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警察学校で空飛ぶ絨毯のように舞った国旗。笑いをこらえるのに必死だった

警察学校では、「国旗(日の丸)」って異常なくらい神聖なものとして扱われるんですよ。

教官「いいかお前ら、国旗は国家そのものの表れだ。国家の治安を守るお前らにとって命より大切なものだと思え」

正常な感覚でとらえれば、ただの白い布切れに赤い丸がペイントされただけのものです。

しかし、警察学校では学生の基本的人権よりも大切なものとして扱われます。

この神聖なる国旗で、私が入校中前代未聞の大事故が起きたのです。

あれはまるで空飛ぶ絨毯のようだった。

警察学校では「国旗」は神具のように扱われる

国旗を扱う時の決まりは以下のようになってます。

触る時は素手で触ってはいけない。

必ず白手袋を着用する。

持ち運ぶときの持ち方まで決まっている。

きれいに四つ折りにした国旗を、必ず↓こうやって↓持って移動しなければいけない。

いやぁ↑この画像探すのに苦労した。

いろんな検索ワードで探してやっと見つかりました

ちなみに探し当てた検索ワードは「献上」でした。


こうやって両腕の肘から下を地面と平行にして、その上に折りたたまれた国旗を乗せて持ち運びしなければいけないのです。

はっきりいって、親指と人差し指の二本あればつまんで簡単に持てるんですけど、ただの布切れをこんなに大げさにもたなければいけないのです。


しかし、こんな持ち方は当然持ち運びしずらい。

指で挟めないから、歩いた時の空気抵抗による風力だけで落ちそうになる。


しかし、万が一床に落とそうものなら、2時間は怒鳴られ、教官室の掃除と10キロの罰走ものだ。


このように、国旗は警察学校生にとって非常にやっかいなもので、できれば一度も触りたくない存在になる。


必ず毎日全員に注目されながら国旗を扱う仕事がある

しかし、この国旗。

毎日必ず誰かが触らなければならないのだ。

しかも、多くの教官と全警察学校生が見ている前で。

何かと言うと、朝の点呼の時に必ず行う「国旗掲揚」だ。


警察学校では、毎朝全学生と当直の教官たちが点呼上(校庭)に集まり、点呼を行う。

これは中々みごとなもので、整然と整列した学生がきびきびした動きと大きな声で、張り詰めた空気の中で行われる。

ざわざわした私語などもちろん一切ない。

この点呼の前、整列が終わり教官が朝礼台に上った直後に行われるのが「国旗掲揚」だ。

その日の当番に当たっている学生2名が、当直室から国旗を持ってきて、君が代を流しながら、ポールに結び付けた国旗をてっぺんに揚げていく。

小中学校の運動会などでみたことがある人も多いと思う。

当番の学生は↓こんな感じ↓で、持ってきた国旗をポールについている紐に結び付けておき、君が代が流れたら、ポールの根本付近についたハンドルを回して紐を回転させることで国旗を上に上げていく。

国旗掲揚は点呼上にいるすべての教官と全学生に注目される重圧のかかる仕事

君が代が流れ、国旗がポールのてっぺんに向かって登っていく間、全学生と教官たちは国旗に向って敬礼の姿勢を保ち続ける。

つまり、この国旗掲揚の作業は、点呼上にいるすべての人たちに注目され続ける非常にプレッシャーのかかる仕事なのだ。

国旗を扱うだけで神経すり減るのに、その作業を教官や全学生から注目されながらやるんだから、本当にやりたくない仕事だ。

私は半年間必死に逃げ続け、なんとか一度もやらずに済んだ。

そして、この国旗掲揚でもっとも起きてはならない失敗が起きてしまった


忘れもしないあの強風の日。国旗は宙を舞った

確か入校して3か月頃だった。

その日の朝はとても強風が吹いていた。

いつも通り、全学生と当直の教官たちが点呼上に集まった。

当直主任の教官が朝礼台に上がり、国旗の方に向って敬礼の姿勢をとる。

それに合わせて全学生の大総代が全学生に号令をかける

「国旗に~注目!!」

全学生が国旗に向って敬礼の姿勢をとる。

当番の学生二名が、強風でやりずらいそうにしながら、必死に国旗を揚げていく。

強風のせいで国旗がバタバタいいながらポールにまとわりついている。

ポールの7合目あたりまで登ったところで、今度はきれいに風に乗ってピーンと伸びた。

次の瞬間だった。

国旗が外れた。

高さ10メートルはあるところから、見事に強風にのった。

まるで空飛ぶ絨毯か正月の凧(カイト)のようだった。

中々落ちてこない。

そこにいる誰もが空を見上げ、空飛ぶ絨毯を目で追っている。

どこまで行くんだろう。

すこーしずつ高度を下げながら落ちてきた空飛ぶ絨毯、じゃなかった神聖なる布切れは、警察学校の施設内ギリギリのところ、フェンス上の鉄条網に引っ掛かった。

トゲトゲがしっかり食い込んだらしく、強風にあおられバタバタしながらもそこにしっかり拘束されている。


全学生が息をのんだ。

起きてはいけないことが起きてしまった。

誰もが固まっている。

強風にあおられ、釣り上げられた魚みたいにバタバタしている国旗を呆然と見つめながら、どうしていいかわからず固まっている。

これは大変なことが起きてしまった。

恐怖で体が動かないということもあるだろう。


しかし、あとでみんなと確認したら体が固まってしまった理由は恐怖だけではなかった。

そう、誰もが笑いをこらえるのに必死で固まっていた。

こんなにおかしいことがあるか。

今日の当番は命をかけて最高の仕事をしてくれた。

神聖な扱いであればあるほど、そのおもしろさも激増する。

誰もが顔が引きつっている。

もちろん私も。

一瞬でも誰かと視線があったら絶対に我慢できない。

吉沢明歩の潮のように噴き出してしまう。

私は視線を冷たいアスファルトの地面に落とした。

さらに目も瞑った。

喉から頭にかけてピクピクいっている。

笑いをこらえるのはこんなに大変なことなのか。

でも、もし笑ったところを教官に見られたら、下手したらけん銃で撃たれる。


おそらく、国旗が宙を舞ってから私が視線を地面に落とすまで1分もないくらいの時間だったと思う。

でも私にとっては数分間のように長く感じられた。

これほど必死に笑いをこらえたのは、この時が一番だったと思う。

私が視線を地面に落としたのとほぼ同時に、今まで聞いたことのないボルテージの教官の怒声が響き渡った

「おい!早く誰か取ってこい!」

「当番の二人!教官室に来い!」

二人の尊い命が失われた。

その日の学生寮は、この話題で持ち切りだった。

絶対教官たちだって教官室では笑っていたはずだ。


警察学校ではこんなに愉快な経験もできるのです。

入校してみたくなったでしょ?

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