韻に敢えて注目した上でもOfficial髭男dismのsubtitleが名曲過ぎて感想を書きたくなった
今年も紅白出場が決定したOfficial髭男dism。
演奏する曲はsubtitle。今年の覇権ドラマsilentの主題歌です。ドラマは観ていないのですが、名曲だなって思います。
ということで、野暮なのはわかりつつ、あえて韻に注目して解説したいと思います。
「こおーり」と「こころに」「o-oi」「oooi」でフローでまず踏んでます。
そしてそのまま「太陽を」「ポジションを」は「aiou」、「oion」で脚韻。
「そんな」と「ごうまん」は「ona」「onan」同じ個所で確りと韻を踏む。
そして締めの印象的な「笑って」「やって」は言わずもがな。
あとは、文頭と文末を「o」音にしていることでグルーブを生んでますね。
凍り→心に→太陽を
そして→僕が→ポジションを
そんな→傲慢→思い込みを
拗らせてたんだよ→ごめんね
こんなに自然にやられるとはビンビンに名曲の予感を感じさせます。
しかも最後の「ごめんね」は「o」音で初めて「e」音で終わらせる言葉にして後の「笑って やって」につなげるという相変わらずの丁寧さ。
最初のバースとは打って変わって、韻を踏んでません。
脚韻は、「ほどの→ポジティブの→気づいたんだよ」といった具合に相変わらず「o」音で落としてグルーブは生んでます。
しかし、このバースでは最初のバースで感づいていたものが確信に変わったはずです。
対比構造の歌詞であると。
もう一回最初の歌詞から挙げると
凍り⇔太陽
僕⇔君
火傷⇔冷たさ
ポジティブ⇔残酷
ひんやり⇔熱い
とこれでもかと対比しております。
さらに文脈から言うと、熱い方が実のところ冷たく、一見ネガティブな冷たさにポジティブさを置いているのに気づきます。そこも逆転させている。
この歌詞とかヒゲダンあるあるで、内面世界に歌詞を掘り下げた時、ポジティブの余計なお節介さをよく表現しているんですよね。よく2番の歌詞であるのですが、バラードということもありいきなりガンガンにヒゲダン世界観を飛ばしてますね。
で、韻の話から何故対比構造の話をしたかというと、脚韻は最初のバースと変わらず「o」音で落としているのですが、こちらの頭韻は無声音になりがちな「き」「し」「つ」「ひ」「り」を使っているのです。
例:冷たさと残酷さに気づいたんだよ
きっと君に
ひんやり熱いもの
有声音と無声音になる音を組み合わせて、音のイメージの対比まで生み出して、さらに温度感も表しているんですよ。
いや、天才かよ!
ここも韻を踏んではいないのですが、フローが完全にラップのそれ。トラップでよくある三連符のフローで確りと「o」音で落としているため耳触りが最高にいいです。
ネガティブであるほど、軽やかに歌う感じもヒゲダンあるあるですね。
これはもう、サビで滅茶苦茶エモーショナル。ここまで韻やフローを駆使した分、余計に際立ちます。
しかも、「夢中になればなるほどに形は崩れ落ちて溶けていって 消えてしまうけど」のネガティブなところはこれまた3連符でさらっと流す。
「愛してるよりも愛が届くまで」
の自己の感情で完結していないあたりいいですよね。
Titleが「愛」だとしたらsubtitleは「愛の内容」なのかなと思いました。
二番になると、韻は踏んでません。対比構造は相変わらずで、また一番のAメロとなるべく文頭、文末の音を合わせるようにしております。
「僕なんかもう」や「だろう」は「u」音に見せて、その前が「o」音なので実質は「o」音に聞こえるテクニックですね。
いや、踏むんかい!ゴリッゴリに踏むんかい。本当飽きさせないな。
僕の大好きな箇所この三連符。1番のBメロはそこまで韻を踏んでないでフローでラップっぽさが出ておりましたが、2番でバシバシ韻を決めてくる。
いやー、憎い!!
「冷たいんでしょう」→「冗談」と食い気味フローは「ou」で韻を踏むわ。
そこからさらに脚韻を「でしょう」から引っ張った「eo」音で落としまくるわ、かと思えば「そんな」「残酷な」でさらーっと「ona」「oua」で踏ますわ普通にラップです。
そして後半
「救いたい=救われたい」の「ai」音を「優しく」「剥がし」の「aai」でさらに踏ましていく。すげー!
で、で、さらに最後のとこですよ!!??
堅い理論武装 プライドの過剰包装を
堅いの「aai」で確り踏んで始まり「プライド」の「uaio」で繋げつつ
りろんぶそう→かじょうほうそうと怒涛の「ou」踏み。
しかもしかも、今までずっと対比構造・・・つまり<>で行っていたのが救いたい=救われたいと言葉は対比なのにイコールなったわけですよ。
展開が凄すぎる。映画やん。こんなん歌という名の映画やん。
二番のサビは「正しさ」「優しさ」の「aia」「かけた」「割れた」の「aea」とそれぞれ出だしを踏みます。
「一人」と「ほしい」は「oi」でさらっと踏み、「カーテン」「重ねて」も「aen」「aee」とさら踏み。
ただ、1番のサビは一つも基本的に踏まなかったのに対し、今度は少し韻をちりばめてるなぁと思わせての・・・
大サビですよ。
「絶えず僕らのストーリーに添えられた字幕のように」で「subtitle」の曲名回収。
さらに「字幕」だけ「消えてしまう」で韻を踏んでる。
ここではっきりと韻を踏んでるのが「字幕」だけっていうのが本当に凄いじゃないですか。
「言葉は放ったら消えるけども、字幕は映像に残って刻まれる。字幕のように想いを刻みたい。」という感情がくみ取れます。
ここまできて、逆にドラマに興味を持ってあらすじだけ見ましたが、難病による聴覚障害のお話だったのですね。
silentのタイトルからサイレント映画→字幕とつなげているのでしょう。ドラマの世界観にもマッチさせてこのクオリティの曲ですから、全く衰えを知らないセンスです。
凄すぎる。
是非、皆さんも紅白前にsubtitleを予習してみてください。