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壁を登る遊びのお話

 カラフルな突起の付いた壁を登る人とそれを眺める人たち。壁の下には厚くて柔らかいマット。その周りは芝生を模した床になっていて基本的にみんな床に直で座っている。壁を眺めて何かを考え込んでる人がいれば、柔軟をしている人がいたり、飲み物を飲みながら歓談していたりする。そんな光景を見ているとなんとなく猫カフェで自由に過ごす猫たちを連想する。
 
 カラフルな壁の突起はホールドという。同じ色のホールドのみを使って、手と足を駆使しながら上へ上へと登っていくのがボルダリングというスポーツだ。

 実は前々から気になっていたのだが、踏ん切りがつかないところを経験者の友人に誘ってもらったので行ってきた。
 事前に色々調べていたがやっぱりやってみないとわからないことはある。
 一つ目は登っている間はホールドが思ったように見えないということ。「左足の先にホールドがある!」と友人が声をかけてくれるが、他のホールドでよく見えない。なので最初にどういうルートで登るのかよく考えなきゃいけないのだ。壁を眺めながらよく考える…んー?自分の体がどれくらいの大きさでどれくらい手や足が伸びるのか想像できない。慣れてくると1/1の自分を壁の表面に想像できるようになるんだろうか?それでも結局、どんな上手い人もトライアンドエラーでやっていくしか無いみたいだ。
 二つ目は登る時よりも意外と降りる方が怖いということ。ゴールに手をかけて達成感とともに下を見ると思ったより高いことに気づく。降りる時はどんなホールドを使ってもいいが、逆に選択肢が多くて悩む。安全のためになるべく下に降りてから飛び降りるように言われるのだが、後戻りのできない場所に来た気分に一瞬襲われる。

受験の頃によく観た夢はよくわからない現地ガイドに洞窟を案内される夢。洞窟は進むごとにだんだん狭くなっていき、足元から水嵩が増してくる。「ここから先は潜って穴から出るヨ」と言われ、じゃあ戻りたいと言うと、「もう戻るより先に行った方が早いヨ」と言われる。渋々承諾するが溺れそうになる。「なんでこんなところに来てしまったんだろう」と嘆くという夢だ。

 ふと横を見ると、岩場でのロープを使ったクライミング講習のポスターがある。そうか、これは実際の岩壁を模したモノなんだよなと改めて考える。偽物の岩壁だから、ルートに難易度を設定できるし、下にはマットも敷き詰められる。それでも打ちどころが悪ければ怪我もするし危ない目にもあうかもしれない。こんな偽物でもスリルを感じるのだから本物の岩壁に登ったら、どれほどの「こんなところまで来てしまった」感が味わえるのだろうか…いやいや怖すぎる。当分は偽物の壁でその感覚を味わってみようと思った。

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もとぴ
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