「おっしゃられる」は二重敬語です
今朝テレビに出ていた人が、「◯◯さんがおっしゃられていたように…」と言っていました。
この「おっしゃられる」を、最近よく聞く気がします。
「おっしゃられる」=「おっしゃる」+「られる」
敬語の基本は「1つの言葉に対して1つの敬語」であり、1つの言葉に2つの敬語を使う=二重敬語は間違い。ということは広く知られていると思います。
が、しかし。
じゃあ何が二重敬語なの?というと、そこは今ひとつ曖昧かもしれません。
二重敬語でもっとも多いのは、今回のテーマである「られる」を余計につけてしまうパターンでしょう。
まずこの「おっしゃられる」を解説しますと…
「おっしゃる」は「言う」の尊敬語。
ですから「◯◯さんがおっしゃったように」でよいわけですが、そこに「◯◯られる」という敬語表現をもうひとつ加えてしまっている=二重敬語、ということになるわけです。
このパターンは実に多く見られます。
「お客さまがお帰りになられる」→正解:「お帰りになる」
「課長がお呼びになっておられる」→正解:「お呼びになっている」
「お召し上がりになられる」→正解:「召し上がる」
などいくらでも例文は作れますが、ぱっと見ればわかるとおり、
単純にいって、二重敬語は二重になっている分だけ文字の数が多く文章も長くなっています。
上記のパターン以外では、前にも書きましたが
「拝見しました」でよいところを「拝見させていただきました」
というのも最近増えていますが、これも長〜い。
余分な言葉を足していくと、文章はわかりにくくなる
言葉が短縮されて、世の中に定着していくのは合理的だと思います。
(敬語ではありませんが、「イマイチ」「なる早」など、いまではまったく普通ですよね)
しかし、なぜわざわざ長くしてしまうのかしら???と私はシンプルに不思議に思います。
だって言葉数が多くなると聞きにくいし、意味が伝わりにくいことすらありますから。
たとえば、丁寧に話したくてこんな風に言ったとします。
「Aさんが差し上げた◯◯を、Bさんがお召し上がりになられて美味しいとおっしゃられていたそうですね。私もいただいてみたいのですが、その◯◯をどこでお買い求めになられたのですか?」
ここから余分な敬語を削ぎ落とすと
「Aさんが差し上げた◯◯をBさんが召し上がって美味しいとおっしゃったそうですね。私もいただいてみたいのですが、その◯◯をどこで買われたのですか?」
さらにフランクにすると
「Aさんが差し上げた◯◯をAさんが美味しいとおっしゃったそうですね。私も食べてみたいのですが、その◯◯をどこで買われたのですか?」
話している相手にもよりますが、通常ならこのくらいで十分です。
(↑自分で書いておいてなんですが、設定が謎だし実際にはありえなそうなヘンテコな例文ですよね。失礼しました!笑)
敬語がうまく使えないという話はよく耳にしますが、それと同じくらい「敬語が過多になっている」のも問題だなぁ〜と私は思っています。
言葉って不思議なもので、丁寧な言葉も、ひたすら連発されているうちに「丁寧の価値」が下がっていって、聞いていてもあまり丁寧な感じがしなくなっていくのです。
そうすると、本当に「最上級」の敬語を使わなければならない相手に対して、どれだけ敬語を積んでも、礼にかなっている気がしない!という現象が起こってしまうかもしれません。
みなさん、ガッチガチのビジネス商談でもなければ、「一部のスキもなく敬語を使う」必要はないですよ。それよりも、相手の立場や考えを尊重したり、丁寧に接しよう思う気持ちのほうが大切です。というか、それさえあればたいていの場合は大丈夫。
敬語を使いすぎていないほうがこなれた感じもしますし、単純に、話は短いほうが伝わりやすいというのもありますし。
とりあえず敬語の使いすぎと、二重敬語にはご用心を!