コモディティ化するニッポン
安いニッポン 「価格」が示す停滞 (日経プレミアシリーズ) 中藤 玲 が面白かったので、書評を。
かつて世界最大の経済大国であった日本
私のような1970年代生まれの日本人にとって、日本は高コスト型で付加価値の高い製品を製造するというイメージのハイテク国家である。1989年の全世界企業の時価総額ランキングにおいて、TOP10のうち7社を日本企業が占めている(TOP50でも32社が日本企業)。 "Japan as No.1”が世界の常識であった時代である。
私よりも上の世代の方は、このころのイメージをUnlearn(意図的に忘れる)することができず、なんとなくデフレっぽいけど、まだまだ大丈夫だよね、、、っていう茹でガエル状態の方が少なくはないだろう。
実は私も本書を読むまでは、そこまで日本の物価が下落しているという事を理解していなかった。本書の筆者は1987年生まれという事で、失われた30年の真っただ中で成長してきたために、日本のおかれた状況に対してFACTベースで分析をしている。
日本の物価がグローバルでは安い水準になりつつある
米国サンフランシスコでは年収1300万円でも低所得者層という扱いになる。東南アジアのダイソーでの販売価格は日本の二倍近い!
1300万円と聞くと、我々庶民からすると裕福な家庭だと思ってしまう。厚生労働省が発表している2019年調査の世帯所得の分布は下図の通りである。
最も多いボリュームゾーンは200~300万円となっている。中央値は437万円、平均値でも552万円である。1300万円の半分にも及ばない。日本で1300万円以上の所得がある世帯は全世帯のわずか6.4%なのである。
日本でTOP5%の高額所得世帯であったとしても、サンフランシスコにいったら生活がギリギリというレベルになってしまうとは、恐ろしい。
デフレって何がいけないの?
景気が停滞し、デフレで物価が下がり続ける。江戸時代のような鎖国状態(国内クローズド)で生きていけるのであれば、大きな問題はないかもしれない。しかしながら、世界各国の情報が飛び交い、外国からの恩恵のうまみを知ってしまっている我々にそんなことができるだろうか?
我が国の対外依存度は下記の通りである(SHIPPING NOW 2018-2019より)
一例を挙げてみる。まず目を引くのがエネルギー自給率の低さだ。再生可能エネルギーの普及が進んでいるとはいえ、水力発電を含めても全体の10%程度に留まる。
明日から、電力を今までの1/10にできるだろうか?パソコンもテレビもエアコンも今までの1/10しか使えないという不便な生活に耐えられるだろうか?
市場をオープンにすると、日本は安くて良いね!って考える外資が日本に入ってくる。ハゲタカファンドのようにガンガンと日本が買い叩かれるのである。
日本製品を買ってくれているうちは、インバウンドとして喜んでいられるが、そのうちに日本固有の土地や建物、企業、人材も買収の対象になる。
資本主義の社会ではおカネをもっている者が最も強い。その人の言うことを聞かなければならなくなる。日本人が長年大切にしてきた文化も西洋人の感覚によりどんどん変えられてしまい、日本人は隅に追いやられ、住みにくいしゃかいとなってしまうことが危惧される。実際に北海道のニセコでは上質な雪を求めて外国の資本が多く入ってきたことで、物価が高騰、地元民には生活できないようなコミュニティーになってしまっている。
現に日本文化として価値の高いアニメ文化もクリエーターはNETFLIXなどの外資への人材流出が始まっているようだ。
付加価値の高い人間しか残れない。
日本は1億総中流社会を目指していたがために、時代の流れと共に徐々に萎んでしまい、将来的にはグローバルに見ると総下層社会となってしまいかねない。そんな状況に歯止めをかけるにはどうすればよいのか?
1つの答えは、教育にあると思う。グローバルで本当に戦えるだけの人材を育成することだ。詳しくは安宅和人さんの著書 シン・ニホン 参照。
平均点で満足するのではなく、とびぬけてNo.1になることを本気で目指すような人材が多く出てくれば、優秀な人が活躍できるような環境が整ってくることが期待できる。そうやって徐々に風土から社会構造を変えていくしか現実的な方法がないのではないだろうか。自分の娘が社会人になるころにはそんな風潮の基盤ができているといいなー。
まず自分にできることとして、減点方式ではなく、長けている点を伸ばすような評価をしたいと思う。
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