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「そこにいない人」に敬語を使うか?

みなさん、自分が尊敬している、たとえばお世話になった先生などと話す時は、当然敬語になりますよね。
ではその先生のことを、自分の知り合いに話す時はどうでしょうか?

話す相手が、話題にしている人を尊敬しているか、いないかで決まる

たとえば私が、尊敬するA先生と直接話す時はもちろん敬語です。
そして同じくA先生を尊敬するBさんと、A先生について話す時、やはりA先生に関わる部分では敬語を使います。たとえば

「この前A先生は、日本酒よりワインが好きとおっしゃっていた」

というように。

これは話をする二人、私とBさんの間に、A先生への敬意という共通項があるからです。
しかし同じ話を、A先生をまったく知らないCさんに話すとしたらどうでしょう。

「この前Aさん(先生)という人が、日本酒よりワインが好きと言っていた」

でOKです。
なぜならCさんはA先生を知らないし、したがってA先生への敬意もないからです。

もうひとつ例を出しましょう。自分の近所に社会的地位が高く人格に優れた高齢の男性D氏が住んでいて、その人が朝、自宅の窓を自ら拭いていたとします。それを見て、D氏への敬意を共有する自分の家族に伝えるなら

「今朝Dさんが、家の窓をご自分で拭いてらっしゃった」

などと言うでしょう。
でもそれを、Dさんを知らない会社の同僚に話すとしたら

「今朝近所のおじいさんが、自宅の窓を自分で拭いていた」

でにいいわけです。
それ以前に、そんなことを会社の同僚に話すかという問題はありますが(笑)。

敬語を「使ってはいけない」ということではありません

とはいえ先のA先生についていえば、私が他者にA先生のことを話す時、思わず先生への尊敬の念があふれだして「私がお世話になったA先生という人はね、ワインがお好きなのよ」というのは十分にあり得るし、聞いた人も過剰な敬語とは思わないでしょう。

しかし長々その先生の話をして、オール敬語使いとなると、聞いている人は若干うるさく感じるのではないでしょうか? 話をしている相手は、話題の主を知らないばかりか、私が誰に敬意を払っているかにもさほど興味はないでしょうから。

というように敬語の使い方には絶対的な正解がないことも多く、シチュエーションや相手との関係、話題にする人の年齢などによっても変わってきます。

(もちろんビジネスにおいては、社外の人に社内の人間について話す場合、たとえ社内の人物を相手が知らないとしても、「部長の〇〇が申しますには…」など謙譲語を使うわけですが、これはまた別の話。)


基本的に

話す相手がまったく知らない人物を話題にするとき、敬語の必要はない

ということを知っておくといいと思います。


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