Netflix「ラブ、デス&ロボット」が実験する、映像技術の可能性。
Netflixで2019年3月に配信開始した「ラブ、デス&ロボット」。デビッド・フィンチャーと「デッド・プール」のティム・ミラーがエクゼクティブ・プロデューサーを勤める8分から17分という短篇18本で構成されるCGアニメーションオムニバスである。
「ラブ、デス&ロボット」のタイトルが表すとおり愛と死と死を超越した物をテーマにしつつ、性的描写と残虐描写が過激な事で注目を集めている。しかし、それより注目に値するのは、この18本、それぞれの表現方法の多様さだろう。
基本的には3DCGアニメーションの作品群なのだが、2Dのグラフィカルなアニメから3DCGでありながら特殊なトゥーンレンダリングのような劇画タッチアニメーションだったり、実写と見まごうばかりのフォトリアリスティックなCGのものまで多種多様な表現方法を取っていて、さながらクオリティの高い映像見本市のようだ。
短篇小説を原作にしてる物が多く、必ずオチを用意してくれているので、実験的な作品といいつつも楽しませてくれる。
最初の「ソニーの切り札」はリアリスティックな映像描写だが映像的なアプローチはRPGのドラマ部分を彷彿とさせる、ただ、エログロに関しては最初の掴みとしては十分だろう。
そして「ロボット・トリオ」C3-POとR2-D2のコンビを思わせる3人組が死滅した地球ツアーをするというもの。(このトピックのタイトル絵につかってるのはそれなんですが、いつもように加工してしまってるのでイラスト調になってしまっています)これもディテールの描写は唸らせられつつシニカルなストーリーに笑ってしまう良作。
そんな流れで見ていくと3本目「目撃者」にはびっくりさせられた。
冒頭からバイオレンスシーンで始まるのだが、慌てている不安定なカメラワーク、フォーカスを探ってるようなピンボケ感、物凄く自然なナチュラルライティング。キャラクターの肌の質感はマットなのにもかかわらず、始まって数十秒は「これホントにCGなのか?」と疑ってかかって見てしまった。しかも固定の画にも関わらずカット終りをカメラをほんの少し揺らしてみたりと実写の雑味感を徹底的に追求してあるのである。徹底的にリサーチされた香港っぽいロケーションもリアリティを増している。監督はスペイン出身の40歳、Alberto Mielgo。まだ短編しか作っていないらしいが要注意だ。
CGでここまで表現されてしまうと、実写の強みとは何だろうと考えさせられてしまう。それくらい完璧なロケーションにセットを作り込んで、ベストな自然光の時間で荒っぽく撮影してる感じなのである。
他も実写並みのフォトリアリスティックな作品は「わし座領域のかなた」「シェイプ・シフター」「救いの手」「ラッキー・サーティーン」「秘密戦争」と多く、その度に実写がどうあるべきか考えてしまった。
因みにフィンチャーの監督作は無いのだが、ティム・ミラーは「氷河時代」という作品を監督してる。これも見初めて数秒間は「これホントに実写じゃ無いのか?」と食い入るようにみてたら、唯一、実写メインの合成作品(テクスチャとして実写との合成は色々な作品で使っていると思うが)でした。他の作品と比べると、悪いというわけでは無いんだけど、この作品がいちばんカロリー低めです。というくらい濃い作品群の18編です。
余談ですが、タイトルの中にロボットと入るだけあってオリジナルビデオアニメ「ロボットカーニバル」を想像せずにはいられない。これは大友克洋がオープニングを担当し、北久保弘之と森本晃司が中心となり製作された短編7本のアニメーションオムニバス作品である。30年以上前の作品だけど、これをモデルに企画されてるとしか思えないんですよね。