靴が支えてくれている話。
ほんとに捨てちゃいそうだった。
大雨の日に外訪しなきゃいけなくて、時間がなくて急いでいて、こともあろうことか都営新宿線の超長いエスカレーターの一番上から転げ落ちそうになった。
体重がうまくかけられない。ただひたすら滑る。
先日も出かけた先で走ったら、すぐヒールが取れた。
それなのに毎度たくさん歩くと靴擦れができたりする。
ボロボロなヒール。禿げた爪先。
頃合いだな、と思った。
私の自己評価靴は、自分が目指した以上に、高すぎたんだと思う。
表彰なんて狙えないし、仕事も全然うまくいかない。
でもいざ捨てようとしても捨てられない
もう一度、もう一回、修理してみよう。
その日も、出先でヒールが削れて金属音を鳴らしながら歩くのが嫌で、
新しくできた靴の修理屋さんに飛び込んでみた。
もう一度、もう一回、修理に出していいんだろうか。
私はこの子を頑張らせすぎていないだろうか。
私のところに来てしまったばっかりに、こんなハードは使い方をされて。
捨てるべきか、否か。自分で判断ができなくて、
お店の人に聞いてみた。
私の靴はもう限界ですか?
私の思いを知ってか知らずか、
不安な気持ちを感じ取ってくれたのか、
はたまた新店オープンだったから、接客もプロの人が来ていたのか、
全然わかんないけど、
お店の人は私の靴を見て優しく言ってくれた。
限界なんてとんでもない。
ジミーチュウはとても頑丈な靴です。
その証拠にあまり目立った傷はないでしょう?
修理すれば大丈夫。
多少トウのところが擦れてますがクリームを塗ればすぐ綺麗になります。
そういえばそうだ。
実際、毎日履いているのに、目立った大きな傷はない。
前履いていた靴だったら3ヶ月でくったくたに擦り切れていたのに。
もちろん前よりケアを頑張ったり、早めに修理に持ち込んでいるのもあるけども。
そっか、まだ大丈夫なんだ。
まだ頑張れるんだ。
10分ほどで修理が終わった。
ボロボロになっていたヒールもしっかり直してもらって、
削れていた部分は革を伸ばしてもらった。
トゥもクリームを塗ってもらって、すっかり禿げているのがわからない。
新品、とまではいかないけれど、ピカピカの靴に戻っていた。
もう少ししたら裏張りを張り替えてもいいかもしれないですね。
だいぶ薄くなってきているので。
この子には、まだ続きがあるらしい。
夜。
気になっていたインソールの部分を拭いてみた。
少し着色してしまって、気になっていた部分。
レザーソープで拭くと、完全にというわけではないが綺麗になった。
足を入れてみると、すっきりといい感じに仕上がった。
毎日ボロボロになるまで働いて、クッタクタの状態で帰路につく。
もうこんな生活無理だーーー限界だーーーと言って転職情報を見てみても、
結局やりたいことなんてなくて、むしろやりたいのは今目の前にあることで、条件面他踏まえても、簡単にどこかに行くことすらできなくて。
そんな時、ふと、お手洗いの鏡に映った自分の姿に、
グッと下を向いて唇を噛む目線の先に、
ジミーチュウの靴がある。
私の方が頑張ってんだよアンタ!しっかりしなさいよ!とゲキを飛ばされる。
そうか、これが自己評価なのか。
私以上に一生懸命に私を支えてくれる、私の自己評価靴。
靴が支えてくれている。
もう少し、もうちょっと、頑張ってみようと思う。