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芸能人の「結婚させていただきました」について

現代の敬語にまつわる大問題のひとつに
「させていただきました」「させていただきます」
というのがあります。

この「いただきました問題」については追々書いていきたいと思っているのですが、その前に最近、気になったことが。

4月1日、芸能人カップルの結婚報告は「結婚いたしました」

数日前に芸能界のビッグカップルがゴールイン、その報告に世間は沸き立ちました
(私もスマホにニュースが飛び込んできた瞬間、おおお〜〜めでたい!と思いました笑)。

マスコミへの連名の書面を見たら

結婚いたしました

と書かれていて、そこにも私は注目しました。

今を遡ること15年? いや20年? はっきりしませんが、かなり昔、
ある芸能人が結婚を報告するのに

結婚させていただきました

と言ったことに私はたいそう驚きまして。

基本的に「させていただく」は、相手に「許可」のニュアンスがある場合に使う言葉です。
それを「結婚」に使う人が出てきたことが驚きでした。
同じ報道を見ていた私の友達が「誰に許しを求めているのかと思った」と言って笑っていたのをよく覚えています。それくらい違和感がありました。

が、そんなことを言っていたのもつかの間。
その後、あれよあれよという間に「結婚させていただきました」は芸能人の結婚発表のスタンダードになっていきました。

誰かが過剰に敬語を使うと、あとに続く人は、「それを省いたら乱暴だと思われる」ことを恐れて、とりあえずその言葉を使ってしまう…という、よくある連鎖反応かなと私は思っていたのですが。
とにもかくにも、それはあっという間に「普通」になっていったのです。

ご存知のように、言葉は変わっていくもの。その中で自分がさっさと取り入れ行く言葉もあれば、「これは使わない」という選択をするものもあります。

そして私は、この言い回しにはどうしても慣れることができませんでした。
ファンクラブの人に結婚の許しを請うというならアリかもしれませんが、世間一般にそこまでへりくだる必要はありません。

行き過ぎた敬語を見直す動き?

ところがここ数年、「させていただきました」と表現しないカップルが出てきたのです。
これは周囲のスタッフの考えなのか、本人の意向なのかはわかりませんが。

なかでもおもしろいと思ったのは、去年末、テレビでもよく見かける著名な作家の男性と、俳優・監督・文筆業など幅広く活躍しているという女性のカップル。この女性サイドの報告がとてもユニークでした。

発表時、二人はすでに入籍済みだったそうで、結婚したという過去形の報告でした。つまりすでに夫婦ということですよね。
その報告は

作家の◯◯◯◯と結婚しました。

と、相手の男性呼び捨てだったのです。

そして、その「結婚しました」のあとに( )で、

夫の敬称を省略しているのは、すでに身内なのだから敬称はつけるべきではないという夫の意向によるものです

とありました。
おそらく夫の意向は尊重しつつも、「なんで呼び捨て?!」と周りからわいわい言われるのは面倒?なので、あらかじめ書き記したということだと思いますが。

作家&部分的な芸能人(文筆業もしているので)カップルなので、芸能人とはぜんぜん言い切れないのですが、なかなかインパクトが強い文章でした。

これは例外的な話としても、100%芸能人の結婚報告でも「させていただきました」が使われない場合も出てきたし、芸能人の「結婚させていただきました」ブームはちょっとずつ沈静化?しているような気もします。

ちなみに一般の人で「今度わたし結婚させていただくんです!」と言う人には出会ったことがないので、やはり「結婚させていただきます」は、人気商売という側面を持つ芸能人ならではのメンタルが反映されているのだと思います。

とはいえ、普通に丁寧に「いたしました」で十分、という気が私はしています。




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