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無料動画配信サイトGYAO!さま

追悼

GYAO!さま サービス終了
「むざんやな甲の下のきりぎりす」

邂逅

 もう、かれこれ十年ほど前になるでしょうか。
 GYAO!さま、貴方は映画が大好きで、インターネットはそれほど好きではないワタクシの前に鮮烈なる印象をもってご登場なさいました。

 1970年公開、ヴィットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレンさんご主演による『ひまわり』、1987年公開、スタンリー・キューブリック監督による『フルメタル・ジャケット』など、貴方は最高に素晴らしい作品を、驚くべきことに「無料」でご提供くださいました。

 貴方さまの無料動画配信により、初めてその魅力に気付かされた俳優さんは数知れずいらっしゃいます。いま思い付くまま、ほんの数人を挙げさせていただきますと……。

新鮮

 『MUD -マッド-』(2012)や『ダラス・バイヤーズクラブ』(2013)のマシュー・マコノヒーさん、『マシニスト』(2004)や『ザ・ファイター』(2010)のクリスチャン・ベールさん、女性では『早熟のアイオワ』(2008)や『ウインターズ・ボーン』(2010)から『世界にひとつのプレイブック』(2012)に至るジェニファー・ローレンスさん、さらに時代を遡りイタリアでご活躍されたラウラ・アントネッリさん、1985年の『フェノミナ』で主演を務められたジェニファー・コネリーさん、皆さまそれぞれ素晴らしい脚本や演出とともに、非常に強く印象に残っております。

残念

 他方、GYAO!さま、貴方は低予算かつ短期間で製作された誠にもって残念無念な作品群も数多く配信してくださいました。

 ご提供してくださる映画の中に、常識の限度を超えた残念無念な仕上がりの作品が多数、存することに気付くまで、そう多くの時間を要することはございませんでした。

 そのうち、GYAO!さま、貴方の本来の狙いはそうした作品群によって視聴者の感覚を麻痺させ、ひいては人類全体を堕落させることに存するのではあるまいかなどと陰謀論めいた妄想に憑りつかれ、疑心暗鬼に駆られる日々を過ごすことになりました、というのは、さすがに嘘です。

カナダ映画

 ともかく、その恐るべき低クオリティに驚愕した初めての作品は『キラー・ゴッド』(2010)であったと記憶しております。鑑賞後「カナダ映画」というカテゴリが含み持つ危険性を察知したワタクシは警戒レベルを数段、強化いたしました。

「カナダ映画」に対してはガードを上げなければならない、これはワタクシが映画作品全般とこれまで通り良好な関係を続けていく上で、必要不可欠な措置である、その思いを強くいたしました。

無学

 しかしながら、その後まんまと『ジュラシック・シャーク』(2012)を観てしまった折は残念無念を通り越して完全にシャッポを脱ぎ、むしろ爽快感さえ覚えました。

「GYAO!さま経験値」がほぼMAXに到達していたはずの昨日も『女子大生エヴァ 覚醒』(2013)なる稀有な残念無念クオリティに接し、もはや思い残すことは何ひとつございません。

辞去

 2023年3月31日金曜日17:00、すべてのサービスを終了されたGYAO!さま、当日最後に鑑賞させていただきました『バタフライルーム』(2012)は非礼を承知で申し上げます、貴方さまに似つかわしくなく、最高に素晴らしいスリリングな作品でございました。

 10年以上にわたる長いお付き合いの末、最後の最後に辿り着いた作品が新旧絶叫クイーンの共演作であったことに喜びを覚え、その出来栄えには一周回らない、純然たる好感を抱いております。

謝辞

 有料の動画配信サイトが立ち並ぶ今日、競争激化は避けられぬことでございます。

 たとえ品質を落とすことがあったとしても、無料配信サービスを提供してくださった貴方さまには感謝の言葉以外、何もございません。どうもありがとうございました。

 たとえコメント欄に「B級」「C級」「Z級」「時間の無駄」なんて言葉が並ぼうとも、残念無念作品愛好家のワタクシにとりましては、そのすべてが同時に誉め言葉でもあります。

 お疲れさまでございました。ありがとうございました。
 ワタクシもまた貴方の作品の一つになりたい、そう思う一日でございました。

                               合掌

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