Echos of Life - Alice=紗良 Ottさんのコンサートを経て
予定を立てられない人間である自分がこれはどうしても…と思い即予約したAlice=紗良 Ottさんのコンサートに行ってきた。予想通り、素晴らしい体験だった。
Echos of Life. 人生の木霊、とでも訳そうか。本コンサートは、アリス=紗良さん自身の33年の人生を、7つの現代曲に挟んだショパンの24の前奏曲を通じて、その歩みを辿るものである。紗良さんの人生の彩りが、躍動が、凄まじいまでの鮮明さで音に乗っていて、時に心躍り、時に胸を握り潰されるような体験だった。音楽というものが如何に生々しく、怖いくらいに鮮烈に何かを伝えてしまうかということをあらためて思う。
本公演では音楽に合わせて建築家のハカン・デミレル氏の映像作品が放映され、冒頭の星屑のイメージ、シンプルな図形と光のイメージに始まり、様々な建築物が時々刻々と変化する光に合わせて変容していく様が映し出されていた。無数のラインが建築物の構造の上を沿って流れていき、様々な図形を描き出す。それはまさに人生という一つの"かたまり"が常に変容を続けている姿と重なる。
何よりも印象的だったのは、7つの現代曲 - それは紗良さん自身の人生を反映したものだが - それに挟まれる形で演奏されるショパンの前奏曲の、なんと多様で豊かであるかということ!本人の言葉の通り、ショパンの「如何に現代的で、挑戦的」であることか。何度聴いても新しい発見がある。それはまさに記憶のようだ。
人生の様々な断片が、まさにエコーのように脳裏で明滅し、それが新たに繋がって、物語を紡ぎ出す。ちょうど、現代曲の光に照らされて、ショパンの小曲が新鮮なイメージを紡ぎ出すように。
紗良さんは2019年に多発性硬化症を発症し、パンデミックの混沌と暗黒の中、闘病を続け、今年から活動を再開した。その時間に彼女の身体と心を通過していったものは何だったろうか。生き延びてくれてありがとう、と思わずにはいられない。そしてそのことを、自分自身に対しても思い出せるような夜だった。
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