小さな投資で早く(速く)ジャンプするデジタル トランスフォーメーションの道筋
ある国が、先進国が辿った道筋を大きくショートカットして、一気に現代のレベルに跳べることがある。例えば、わかりやすいのは電話だ。固定電話のインフラが全くなかった国で、携帯電話が登場し一気に現代レベルに到達する。古くは故CK プラハラドが書いたネクスト マーケットを読んでその非連続なジャンプの片鱗を感じ、わくわく或いはぞっとした方々も多かっただろう。
企業活動においても同じことが起こる。歴史上経験してきたことはプラスもあるがマイナスもある。投資してきた金額と時間とリソースを思うと別のやり方をとりにくいといった埋没費用や、現在のプロセスとリソースからの移行費用が必要ない新参者にも非連続なジャンプで勝機がある。
デジタル トランスフォーメーション(以降DX。80年代に流行ったヤマハのFMシンセサイザーではない)は、そのジャンプがわかりやすく起こるわけで現在のプレイヤー(演奏者ではなく企業を指す)は戦々恐々としているわけだ。例によって日本は遅れているという話が毎日繰り返される中、大企業は既に大規模に投資を行い、大企業の新規事業部門や小さな事業体もいろいろと挑戦している今日この頃である。
事業構想の記事「経済産業省が示した「2025年の崖」 DXは業務効率化ではなく、価値創造が鍵」にこのような記述がある。
何のために、何をするのかという事業ビジョンを描くことを起点に考えるべきだと思う。特に、何のために『目的』の解像度を上げることで、何を、どのようにしていくのかが具体化される。この事業ビジョンを起点に現状とのGAPをデジタルテクノロジーの活用により埋め、イノベーションを起こしていく。
いい起点だと思う。我々もよくパーパスを考えるスプリントを行う。個人でも組織でもある基準点を持つと個別の判断をぐっとしやすくなり、ぶれにくくなる。
一方、具体的にある製品やサービスの事業のあり方を検討している時にこういうものを目にすると、どこまで抽象化しなきゃいけないのか?って途方に暮れる感覚を持つことはないだろうか。企業活動を「地球人の健康の追求」と言っても、僕のような凡人には、具体的なあり方に落として行きにくい。また、それを新しいビジネスモデルにまで落とす道筋はわかりにくいままだ。
そこで我々はよく故クリステンセンのジョブ理論を使う。ご存じビジネス書としても大ヒット作で、昔からマーケティングや製品、サービス開発に携わってきた人には「はい。それが何か?」という感じで、それほど目新しいことではない部分もあるが、企業側の非マーケティング部門の人や、エンドユーザーと共創する上で共有しやすいというのが最大の利点である。
片づける用事は何か。機能、感情、社会的な観点で整理できれば、前に進むきっかけになる。そして、その用事の片づけ方の「完全な体験」ってどんなものになるのか。最終的に、その「体験を実現するビジネスプロセス」をゼロベースでデジタルを使って組み立てられないか。
それが我々が考えるDXの道筋である。小さな投資で早く(速く)効率良く現代、未来にジャンプする。ビジネスモデルの一部と該当するビジネスプロセスを一気に現代、未来に持ってくるお手伝いができるとしたら、そういうやり方じゃないかと思っている。