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アウトプット思考で学びを深める

昨年から、某ビジネススクールの思考系クラスにおいて、受講生の学びを促進するカタライザ(メンター)という役を担っている。自分も5年前に受講したクラスで懐かしいという思いに耽りながら、自分も学びを実務にフル活用できてないと感じる場面もある。思考系クラスを傍聴していて、気がついたことを記しておきたい。

思考は日常業務・日常生活でも常に営んでいる行為であるにもかかわらず、その行為は無意識に行われており、体系的に理解されていないケースがほとんどであると感じている。

仕事で報告書やメールなどの文章を書くことはビジネスマンにとって避けられない。その書き方をしっかりと学んでいないことは丸腰で戦場に挑んでいるようなものである。加えて、職場で丁寧に文章の書き方を指導してくれる上司・先輩など皆無であろう(小生の経験ではそのような指導を受けたことがないだけかも。。。っていう自分も丁寧に論理的構造について会社のメンバーに説明したことはないんですよね。。。)

実はビジネススクールの論理的思考クラスで学ぶことは特に目新しいことはなく、「論理的思考法」系の書籍をめくれば概ね似たようなことが書かれている内容がほとんどである。

分かるとできるの違い

しかしながら、問題なのは、わかっていても実務でそれをちゃんとできている人は稀であるということ。ビジネススクールの価値は、分かる(理解する)をできるに変えることであると思う。

知識を実戦で使うことができる能力にするためには、普段から意識して探求(試行錯誤)し続け、継続して実践していく必要がある。その習慣化を促す仕組みづくりがビジネススクールの一番の価値である。

例えば、思考系クラスで言うと、自分の思考がどのように偏っているのか、幅広く考えられていないのか、ということのフィードバックを他者からもらい、視座を高めることができることである。習慣化というポイントであれば、クラスメートからのピア・プレッシャーにより自分も成長しなければならないと感じることができる切磋琢磨の状況を作れることであろう。

アウトプットしないと自分がわからない

自分が人と違う考え方をしているかどうかは、アウトプット(外在化)しないとわからない。実務を経験しているとどうしても無意識に判断できることが増えてきて、考えなくてもそれなりの行動ができるようになってしまう。そんな中で経験したことがない課題に対面した際に自分ではどうしようもできない状況になってしまう。上司も自分の価値観を説明することなく、結果のみが部下に見えるようなケースだとどんなプロセスでその判断がくだされたのかもわからない(直感的に判断しているので説明できないというケースも多いかも)。


さて、考え方のプロセスです。

イシュー(今、それをやらなければいけない理由)を明確に設定する

まず初めにやるべきことは、なにが現在解決しなければいけない争点なのかを明確に定義をしなければならない。すなわち、なんのためにレポートを書くのかの目的を定める。問いが正しくなければ、もちろん答えも正しくないのである!まずは何が課題なのかを見極めるのに意識を集中したい。

その問題を解決しないと、どうなってしまうのかのインパクトをイメージするとモノごとの優先順位は決めやすい(重要度x緊急度という2軸が優先順位付けでは肝心である)。イシューの設定次第では、その後の論理展開が全く異なることを覚えておいてもらいたい。

よく実務でありがちなのは、目的を定めないままに自分が感じていることをいきなり書いてしまい、結局意味のないレポートを上げてしまう。超絶基本的なことではあるが、レポートであれ、メールであれ、必ず目的がある。それを読んだ人にどう動いてもらいたいのかをイメージしなければならない。

ビジネススクールのクラスのケーススタディをベースにした場合では、シラバスをじっくり読んで自分なりにイシューを設定することが先決。いきなり与えられている情報すべてを読み解こうとしても時間がかかってしまい効率が悪い。且つ、意図的に誘導するようなトリックに陥ってしまうことがある(実務で言うと目の前に与えられた情報が正しいと判断してしまう)。

このあたりは、安宅和人さんの名著「イシューからはじめよ」に詳しいので、興味のある方はご一読されることをお勧めする。


<参考>会社の経営戦略を知らずして、自分の課題重要度は測れない

課題を見つけるためには、基準がないといけない。何が基準となっていて、現状はそこから何が乖離しているのか?を突き詰めないといけない。ビジネス上の課題であれば、基本的な経営戦略のお作法に沿って検討を開始しなければいけない。

1.業界特性(PEST分析で社会の大きな流れをつかみ、5フォース分析から業界の勝ちパターンであるKSFを特定する)

2.製品・サービス特性を分析し顧客の購買行動の分析し、顧客が購買を決心する大きな要因(KBF)の特定。

この勝ちパターンから、自社が目指すべき大きな戦略(経営戦略)を考える。自分がおかれている立場は全社の方針の中でどんな意味があるのかをまずは確認しておきたい。

これらはビジネス戦略を考える上では必ず押さえておく(理解しておく)必要がある背景です。


アウトラインプロセッサを用いて論点を整理する

イシュー(考えるべき問い)を設定したあとにやらなければならないは、どうやってその問いに答えるのか?を考えることである。

実務でもよく陥りがちなのは、自分が気がついたことだけを述べてしまい、相手の聞きたい関心事項を押さえられていないというケースである。自分の考えを伝えるだけの学校教育の感想文であれば、それでも良いかもしれない。しかしながら、ビジネスにおいてレポートなり、メールを書くということは相手を動かすことを忘れてはならない。

そのために忘れてはいけないのは「論点設計」である。どういう論点を網羅すれば設定した問いに対して回答をしたことになるのか?

例をあげてみよう。「営業とはなにか?」という問いを設定した際に、「それは顧客とのコミュニケーションだよ」という回答は、間違っているとは言えない。しかしながら、貴方は納得できるだろうか?納得できないとすれば、何故であろうか?

それは営業の立ち位置のみを書いているからである。問いを設定した背景に営業の目的が知りたいと思っている人に対して、立ち位置のみを回答してもそれではコミュニケーションが成立しているとは言えない。まずは網羅的に考えられる論点を広くあげる必要があると考える。

私の設定した論点は下記:

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私が考える、営業とは?に対する回答:



営業の定義営業(Sales)とは、顧客に直接コンタクトすることで、自社の製品・サービスを顧客の課題にフィットさせ、課題解決のために顧客に選んでもらうようにすることで自社の売上を最大化する活動のこと。


いかがでしょうか?ぱっと思いつきで書いたので、言葉がまだまだ洗練されていませんが、顧客とのコミュニケーション・チャネルだよって言われるよりは納得感が高いのではないでしょうか?


但し、気をつけなければならないのは、論点を広く網羅すると、どうしても話が冗長になってしまうので、相手と対話する場であれば、論点を示した上で、どのポイントが一番興味がありそうかという関心を見極めて話をすることが求められる。

相手のおかれている立場・背景を想像し、どんな回答を期待しているのかを考えるためにも、一度広く論点を洗い出すことが有効である。その後、相手の認識(何を知っていて、何を知らない)、関心(どんなことを知りたい)を突き詰めてメッセージを抽出すればよい。


これは課題解決の検討でも同様で、下記のようなプロセスが必要となる。

1. 発生している課題はなにか?

2. 何が課題なのか?結果を4Wに分解していつ、どこで、誰が、どんな問題が発生しているのかを明確にする。

3. その課題は何故発生しているのか(Why)を検討し、解決策を検討する。


数字で語る

ものごとを分析する上で数字という客観的にイメージできる指標を置くこと、優先順位付け、重み付けを主張する際には有効な武器となる。

数字で語るためのステップは下記のフローが大変参考になるので共有したい。

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田久保善彦著『ビジネス数字力を鍛える』より

詳細な分析、自社で何が起こっているのか(結果)を与えられたデータを仮説と照らし合わせて、分析をすすめる。分解して最も影響が大きい課題をあぶり出す。

レポート全体としての大きな目的設定同様に分析にも目的がなければならない。

データ分析ができたら、なぜそれが発生しているのか(原因)を仮説検証する。


やってはいけないこと!

データを手当り次第集める!これは絶対に駄目。ちゃんと仮説をもってからデータを見ないと世間一般的なデータしか目に入ってこなくなるためである。マスコミに操作されるが如く、自分も情報の渦の中で目に付きやすい情報を正しいと思ってしまう。その情報しか見えなくなると、全体のストーリーに多少の無理があったとしても、強引にそのデータを使ってしまい、全体ストーリーとして間違った方向性に導かれてしまう。データがあるので、聞いている方もなんとなく分かったような感じになるのだが、すっきりは腹落ちさせるような状況には持っていけないので、共感は得られない。

目的に合致した自分に都合の良い解釈に陥らないためにも、常に反証のデータを探すということも必要なテクニックである(自分の考えを客観的に判断する)。常にクリティカル(批判的)に自分の考えをメタ認知することは思考だけではなく、行動などにも良い影響がある。英雄、リーダーと呼ばれる人々は自分の置かれている状況、自分の取るべき行動を客観的に見られる能力が高いと言われている。


次回、書き方(伝え方)編へ続く、かもしれない。。。

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