中国現地レポート:「大庸古城」の現状と展望
2021年、湖南省張家界市に壮大な歴史テーマパーク「大庸古城」が華々しくオープンした。総工費は約25億元(約538億円)。地域経済の起爆剤として、観光業界からも大きな期待が寄せられていた。
しかし、開業から3年余りが経過した現在、累計で5億元(約108億円)以上の赤字を計上し、2024年上半期の入場券販売数はわずか2300枚、1日平均にして20人以下という厳しい状況に陥っている。この非常に興味深い事実を知り、現地へ足を運んだ。
現場で見た衝撃の光景
現地に到着すると、まず目に入ったのは閉鎖されたチケット売り場。かつて276元(約6,000円)という高額な入場料が設定されていたはずだが、現在は無料開放となっている。テーマパークの入り口には、期待と不安が入り混じる観光客の姿はなく、閑散とした空気が漂っていた。
園内に足を踏み入れると、そこは広大な土地に歴史的な建造物が点在しているものの、人影はまばら。営業している店舗は数えるほどで、映画館も稼働している気配がない。「この規模の施設が、なぜここまで寂れてしまったのか?」という疑問が頭をよぎる。
観光拠点としての立地と矛盾
「大庸古城」は張家界市の中心部という立地にある。張家界は以前「大庸」と呼ばれ、その名を冠したテーマパークには、地域の歴史を復興させるという期待があった。しかし、張家界自体は観光地としての魅力を持ちながらも、観光客は主に世界遺産「武陵源」や「天門山」を訪れるため、この都市自体で長時間過ごすことは少ない。この矛盾が、施設の集客に影響を与えているようだ。
地元向け施設の現実
園内にある数少ない飲食店の一つに立ち寄ると、1人68元(約1,500円)で食べ放題・飲み放題という破格のサービスが提供されていた。地元住民を意識した低価格設定だが、この施設の維持費や規模からすれば、これでは到底賄えない。さらに、グローバルブランドの店舗は見当たらず、地元の小規模な商店が目立つ。観光客向けのラグジュアリーな魅力が欠けている点も、施設が苦境に立たされている要因の一つといえるだろう。
「大庸古城」の未来
施設内には警備員が常駐し、最低限の管理体制は整っているようだが、施設全体の再建には大胆な戦略が必要だ。周辺観光地との連携や、観光客が長く滞在するための仕掛けが不可欠である。「大庸古城」は、このまま寂しい状態が続くのか、それとも再び脚光を浴びる日が訪れるのか――注目が集まる。
張家界の観光地の魅力
余談ではあるが、張家界の観光地そのものは世界的に有名であり、一見の価値がある。日本人での知名度は低く年間2万人程度の渡航者数だが、韓国では中国で一番有名な観光地として絶大な人気があり、年間20万人以上の渡航者数となっている。
特に、TikTokなどのSNSで爆発的な再生回数を記録した「張家界大峡谷ガラス橋(正式名称:雲天渡)」は、全長430メートル、谷底からの高さ約300メートルを誇り、そのスリリングな体験は圧巻だった。ぜひ、人生に一度は訪れることをお勧めしたい。
大庸古城を訪れたことで見えてきたのは、壮大な計画と現実のギャップである。その裏に潜む課題の解決に向けた取り組みが進むことを期待したい。
ちなみに自動車業界では有名なランドローバーの非常識挑戦をした45度の急坂999階段がある場所は大庸古城のすぐ近くにあるロープウェイから30分ほどで行ける。
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