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『最新テクノロジーで蘇らせる神山伝統の正月飾り』を写真で振り返る


こんにちは、神山メイカースペースの本橋です。

本橋です

2024年の1月から進めていた年間プロジェクト『最新テクノロジーで蘇らせる神山伝統の正月飾り』が年末にフィナーレを迎えました。これは神山町に古くから伝わり、30年ほど前に途絶えてしまった伝統を最新テクノロジーで復活させようという試みです。

最新テクノロジーで蘇らせる神山伝統の正月飾りプロジェクト

データ化された大黒天さん

このプロジェクトでは1年を通して正月飾りのデータ化とプリントを繰り返しました。

まずは朽ちかけた正月飾りを3Dスキャナーでデータ化して、コンピューター上で欠けた部分を補うように補修します。時間とともに壊れていってしまう正月飾りを、失われることのないデジタルデータとして蘇らせました。それから補修済みのデータを3Dプリンターを使ってプラスチック素材で再現します。これで大勢のひとが同じモノを手に取れます。

イベント当日は大勢の大人や子供が参加してくれて、賑やかなイベントとなりました。アクリル絵の具で色を塗るのも、絵の具をあたたかい薪ストーブで乾かすのも、色とりどりに塗られた正月飾りを松の枝に吊るすのも、そのたびに子供たちが歓声を上げていたことを思い出します。彼らはデジタルがどうのなんて話は気にしないで楽しんでくれていました。

補修したデータはデジタルでしたが、プリントした正月飾りなら手に取って色を塗って遊べます。以前の神山町でも、こんなふうに手に取って飾りつけて遊んでいたのではないでしょうか。

2024年は今回のイベントをもって一区切りとしましたが、2025年も年末に向けて準備していくつもりです。今回の会場となった『鮎喰川コモン』は町のリビングというコンセプトの施設で、毎日大勢の子供たちが出入りしています。そんな神山で遊ぶ子供たちの記憶に残るような恒例行事にしていきたいと考えています。

プロジェクトが生まれたきっかけ

コモンのスタッフさんが「3Dプリンタでこんなのも作れたりしますか?」とピンク色の正月飾りを見せてくれました。CoderDojoの準備でパソコンを並べていたときのことでした。

僕は2018年からCoderDojo神山という団体を主催しています。鮎喰川コモンにパソコンを持ち込み、だれでも自由にコンピューターで遊べる場づくりです。そのCoderDojoにもたびたび3Dプリンタを持ち込んでいました。子供たちは動く機械が大好きで、機械から生み出されるオブジェクトを延々と見つめる子たちも大勢います。

海老と酒樽

スタッフさんが見せてくれた正月飾りは、海老、鯛、恵比寿天、大黒天、大小の酒樽です。モナカのように軽く、ところどころ朱色に塗られた米粉の飾りでした。ピンク色は米粉に混ぜられた食紅でしょう。この米粉の正月飾りは30年ほど前までは町の商店で売られていたそうです。ところが職人さんが引退してしまい、新しいものが手に入らなくなりました。

毎年作られて軒先に飾られて、松の内が開けるとどんと焼きのようにお焚きあげされていたのだと思います。米粉で作られているためパリパリと非常にもろく、「子供の頃は腹が減るとこっそり食べていた」なんて話もお伺いしました。長いこと使い続けるようなものではなく、毎年新しく買い替える身近な存在だったことが分かります。

鮎喰川コモンでは、その人形たちを乾燥剤と防腐剤で大切に保存されていた地元の方から託されて、2022年、2023年とコモンで飾っていたそうです。

実際にご相談いただいた時点で部分的に割れている飾りも多く、かろうじて形を保っているように見えました。そんな朽ちゆきつつある正月飾りをデジタル技術で残せないか、というご相談から今回のイベントはスタートしています。

見えない向こう側は割れてしまっていました

神山の正月飾りについて調べてみると

イン神山には中村明美さんが書かれた松飾りの記事があります。神山町史や町内の方々に広く取材されてまとめられています。

検索するとこんな情報もありました。徳島県立博物館の学芸員さんによる調査です。

https://museum.bunmori.tokushima.jp/shotake/index.html

徳島県の正月飾りというコーナーがあり、そこに鬼籠野の正月飾りについての記載があります。神山町内だけをみても、各地域・各家庭ごとに多様なお正月を迎えられていたことがわかります。

今回のプロジェクトはプラスチックでの再現にはなりますが、3Dプリンターはこれから普及が見込まれる技術です。そしてデジタルデータはいつまでも朽ちる心配はありません。

機械の動きに見入っている

3Dスキャナーと3Dプることでモノ自体はいつまでも手に入るようになります。しかしいったん途絶えてしまった伝統のほとんどはそのまま失われてしまいます。今のうちにデータ化をしておけば、将来的に誰でも3Dプリンタで入手できるようになります。

正月飾りを誰でも手軽に入手できるようにすることで、伝統維持の一助にでもなれたらうれしいと思います。

写真で振り返る松飾りワークショップ

準備開始!

この松を飾り付けていきます
塗りおえたら薪ストーブの前でアクリル絵の具を乾かします
玄関先の天井から吊るす
枝先をその年の恵方に向けて吊るします

みんなで色塗り開始!

塗る前はピンク色
かわいい大黒天
ハート形の鯛
正月関係なく塗るのもあり
どうしてもGATEWAYを思い出す世代
グラデーションを作る塗り方
塗り終えたら吊るしていきます
少しずつ飾りが増えていく
イベント中もフィラメントを使いきるまでプリントしました
子供たちが飽きてきたら大人が塗ります
数がそろってきました
ダンディえべっさん
グラデーション

お正月を迎えた松飾り

お正月を迎えます
鬼籠野神社の恵比寿さま

つぎにつながる「松飾り」

12/22に開催したイベント当日の様子は鮎喰川コモンのWebサイトでもご覧いただけます。こちらもぜひご覧ください!

松飾りをご提供くださった松本さまをはじめ、1年を通してご協力いただいた鮎喰川コモンのみなさま、このプロジェクトに参加してくれたCoderDojo神山のニンジャたち、そして多大なご支援をくださった保護者のみなさまに心より感謝申し上げます。この感謝の気持ちとともに、2024年のプロジェクトを締めくくらせていただきます。本当にありがとうございました。

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