匿名狂愛短編企画『11 World is Mine.』解説

初めましての方は初めまして。
お久しぶりの方はお久しぶりです。
本宮愁(もとみやしゅう)と申します。

こちらは、柴野いずみさん主催の#匿名狂愛短編企画に寄稿した短編
World is Mine.
https://ncode.syosetu.com/n2232jl/13/
に関する解説(という名の釈明とご挨拶)です。

思いのほか長くなってしまったので、ほとんど使ったことのない古のnoteアカウントを引っ張り出しました。旧知の方はご存知かと思いますが、私が長いと言ったら本当に長いです。お覚悟を。


◇作品解説

あらすじ:
ヘタレな神様が聖女のワガママを叶え、厄介オタク憑きの勇者が魔王討伐RTA二周目に挑む話

読んでくださった方からはツッコまれそうですが、嘘は書いてません。
そう、嘘は書かずとも語弊は山盛りにできるのです。

神の視点からみるとコメディでしかない王道ファンタジー風の物語――の裏側

ヤンデレとして受け入れられやすい勇者目線を排除して、神に狂わされた聖女の物語を切り取ったのは100%私の趣味です。(お行儀が悪くて申し訳ない)

語り手を含めてまともなやつがいません。二重三重に嘘はつかずに真実を隠し、断片的な情報からどこまで察するかを試す、謎かけのような短編。

最低限、軽く読み流してもレギュレーション通過して見えるように描写は調整しました(お行儀アピール)

三者三様、複雑にもつれあった狂気の中で、最もわかりやすく異彩を放つのは「神の愛」でしょうか。

この作品における「神様」が何者かというと、作中世界に生きるキャラクターからは知覚されるべきではない高次存在、コミカルな狂言まわしであると同時に読者や作者のメタファーです。

人々の信仰を集める宗教的な神という立ち位置でありながら、どの陣営にも肩入れしない平等主義のゲームマスター。世界の管理者。姉に強く出られない弟でもあり、うちの姉がごめんね、埋め合わせするから、と気軽に向こうからやってくる。

人にとって都合のいい存在ではないとは察しながら、現実に心を閉ざす聖女にとっては心の支えでした。

神様に愛されたい。愛されている。

神の愛は文字通り次元が違う。
人の目線で焦がれても恨んでも意味がない。

それを得ようと求めるのであれば、より魅力的なキャラクターとして、新しい物語を提供する他ない――神々の愛し子である勇者のように。

聖女が導き出した解はそういうことですが、一方で、もう一つ彼女が拗らせた愛があります。

愛されたい。愛したい。愛せさえすれば。

この愛は、孤独でありたくない、一人の人間として認められたい、受け入れられたい、という欲望です。

そう渇望していながらも、愛することができない。聖女の抱えていた問題は、一方的な尺度で決めつけ、他人の意思を尊重せず、父なる神にすがる未成熟な精神性にあります。いわゆるアダルトチルドレン。他人を愛する心の余裕などありません。

聖女だけは神様との距離感が違います。直接コミュニケーションをとることができる聖女から見た神様は、概念的な神である以前に、世界でたった一人の自分の味方、イマジナリーフレンド、なんでも我儘を聞いて願いを叶えてくれる理想の存在。決して振り向いてくれることのない、最愛の父親。

神の言葉を遮って旅立ちを決め、言い残す

「あなたはそこで見ていて」

という宣言は、神様への告白であり決別

なにひとつ思い通りにならない現実を受け入れ、誰にも強制されていない道を自らの意思で選び直した時点で、彼女を縛りつけていた枷は解放されています。

それは、歪な関係ながら、母として過ごす時間の中で得た、彼女自身の心の成長。

言い聞かせるように、愛してはいないとくりかえし口にする。そこにあるのは、かつて求めた愛ではない。認めたくないからこそ否定する。それでも彼女は、この世界に生きつづけること、ユアンの隣にいつづけることを選ぶ。それもまたひとつの愛の形。

ユアンが聖女に向ける愛についてはここでは語りませんが、先のことはユアンの成長次第。恋愛としては他の問題も山積みなので、拗れきった二人が進展するとしたら、……三周目かなあ。
(なんかちょっと鳥籠エンドになりそうな予感もありますが神様が見かねて手を出してくれるでしょう)

神に恋した少女の末路。
大人になりそこねた子供が大人になる話。
親から独立し、親を許す、子供たちの物語。

そんな側面も持たせてみたり、いろいろと仕込むだけ仕込み、雰囲気で読むも深読みするも好きにしてもらえればいいかなと。

どういうことなのって聞かれたら一応答えはあるよってだけです。

この解説より短時間で書き下ろした短編ですし。


◇ご挨拶

随分長くWeb小説を読み書きしてなかったんですが、ひょんなことから今回お邪魔することになりまして。

匿名なら身バレしにくく――と最初は思ったのですが。どうせ初見の方がほとんどなんですよね。

それならばと「小説家になろうで活動していた当時の本宮愁にヤンデレ書かせたらこうなる」を裏テーマに昔の作風を再現する方向性に走ったのが本作です。

読者の期待に沿うものではなく、過去の自分らしいものを。狂愛といえばヤンデレ、ヤンデレといえばこう!というイメージを持って読みにくるであろう方に、こんなものもあるよ、って知ってもらえたら。(仮にも投票のある企画でいけない遊び方かなと心配してましたが意外と好き勝手されてそうで安心しました)

知ってる方は懐かしみ、知らない方は覚え――なくてもいいけど、こういうこと好んでする奴がいたんですよ。10年ほど前に。

歴史の長いサイトには筆をおいた作者が残した作品が沢山眠ってるので掘り返してみるのも面白いんじゃないかと思います。

ちがうそうじゃない、ヤンデレを読みたいんだ。責任とってお前が書いたヤンデレ見せろよ!という方は、

あたりは比較的王道なんじゃないかと思うのでこれで許してください。


◇御礼

感想や作者あてへの挑戦ありがとうございました!
お約束のスピンオフ、……用意してはあります。

勇者ユアン目線の前日譚
「I can (not) call your nane.」
を公開します。

えー、まあその、読めばわかりますが

もともとユアンが歳上で保護者です

だから聖女はああなった。
現場からは以上です。



◇懺悔


これでようやく懺悔することができます。
紆余曲折を経て反転された結果

概念的 おにロリ 兼 おねショタ 疑似親子

という迷状況を生み出してしまった
作者の一言がこちら。

\どうしてこうなった。/

Mine.の時点でお子さんがいる女性には複雑だよなと思いつつ、そこは割り切って書いたんですけど!

逆はアウトだよ! どう考えても!

見た目は綺麗なお兄さんの後ろをついていった幼気な少女時代、そこからのメンタルブレイクは、さすがに心が痛むので没稿にしました。

聖女の台詞回しもそこそこの年齢に見えるように調整しました。

私にも倫理観はあるのです。……あるのです。







※いいから見せろという方にはこっそりご用意があります。

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