見出し画像

「恋の星図と猫日和」そして宝塚の西洋館

『恋の星図と猫日和』2巻が発売になりました。

リオとつばめは、ふたりの祖母たちが残した、燕月荘(えんげつそう)という西洋館で、お見合いをして、祖母たちの遺言によって、そのまま同居することになります。 


リオの案内で、初めて、燕月荘を訪れたつばめ

二人が暮らす燕月荘は、宝塚市の雲雀丘という土地にあります。(もより駅名は雲雀丘花屋敷)

神戸の異人館と混同されることもありますが、同じ兵庫県ではあっても、こちらは海には面しておらず、大阪府と兵庫県が隣接する北摂と呼ばれる地域で、丘というか、プチ山です。急勾配です。

1巻・第3話より

漫画に登場する燕月荘の建物は、雲雀丘には実在していません。

現在、はっきりと姿を見ることができる西洋館は、ヴォリーズ設計による高崎邸、そして庄司邸を残すのみです。

庄司邸(S邸)は、コロナ発生より以前には、
ローズガーデンのイベント公開がありましたが、
現在は行われていないそうです。 
高崎邸も内部見学は予約が必要です。

駅すぐ近くには、旧安田邸がありますが、老朽化によって敷地内に入ることはできず、木々に囲まれているため、一部を垣間見ることができる状態です。


大正時代から昭和初期にかけて建てられた、雲雀丘と花屋敷のお屋敷の多くが、戦後復興期と、1995年の阪神淡路大震災を経て、解体されました。
ですが、昔はたくさんのお屋敷(洋館および和洋折衷館)が存在していました。

神戸の異人館は、文字通り、外国人のために建てられた洋館です。
港町の外国人居留地のキャパがせまかったため、別荘として山側にどんどん洋館が建ち、現在ではとても有名な観光地となっています。

対して、宝塚市の雲雀丘に建てられたお屋敷は、その、神戸の外国人別荘地の土地開発にも関わった阿部元太郎氏によって、山林だった土地が切り開かれ、英国の田園都市をモデルに開発された、日本人のための住宅地でした。

参考文献です。一部 PDF で読むことができます。


小林一三によって、宝塚歌劇が作られたのと同じ時代、豊かな自然と景観を大切にして、雲雀丘・花屋敷の住宅開発が行われました。

終戦期には、多くの屋敷があり、米軍の占領期には32戸もの西洋館(および和洋折衷館)が、将校の住宅として接収されたそうです。



1巻収録・第4話より

燕月荘のどこかに隠されているという、占星術の太陽のマークを探す二人の会話。



古い洋館で暮らしながら、リオとつばめは、少しずつお互いを知ってゆきます。

つばめと月の意匠に飾られた燕月荘に縁を感じるつばめでした

恋の星図とはなんでしょうか? 猫日和とは?

現在、各所で1巻の増量試し読みが行われており、2話目まで無料で読みいただくことができます。

また、Bookwalkerさん、ebookjapanさんでは、1話から3話の半分くらいまでが、試し読み増量でお読みいただけます。

2巻と合わせて、よろしくお願いします!



恋物語と、星占いと、猫と西洋館、ゆったりとお楽しみください。

桜の季節の雲雀丘。赤い屋根が庄司邸です。

雲雀丘花屋敷一帯は、観光地ではなく、普通の住宅地のため、駐車場などの設備はありません。訪れてみようかな…と思われた皆様は、ぜひ住民の方のプライバシーに配慮なさりつつ、徒歩でゆっくりとお楽しみください。
桜の季節は本当に見事ですよ。

もとなおこ 2024 3月吉日

お気持ちありがとうございます。商業誌以外、つまり原稿料のない創作活動のための資金とさせていただきます! 「楽しい」のお返しができるようにがんばります!