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【小説】chapter Final. 家にて
早朝の誰もいなくなった渋谷はすごく汚い。そこら中に缶や袋が転がっていて清々しい朝の風景とはとても言えない。そんな街中を二人で歩いて、朝の喫茶店に入る。眠気覚ましのコーヒーを二人で飲んだ。半分寝ぼけていたから何を話したかはあまり覚えていない。駅までエミさんを送って、自分は違う電車に乗る。結局乗り込んだ列車の中で寝てしまい、家に帰るのに2時間もかかってしまった。
10月31日 海外で原因不明の肺炎が発生 感染症によるものと思われる
11月16日 国内で最初の感染者
12月27日 全国小中学校一斉休校
1月11日 WHOが新型●●●ウイルスと命名 パンデミックを宣言
2月7日 緊急事態宣言発令
渋谷で一晩過ごした後も何回かラインをして、また会いたいねなんて話をして、でも会えなかった。テレビでは毎日のように外出や会食を控えるようにと報道がされ、実際多くの感染者や死者がでている。大学はオンラインになった。飲食店ではお酒が出なくなり、夜の営業が無くなった。ギャラリーも閉まり、予定されていた展示会も延期になったり中止になったりした。僕たちの日常は飛行機プラモのピトー管みたいに不意にどっかに吹っ飛んで、二度と見つからないような気配がしてる。
実はエミさんは高校の先生らしい。それを聞いた瞬間は、なんとなく想像できるな、と思い、それからテンプレ的な女教師みたいな妄想をしてしまって、そして、あぁだから会えないってことかと悟る。学校の先生がこんな最中に大ぴらに遊びに行ったりは出来ないし、きっとオンライン授業の準備とか生徒たちの感染対策とかで忙しいんだろう。でも、それだけが会えない原因ではないことは分かっている。つまり、僕たちの関係性はあのときに完結したのだ。あのとき僕はホテルに行くことを躊躇した。カラオケでもキスしかしなかった。もうお互い、それ以上に関係性を進める術を知らないのだ。
ラインのトーク画面は他愛もない会話の後、お互いにスタンプを押して終わっている。どちらかが何か話題を出せば、またすぐにでも楽しい会話がはじまりそうだ。
ラインのトーク画面を見ながら、エミさんの言ってたことを思い出す。
君が気に入ったって言ってくれたあの作品。あのミニクーパーのプラモデルは父が買ったものなんだよ。
途中まで組み立てて、でも完成させるのが勿体無くてそのままにしてたみたい。
まぁ気持ちはわかるけどね。でもプラモは完成させないと。
完成させて、終わらせて、次のプラモを買いに外に出る。
そうすると作ったプラモと同じ車が走ってるのに気付いたり、歩いている人を見て服のシワが気になったり、泥のはね方をずっと見ていたりする。
プラモを通して見る世界が変わるの。
恋愛と似てるかもね。二人でお互いのことを知って、関係性を作っていて、二人の恋愛プラモを組み立てる。
たとえ関係性が終わってもそれは残っていて、世界の見方を変えるの。
世界が少し変わったら家を出よう。そしてまた新しいプラモを買いに行かなくちゃ。
おわり
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