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”そういう日”

会社をやめて親父の手伝いで農業をやってます。まぁ家事手伝いレベルで「職業は農家です」なんて言えたものでは無いのですが。

そんな暮らしの中で不思議なことが起こります。
モチベーションとかやる気とかの話です。


うちは夏が繁忙期で一年の収入の大部分がそこで得られます。その時期は毎日仕事に行きます。だいたい3〜4ヶ月くらい。基本休みなんか無いです。ただ毎日みっちり働くというわけでも無いので、思ってるより楽です。あくまで僕の場合です。


で、そのメインの作物は主に親父が世話をしていて、秋とか冬には僕は空いている土地で野菜を植えたりします。

僕が農業をやり始めて5年くらいですが、毎年ラッキョウを育ててました。

僕は雇用されているわけでは無いので基本やりたい時にやりたい分だけ働くというスタイルが取れるわけですが、僕がやらなきゃ作物は実りません。また、出荷する時期によってはびっくりするぐらい単価が安くなるので、なるべく単価の高い時期から逆算して植え付けを行います。意外かもしれませんが農家にも締め切り的なものがあります。


僕は精神的に疲弊して体にまで影響が現れた末に会社を退職しているので、農作を始めた当初はモチベーションなんかほぼ無い状態です。初めの2年なんか全然作業が進まないし、理想の植え付けの時期なんか大幅に越して作業してました。もちろんまとまったお金にはなりませんでした。


ただ3年目くらいには、これではいかんと思ってかなりやる気を出して取り組みました。作業に慣れてきた事もありますし、精神面でも回復してきた事も理由かもしれませんが、その年はモチベーションが高かったです。

その年のラッキョウの作付面積は例年の3倍。しかもその3ぶんの2は理想の植え付け時期に作業を終えることができました。ただ、頑張った反動なのか残り3ぶんの1はやる気なくだらだらと終えてしまいました。

後半はやる気が失速したものの、例年の比べて作付けは3倍。そのうち半分以上が理想的な時期に作業を終えている。これだけ出来ればだいぶまとまったお金が入ります。単純に考えても3倍。しかも質も期待できる。親父からもお墨付き。




結論からいうとその時のラッキョウの売り上げは過去最低でした。


理由としては、まずその年の単価が安かった。

その年はラッキョウを育てる農家が多く、例年よりも生産量が増え、よほど質の良い物以外は値段が低くつけられてしまいました。需要と供給の関係ですね。


そしてもう一つの理由が台風です。

僕は沖縄で農業をしています。沖縄ではほぼ毎年のように台風がきます。そして年によっては11月まで台風シーズンが長引く時があります。

ラッキョウはだいたい9月を目処に植え付けます。

9月と言えば、別に台風がきてもおかしくは無い時期です。いつものことです。

では、何が悪かったのか。


実はこの台風がくる前に、やる気もりもりで植え付けた分はある程度芽が伸びていたんです。それが風にあおられて傷んでしまいました。

逆にやる気なしの状態で植え付けた分はまだ芽が出ていない。なんならその台風が去ったあとで植えた部分が多い。

結果として売り上げの8割以上がそのやる気ない植え付けラッキョウでした。


もちろん台風がくる前提の土地ですから、それを主軸の作物として育てたいなら台風対策は必須です。しかし、僕の場合は次の夏までのつなぎとしての意味合いが強いのでそこまで費用をかけたくない状態でした。

ですからあくまでも僕の場合の話です。

ですが、かなり調子の良い状態でシーズンに挑んだのに逆にマイナス方面に影響してしまうという。かなり精神的にはこたえました。


似た話がもう一個あって、それはとうもろこし。こっちは11月から12月くらいに種をまいて5月くらいに出荷という、台風なんか気にしない状態です。

結果、1000粒以上植えて芽が出たのが100も無い。下手したら50もなかったと思います。

こちらの理由はおそらく、まいた種をネズミに食べられていました。

こっちは植えるときにマルチビニールを使っていたんですが、地面にビニールを強いてそのビニールに穴を開けそこに種を植えるというもので、要は雑草を除去する手間を省いたり、土の過剰な乾燥を防ぐというメリットがあるものです。ただ、どうやらネズミにとっても良い環境だったみたいです。



まだまだ未熟者だ。もっと農業を勉強しなければ。もっと真摯に取り組まなければ。


と、思っていたところ

その道20年以上の親父いわく


あ〜あるあるw。もうしょっちゅうだよ!

逆にやる気がなかったり、ちょっとミスしたなって事が後々に良かったりする。

元気の無い作物をどうにかしようとして、逆に枯れたこともある。

頑張るほどうまく行かない事が多い。

だから、ただやれる時にやれそうな事にだけ手をつける。

調子が良いときは逆に気をつけてる。そういう日のあとは体痛いからw

やる気ない日でも、ふっと出来る時がきたりするからとりあえず畑には行って時間潰す。とりあえずその場にいるようにはする。すぐ作業に移れるから。家にいてもやる事ないし。

でもどうやっても気分が乗らない日があるから、その日は早めに3時くらいで帰ったりする。

それで5時前からビール飲みながら映画見て8時くらいに寝るw。


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僕は会社員としての経験がほぼ無いのですが、やる気が無い事がいい意味で裏目にでた事ありませんか。

やる気出して取り掛かって終わらせた仕事がキャンセルされたり。

逆にやる気出なくて取り掛かってなかったら、やっぱ無しでとか言われたり。

締め切り忘れててヤベェとか思ってとりあえずクライアントに連絡したら、忘れてましたwとか言われたり。

農業やってて、やる気出ない時ってやる気出さなくても良い時なんじゃなかろうか。とつくづく思ってます。(これを言ったら親父もうなずいてました)

もちろん一般的な仕事と個人的な農業経験を一緒にはできませんが。

でも、やる気が出ない、うまく行かない時って意外と個人的な問題ではなく、人間関係でもなく、それこそ理由なく”そういう日”、”そういう時期”かも。

もう”そういう日”はそういう日なりに楽しんで過ごすと良いです。ワクワクする何にのめり込むも良し。ひたすらボーっとするも良し。

それもやる気出ないならとっとと寝ましょう。

今日天気が悪いのはあなたの責任でもないし、あなたがあなたである事に問題は無いです。それと同じく”そういう日”なだけです。

では、また。

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