1,記念すべき1体目は飛び散った肉片
警察官になって数年目の4月
志望していた刑事課鑑識係になった
2回目の勤務で死体現場が入った
初日の勤務は変死体はなかった
いや正確には死体の通報はあったが、その時私は空き巣の現場に行っていて、他の鑑識員が行った
あーよかった、と思っていた
しかし次の勤務、
署でデスクワークをしていた18時頃
ついに最初の死体現場が入った
通報内容は・・
「踏切で列車に轢過されたもの」
初めての死体でいきなり列車飛び込み?
まさか最初からこんな重いのが来るとは
納体袋など準備をしながら、不安と緊張で押しつぶされそうになった
正直行くのが怖い
果たして自分は耐えられるのだろうか、吐いたり貧血起こしたりしてしまうのだろうか
怖かった
列車に轢かれた死体は駅前交番の時も行ったことはあるが、あれは人間の体の原型をとどめていない
ホームの上から見た線路上にあったものは、飛び散った肉片や、腕や足らしきものだった
でも交番の時はまだよかった
見るだけだ
規制線のところに立って野次馬を排除したり、目撃者を探したりするだけでいい
しかし今回は鑑識だ
死体を調べなくてはならない
交番の時とは負担がまったく違う
「早く行くぞ!」
鑑識係長である警部補の声が飛んだ
さらに刑事課長も来ることになった
もう一人の巡査の鑑識と合計4人
さらに別車両で捜査員が4人
こっちの捜査車両の運転は私だった
まだ異動してきたばかりでこの辺りの地理には詳しくないのになぜおれが運転なのか
「緊急走行で行くから赤灯(あかとう)つけて」
刑事課長が言った
しかも緊走で行くのかよ
こっちは1秒でも遅く行きたいのに
車両屋根に赤色灯がつけられ、うるさいサイレンを鳴らしながら現場に急行した。
踏切に着いた
焼肉屋のユッケ
踏切は降りたまま鳴り続けている
一斉に車から降りて、踏切内に入っていく
まず目に飛び込んできたものは
電車だった
踏切のすぐ先、それから踏切の手前でも列車が止まっていた
駅でもないところに列車が停車していることにとても違和感があった
前方に停まっているのが、轢いた車両
後方に停まっているのが、次の車両らしい。、すでにここまで来て、運転再開とともにすぐに動き出せるようにまっているようだった
線路内に立って足元を見ると、踏切付近から進行方向に向けて、、、
飛び散っていた
焼肉屋のユッケみたいなものが、線路上に転々と
その先にはもっと大きな塊が、ぐしゃぐしゃになった衣服のようなものにからまれころがっていた
足がガクガクした。呼吸が苦しい。頭頂部から血の気が引いていくサーっという音が聞こえた
行きたくない
鑑識なんて入らなければよかった
私が怯んでいる間に、あとの二人の鑑識は写真を撮りながらどんどん回収していく
納体袋のなかにどんどん詰め込んでいく
私はほとんど何もできていなかった
怖くて気持ち悪くて、逃げ出したいだけだった
鍋の白子
赤い肉片ばかりの現場をさまよっていると、その先に白いものを見つけた
なんだろうと思って近づいて見ると
そこにあったのは白子だった
鍋で食べるとこってり美味しいあの白子、私も大好きだ
なんで海でもないここに白子が?と思っていたら
警部補が「脳みそか、写真撮っとけ」
もう走ってここから逃げ出したかった
ここは地獄だ
人間の体がこんなふうになるなんて
地獄の鬼だってこんなにひどいことはしないだろう
現場についてから10分くらいしか経ってなかったと思う
私には2時間くらいに感じられた
「そろそろいいかなー」
一通り終わったところで、線路の上で話をしていた
前方に停まっていた車両は動き出した
鬼の形相で私たちを怒鳴りつけてきたのは
すると声が聞こえた
「おい!」
私たちに向けられたものとは思わず気にしないでいるともう一度
「おい!
おい!」
声のする方を見ると、後方で停車していた車両の運転席から、運転手が落ちそうなほど身を乗り出して、私たちに向かって腕を大きく振りながら、
どけ!
1秒でも早く発車したいのに、線路で話している私たちが邪魔だったようだ
ものすごい血相だった
私たちは慌てて線路から降りた
やはりここは地獄なんだ
一生の傷を負った小学生の被害者
踏切に戻ると女性刑事が泣いている小学校3年生くらいの子から話を聞いていた
どうやら目撃者らしかった
踏切を待っていたところ、女性が中に入っていき、線路に寝そべったそうだ
列車にぐしゃぐしゃにされるその瞬間まで見ていたらしい
この子の今後が心配だ
この歳で一生忘れられないショッキングなものを目の前で見てしまったのだ
現場よりきつい署での死体調べ
刑事課の業務はこれで終わりではない。
回収した死体(の断片)を今度は警察署で触って詳しく調べなければいけない。
それは、現場での作業よりも過酷だった。。
袋の中から、肉片や塊を取り出して、並べて行く
ほとんどが真っ赤に染まっていた
中には、
どす黒い何か
衣類の繊維が絡みついているもの
髪の毛のようなものが大量に巻きついてるもの
持ち上げるとデローんと何かがぶら下がり続けてそこから血が落ち続けるもの
グチャグチャ音を立てながら並べていく
あれここは生肉工場だったっけ
一応頭部らしきものはあった
が
完全に割れていた
頭部らしきものを持ち上げるとパカパカ開いたり閉じたりして揺れている
鑑識の班長が、これらの肉片をものすごいスピードで調べていく
割れた頭蓋骨の中に手を突っ込んでいた
装着しているビニール手袋はすでに真っ赤だ
手袋が骨の突起に引っかかって破れた
手袋から指先が出てしまった
なんと班長は手袋を変えることなく、そのまま素手で頭蓋骨の中に手を突っ込み、脳みそのようなものを🧠触って調べている
班長の素手は爪の中まで真っ赤だ
手には肉片やら臓器の断片やらがべっとりついている
そんなことは気にも止めず
「ここは異常なし、外傷なしだな」
と進めていく
これが長年の経験者か
女好きなスケベなオヤジだと思っていたが、見る目が一気に変わった
終わったらあの手で普通にご飯を食べられるのだろうか
こっちは見てるだけなのにしばらく食事が喉を通らなそうだ
交番勤務に戻りたい
圧倒されている間にいつの間にか検視は終わっていた
おそらく実際にかかった時間は1時間もない
私には3時間くらいに感じた
何もしていないのにフラフラで倒れそうだった
なぜ刑事課なんて志望してしまったのか
まだ始まったばかりだ
交番に戻りたい
生肉の匂いがたちこめる検視室で呆然としていた
これが刑事課鑑識係になって初めての死体だった
次の死体は⇩こちら
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読んだら気分が悪くなる。刑事のリアルな死体現場note集
刑事課の時の死体現場のリアル話。 刑事の死体現場とはどんなものか、死体現場での刑事たちの本音とは ドラマや小説のようなファンタジーは一切な…
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