無理〜クリスマスにはステーキみたいなビーフシチューを
クリスマスといえばクリスマスチキン。だけど今年はあえて牛肉料理をメインに計画した。
以前から、ステーキみたいなビーフシチューを食べてみたいと思っていた。ビーフシチューといえば一口サイズにカットした肉を使うのが主流だが、そうじゃない。ステーキみたいに一枚肉のまんま使うのだ。それをどこかで見てから、ずっとやってみたいと思っていた。
ところが23日になり、雲行きが怪しくなってきた。子が保育園で風邪をもらい、咳をしている。幸い、熱はない。私の顔の前で咳をするので、私にも少しうつった。すぐに首にマフラーを巻き、葛根湯で対応したので、私は難を逃れた。私は風邪をひくと喘息にもなり、厄介な人間なのだ。
しかし、24日の朝に悲劇は起きた。子を抱っこして階段を降りるとき、階段を踏み外した。子は無事だったが、私は肩、肩甲骨、背中、腰、ふくらはぎ、右肘、左手指を痛めてしまった。
痛い。時間の経過とともに首も痛くなってきた。ムチウチのようだ。こんな状態では料理など作れないのではないか。
しかし、作りたかった。一年に数回しかない、ご馳走を作れる日である。ただでさえ、クリスマスディナーを食べにレストランへ行ったら相応のお金がかかる。それだけではない。やれマスクだ消毒だ、黙食だと、どいつもこいつも馬鹿丸出しのマナーを強いてくる。そんな状態を楽しめるはずがない。ディナーでも何でもない糞糞糞、馬鹿の極みだ。
旦那が有休を取っていたので一緒に、普段行かないスーパーに行き、普段は買わない食材を買う。これだけで相当ハッピーである。旦那もうきうきして楽しそうに売り場を歩き回っていた。
帰宅して、キッチンに立つ。楽しいことをしていると辛いのを忘れられる。楽しいこと、それは料理することである。未知の食材と向き合うと、知性の木がぐんぐん枝を伸ばしていくのが体感できる。
スネ肉を塊で買ったのは初めてだ。包丁で切るのも難儀したほど、物凄い筋がある。こんなもんが柔らかく食べられるのだろうか。心配になり、スジ切り器で肉の表面を叩いてみた。
香ばしい香りが立ち込める。それにしても、堅い肉だ。いいのか、これで。
野菜は玉ねぎのみ。玉ねぎもまた、玉ねぎの姿が分からないように、「具なし」に見えるように、ペースト状にした。あくまでステーキ感を演出するためだ。
しかし、この後3時間ほど煮込んだものを菜箸でつついたものの、あまり柔らかくならなかった。なので、圧力鍋に入れた。
あまり長い時間かけて、せっかくの「ステーキのような形の肉」が崩れてしまったら発狂するから。
それなりに柔らかくなったのでルウを入れる。普段の安物ルウではない。名前を忘れたが、見た目も値段もお上品なルウだった。
さて、メインはできた。あとは付け合わせにトーストと、ご飯物としてパエリア、いつものサラダとチーズとなる。今回はシチューがあるからスープは作らず。食後にはケーキを出す。
うーむ。なんかもう一皿、欲しくない?子はフライドポテトが好きだから、それでも良いんだけど、炭水化物だらけにならない?
ならばと、冷凍庫から豚こま肉を引っ張り出す。これを使ってオサレな前菜を作ろうではないか。
一品作り足して、氣が済んだ。そしてパエリアも作った。子が時々キッチンに現れて、サンタさんが届けてくれた「らしい」パトカーのおもちゃを見せびらかしにくる。
そんなわけで完成。まずは前菜から。
サラダは必要。ドレッシングも何もかけてない。他の料理の味が濃いから、これが箸休めになる。
豚のテリーヌ。粗挽きのボロニアソーセージのような味わい。なかなか家族に好評だった。
パエリア。サフランを切らしていたから、トマトベースに。ビーフシチューよりも存在感があり、メインのような見た目になる。子は「チャーハン」と言って喜んで食べた。
そしてこっちが本当のメイン。これには驚いた。スプーンで切れるくらい肉がほろほろになり、とても柔らか。白いスジ部分は半透明のゼラチン質になり、ぷるぷるに。飴色玉ねぎが溶け込んだシチューとも相性抜群だ。トーストをつけて食べても美味しい。そうだよ、コレだよ。人参もジャガイモもセロリも要らない。ビーフシチューは肉デカ、具なしが最高だ。これでいいんだ。これがいいんだ。肉好きの旦那など、めちゃめちゃ喜んで食べてくれた。
心なしか、打撲の痛みが薄れていくようだった。初めて作ったけれど、大成功。無理して良かった。必要な無理だ。今後のレパートリーに加えよう。そんなわけで、我が家の無理〜クリスマスは無事に幕を閉じた。