6、一家全焼火災の焼死体と怪奇電話
刑事課で死体ばかりを扱ってると、
怪奇現象?
のような体験はやはり起きる
今回はその中のひとつ、3人が焼死体で見つかった一家全焼火災の時のこと
その火災から1ヶ月後にかかってきた謎の119番通報のこと
燃え盛る火炎と空に登る黒煙
始まりは「火災発生」の110番。
日曜日の午後2時頃、天気は快晴
民家が点在する田園地帯にある古い民家から、ものすごい火の手が上がっているという通報
私たち刑事課員が現場に着くと、すでに消防車両が10台近く到着していて全力で放水を行っていた
しかしそれでもまだまだ燃えていた
ものすごい勢いで炎が空に向かっている
パチパチっと音を立て、20メートル離れていても熱風が飛んでくる
消防隊の力をもってしても、消火まで数時間かかることは間違いなさそうだった
まだ燃えている現場で刑事課員がやるべきこと
死傷者の有無の確認、目撃者や近隣住民への聞き込み
特に死傷者がいるかいないかは超重要
それで仕事の量が3倍以上は違ってくる
しかし聞き込みを進めると絶望的だった
近所の人たちから聞き込みをしたところ、
この燃えている家の住人の家族構成は
90歳のおばあちゃん
その息子夫婦(70歳前後)
の計3人との情報が入った
火災が発生して素早く逃げられる人たちではない
現場付近でも所在が確認できない
この燃え盛る家の中で亡くなっているのはほぼ間違いなかった
それでもどうか外出中であってほしいと希望的観測も捨てきれずにいた
二時間くらい経っただろうか、消防がやっと消火した時、二階建てだった木造家屋は柱の一本も建っていない灰になっていた
刑事課が大変なのはここから
消火が終わると火災現場の捜査開始
刑事課が大変なのはここからだ
家の屋根や壁、家具や電化製品やらが燃えまくって積み重なっているものを、ひとつひとつ調べながら、中に死傷者がいないか、出火原因は何かを調べていく
本当に気の遠くなる作業になる
その日ではとても終わらず、夕方で一度打ち切られ翌日の朝からまた再開となった
さらに事態は悪くなった。翌日は大雨だった
やはり出てしまった遺体
開始から数時間後
消防士の一人から
「遺体がでました」
との声が。
みんなで駆け寄る。
自分も覗き込むと
最初は人間の死体には見えなかった
そういえば刑事課に入って焼死体は初めてだった
灰や泥の中に埋もれいていたそれは小さな黒い塊だった
本当に小さかった
しかしよく見ると、頭部、胴体、腕、足の形をしていた
真っ黒に焼け焦げている
頭髪など一本も残ってない
顔はもちろんわからない、鼻や耳はなんとかそれらしきものがわかる程度
性別すらわからない
落ちてきた屋根や壁に潰され体の一部がちぎれていた
腕はボクサーの構えのように曲がっていたが、関節は固まっていて動かない
これが焼き尽くされた焼死体だった
まるで子どものような大きさだったが、私たちが食べている肉も焼くと小さくなる
もともと体格の小さなおばあちゃんが焼き尽くされて、こどものような大きさになっていた
やはり亡くなっていたか
予想はしていたが、刑事課員全員が落胆した
この家に住んでいた老人たちは3人
ということは、この焼け跡の中にはまだ二人埋まっているのだろう
再び掘り起こし作業を再会する
数時間後にはもう一人、さらにもう一人と3人すべての遺体が発見された
どの遺体も焼けるところまで焼けており、身元の確認はまったくできない状態だった
生前の彼らを知っている人に確認してもらったところでわからない
科学的な方法で身元確認をするしかない
しかしこれがまたたくさんの手続きを必要として時間も掛かる
こうして、火災の捜査だけでも気の遠くなるような作業なのに、3人の死体の捜査という重い仕事が増えてしまった
夜勤明けの朝から始まった現場作業が終了したのは昼頃
遺体は先に別の班が収容し署へ搬送していた
現場作業を終えた私たちも署に戻り検視室へ入った
そこには黒い塊が3つ並んでいた
死因も身元もわからないため解剖を行うことになった
解剖は一人入るだけでも大変だ
事前の手続きも大変だし、当日大学病院まで遺体を連れて行くのも大変
解剖中は数時間立ちっぱなしで解剖医の所見を記録し、終わったら遺体とともに帰ってくる
本当に大変な仕事だ
解剖については、解剖だけの特集記事を別で書こうと思う
翌日に3人の解剖が行われた
外は真っ黒だったのに、切り刻んで中を開いて行くと、中は人間の色をしていた
チョコレートケーキを割ると、外は真っ黒なのに中は黄色いスポンジ、あれと似ていた
解剖の結果、殺人などの事件性はなし
火災が発生した家屋の中で焼死したという結論にいたった
出火原因も特定、放火の可能性はなし。
住人の不注意から火災が発生した事故として処理はすべて終了した
3ヶ月後、火災現場で一緒だった消防士から聞いた奇妙な119番通報。科学的にはあり得るはずのない3回の通報はなんだったのか
この火災から約3ヶ月後、火災現場で一緒だった消防士と別の火災現場で会った
その消防士は私の顔を見るとすぐに話しかけてきた
「あの時はお疲れ様でした。翌日の雨や遺体で本当に大変な火災でしたね。
それで実はですね、あの3人の高齢者たちが亡くなった火災。
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