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誰が来て、何ができるか知ってて、119番してますか?

前回、119番をすると救急隊員が来るという記事を書いた。
「命を救う」、「救命処置を学ぶ」というキャッチーなフレーズで目を引く救急救命士養成校のCMがあるし、救急救命士が来るではないの? 
と思うのですが、厳密には救急隊員と救急救命士は違う。


119番をすれば、救急救命士が来てくれる?

日本全国で、5359の救急隊が編成されていて(基本は1隊3人編成、場合によっては4人編成)、そのうち、5339隊(99.6%)は少なくとも1人以上の救急救命士が乗務している。
つまり、救急業務未実施市町村でなければ、ほぼ間違いなく救急救命士が来てくれる。

救急救命士とは ?

日本では、救急搬送業務は自治体の消防機関が実施していて、傷病者を救急搬送する彼らは救急隊員である。
そのうち、一部の救急隊員たちは救急救命士の国家資格を有しており、(通常?)の救急隊員よりもアドバンストなことができる。
その割合は、全国の救急隊員約66000人のうち、約32000人(48%)。
もちろん、都道府県によって、その割合は変わってくる。
例えば、東京都は救急隊員2808人のうち、 2180人(75%)、青森県は救急隊員1359人のうち、552人(40%)となる。
こうなると、119番をした場所によって救急救命士が1人、ないしは2人以上来てくれることがあります。
都会と地方で充実度が変わってくるのは、どこの業界でもあることですね。


通常の救急隊員と何が違うのか

救急救命士は救急救命処置を重度傷病者に行えるという点が救急隊員と異なるところです。
その中で、医師からの具体的指示を受けて行う特定行為というものがあります。

  1. 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液
    心肺停止傷病者
    に対して、腕や足から針を指して点滴をするというものです。
    乳酸リンゲル液というのは、どこの医療機関でもおいてある、最も一般的に使われる点滴製剤で、病院で点滴されたことがある人なら一度は点滴されたことがあるのではないでしょうか。
    沢山の種類がある点滴の中で、乳酸リンゲル液だけが救急救命士が投与してよい製剤になります。
    救急救命士は乳酸リンゲル液以外の点滴はしてはいけないことになっています。
    そのため、乳酸リンゲル液と似た酢酸リンゲル液は投与してはいけません。ほとんど、臨床的には同じ使われ方をします。
    医療機関や施設で、既に点滴を受けている傷病者を搬送するとき、それが乳酸リンゲル液ではなかった場合、救急救命士は、その点滴を投与できません。一緒についてきている医師や看護師だけが、その点滴を扱えます。
    救急救命士が、その点滴を使うために、わざわざ乳酸リンゲル液に交換することもあります。

  2. 食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク又は気管内チューブによる気道確保
    心肺停止の傷病者に対して行うことができます。
    食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスクというのは、声門上?(気管入口手前で喉の奥といったところ)までのチューブを入れて、人工呼吸を行うこと。気管内チューブは、いわゆる気管挿管のこと。気管内チューブを気管の中まで挿入して、人工呼吸を行うこと。
    気管内チューブが確実に気管内に入っているので、より確実に人工呼吸ができます。
    じゃあ、全て気管内チューブにすればよいと思いますが、そうはなりません。
    気管内チューブの挿入、難しいです、時間かかります、合併症増えます。
    医療機関という整った環境で、経験ある医師が実施しても、うまくいかないことがあります。
    ましてや救急搬送中というのは、条件が整っていない環境なので、なおのこと難しいのです。
    だから、救急救命士はもろもろの条件を考えて、どの器具を使うのかを選択しています。

  3. アドレナリンの投与
    心肺停止の傷病者に対して行うことができます。
    アドレナリンというのは強烈な強心薬で、劇薬指定もされています。
    心肺停止の傷病者に対する心肺蘇生は世界共通のガイドラインに則って行われており、アドレナリンを一定時間ごとに1mgずつ投与するのですが、病院でも救急車内でも同じやり方で実施されています。

  4. 乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液
    1.
    と同じではとなりますが、こちらは心肺停止のショックの傷病者に対して実施できます。
    ショックというのは「心にショックを受けた」ことではなく、医学においてショックとは全身の臓器に血液を循環させることができない状態をいいます。
    決して、救急救命士にちょっと点滴してもらって元気になろうという点滴ではなく、生命の危機が差し迫っているから、行われるのです。
    傷病者を医療機関に搬送するまでに状態を悪化させないために、救急救命士が行います。

  5. ブドウ糖溶液の投与
    意識障害の傷病者に対して、血糖値の異常を疑って血糖値を測定することも救急救命士はできます。
    その際に低血糖を起こしていれば、乳酸リンゲル液で点滴をとって、そこから50%ブドウ糖液を40ml投与できます。
    投与するための低血糖の基準は、血糖値50mg/dl未満です。
    血糖値の基準値は、空腹時なら70-110mg/dlになります。
    49なら投与できますが、50だと明らかに低血糖症状が出ていても、救急救命士はブドウ糖を投与できません。
    以前、血糖値を測定して50と出てしまったけど、もう一度測定したら49になったので、ブドウ糖を投与できた事案がありました。
    これ、ブドウ糖を投与すると目が覚めて元通りになるから、病院に行かないって言う人がいるんですよね。
    でも、病院に運んでもらうことを前提に119番しているので、そんなワガママは許されないわけです。
    その場で、病院にいかないことで起こるあらゆる事象について、救急隊に免責する書類に署名すれば良いのかもしれません。もちろん、そんなものはありませんので、救急隊は必死に説得せざるを得ません。救急隊も引き下がりたくても容易に引き下がれないので、さっさと病院に搬送してもらったほうが楽だと思います。

救急救命士の続きは、別の折に、ではでは~










ではでは~



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