性。非正規雇用で長年苦しんできた過去を持ち、徴兵に対して強い不満を抱くものの、戦場では次第に仲間たちと絆を深めていく。
鈴木ユカリ(48歳) 同じく徴兵された氷河期世代の女性。補給部隊に配属され、冷静かつ実務的な姿勢で部隊を支える。山田の良き理解者となる。
中村タクヤ(52歳) 元中小企業の管理職で、徴兵後は分隊の指揮を任される。プライドが高く、当初は山田と対立するが、戦場を共にする中で友情が芽生える。
李ミョンソク(35歳) 韓国軍の若き士官。日韓合同作戦で日本兵を率いる。家族を北朝鮮に人質に取られているが、冷静な判断力と強い責任感を持つ。
金正恩(北朝鮮最高指導者) 第二次朝鮮戦争の引き金を引く。ロシアからの支援を受け、強大な軍事力を背景に韓国侵攻を決断する。
序章:揺れる国際情勢と徴兵制の導入
2030年、国際社会は複雑に絡み合う利害関係の中で、大きな転換期を迎えていた。北朝鮮はロシアからの莫大なエネルギー供給を受け、その資金で軍備を増強。韓国との非武装地帯に配置された兵力は史上最大規模に膨れ上がり、緊張が高まっていた。
韓国では少子化の影響で軍の兵力が不足しており、この状況を利用して北朝鮮は挑発行為をエスカレート。世界は朝鮮半島での新たな戦争の危機に注目していた。
一方、日本でも危機感が高まっていた。トランプ政権時代の政策により日米安保条約は事実上機能不全に陥り、日本は自国の安全保障を自らの手で担わざるを得ない状況に追い込まれていた。政府は防衛費を対GDP比4%にまで引き上げると同時に、「国民防衛力強化法案」を可決。これにより、事実上の徴兵制が復活した。
しかし、徴兵対象となったのは若年層ではなかった。少子化の進行により、18歳から30歳の若者だけでは十分な兵力を確保できなかったためである。代わりに政府が目をつけたのは、40代から50代の氷河期世代の独身者たちだった。
政府の発表では、氷河期世代の独身者が徴兵に適している理由が次のように説明された。
体力がまだ十分にある:40代から50代であっても、適切な訓練を受ければ戦闘に耐えうる。
家族への影響が少ない:配偶者や子供を持たない独身者であれば、徴兵による家庭への負担が発生しない。
将来の社会保障費を削減できる:独身者は老後に多額の社会保障費を消費する可能性が高く、徴兵による戦死は国家財政の負担軽減に寄与する。
この冷徹な理屈に基づき、多くの独身中年が徴兵されることとなった。
山田アキラは、その一人だった。54歳、独身、非正規雇用。長年の不安定な生活に苦しみ、社会から見捨てられたような感覚を抱えていた彼にとって、この徴兵はさらなる理不尽の象徴だった。
「こんな歳で戦争に行けっていうのかよ……」
山田の嘆きは、多くの徴兵対象者たちの心情を代弁していた。だが、政府の方針が変わることはなかった。氷河期世代の独身者たちは、次々と訓練施設へ送られ、戦場への準備を強いられることとなる。
そして、朝鮮半島の緊張が頂点に達した時、日本の氷河期世代の徴兵者たちは、韓国を支援するための部隊として派遣されることになるのだった。
各章とその概要
第1章:徴兵の波 政府が徴兵制を発表し、氷河期世代の独身者たちが動員される。山田アキラの視点で、不満と絶望が渦巻く訓練の日々を描く。
第2章:朝鮮半島の嵐 北朝鮮軍が韓国への侵攻を開始。日本は日韓相互防衛協定に基づき、韓国支援のために部隊を派遣する。
第3章:戦場の現実 山田たちの部隊が激戦地に投入される。次々と仲間を失いながらも、彼らは生き残りをかけて戦う。
第4章:最後の任務 北朝鮮軍の猛攻の中、山田の部隊は決死の防衛戦を強いられる。彼は仲間を守るために命を懸ける決断をする。
第5章:戦後の影 戦争が終結し、日本と韓国は復興に向かうが、氷河期世代の苦境は根本的に変わらない。山田の死が残した影響が語られる。
この物語は、戦争と社会的弱者への冷徹な扱いをテーマに、戦場での人間性の葛藤と絆を描きます。