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レバレッジを効かした小さな組織で「仮想大企業」に

「大きいことはいいことだ。」

大昔、そういうコピーのCMがあった。たしか、おおらかで包容力があるイメージと共に一般に受け入れられていたクラシックの指揮者の方が出ていて、高度成長期を象徴するような価値感が現れていた。学校では規模の経済ということを習った。大きくなれば効率性が上がるというもので、製造業をイメージしながらその話を聞いた。「寄らば大樹の陰」という言葉があったが、大樹=役所か大企業に就職←難関大学←いい成績←勉強する、という流れで、子どもの頃聞いたことがある人もいるだろう。大きいことはいいことだから。一旦獲得した競争優位性が中長期に渡って維持できる時代では、それはある程度真だった。

先が読めない現代においては事情が違う。大きな船は急には止まったり曲がったりできないし、急に潜水艦や飛行機にバケないので事業環境の変化に対応しにくい。今回のパンデミックで、莫大な固定費に押しつぶされそうな企業の話がよく聞こえてくるが、これらが極端な例だ。ここまで急激な環境変化は通常起き得ないし、多くは内容も時代の流れとは無関係だが、徐々に起きるかもしれないことをわかりやすく早送りするとこういうイメージになる。

一方、この非常時に、瞬時に対象顧客やポジショニング、サービス内容まで変えつつ上手に立ち回る個人事業主のみなさんは、このあたりのことをよく理解し実践されている。小さな飲食店がテイクアウト専門店に転換し、コロナ前以上の売上を上げているなんて、見事と言うしかない。これは小さいからこそできることかもしれないが、変化した事業環境に適応できなければ退出するしかないのは、大も小も関係ない。

意図的戦略にしろ創発的戦略にしろ、流行の両利きにしろ、現在〜未来の事業環境への戦略的な適応能力が求められる。大きな構造は変化に対応しにくいとしたら、自社の中長期的な観点でのサービス価値、製品価値、体験価値を「決定づける機能」にフォーカスすることになる。自分なりの切り口で未来に価値を生む場所に移動しつつ、独自のプロセスとリソースをどう組み立てていくのか、そこに探索のエネルギーを集中し、その上で他の資源はそこに注力して競争力のある企業やフリーの方々にお願いすることとなる。以前、最重要価値を決めるコンポーネント以外は競争力のある外部資源と組み合わせるで書いたように、受発注の関係ではないパートナーシップで特定のリファレンスデザインを共有できれば、効率性効果性の高い「仮想大企業」が生まれる。「決定づける機能」へ投入した資源の量からすると大きなレバレッジが得られる、かもしれない。

コロナをきっかけに、非常に自由な働き方が現実になってきた。
組織デザインの自由度も明らかに大きくなった。
優秀なフリーの方もどんどん増えてきている。
そうなれば企業活動も、当然変わって行く。

楽しみな時代である。

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