ポンヌフ 『Laundry』 感想
2人の関係が真ん中にある物語が好きで、Laundryはまさしくそうだった。
主人公の2人には名前がない。「アンタ」と「おまえ」という呼び名はあるけどあくまで2人の間での二人称であって私が呼ぶのはなぁ…と思うのでここでは👓と🐰と呼ぶことにします。
はっきりとしたことはわからないけど、この2人はお互いの名前も生い立ちもどこに住んでるのかも連絡先も知らなくて、とにかくここ「ランドリー」で会った時だけ会話を交わす2人…なのかな? 名前は一緒に住む段になって初めて知るとよいと思います。暗黙のルールとして、なんとなくお互いの事情には深く立ちいらないようにしてるのかなという気がする。
見た目はもちろん、1話でわかるように性格も対照的。一人称も🐰が「僕」で👓が「俺」。(ちなみにうさちゃんは1話で「俺」って言っちゃってるw) なにかと真逆な、つながりなんて何もなさそうな2人が偶然出会う物語はどうしたってわくわくする!
【 0話 島之内NO.10 】
「見る?写真。一緒に住んでるカノジョ」の「カノジョ」の言い方がとても好き。絶対カタカナの「カノジョ」だ!!そのカノジョの写真を見た🐰の反応が「うつくしいひと…」なのも好き。「美しい」を口語で使うのってすごく違和感があるはずなのにそれを成立させてしまうこの人。なぜか浮世離れしたことばが似合う。
「…北新地NO.1?」
「…島之内NO.10」
で、タイトルがこれか、ってなるのがいい。センス。
あと、🐰にとっては北新地NO.1のうつくしいひとに見えるのに、実際は島之内NO.10なカノジョ。妙に現実を突きつけてくる感じも好きだ。
【2話 ダブルヒモビッチ】
打ったことない文字列に私のiPhoneの変換が戸惑っていた。
パジャマにトレンチコートにあやとりという 不思議すぎる取り合わせが似合ってしまう👓さん。
挨拶もせずに無言で隣に座れる関係性よい。
「ヒモ"が"そんなんできるんや、…間違えた。ヒモ"で"そんなんできるんや」
でタイトル回収…!!紐とヒモのダブルミーニング…。すぐには気付かないちらつかせ方もうますぎる…。「ヒモ」って言われて👓が一瞬嫌そうな顔するのも細かいな笑
あと、リアルに花粉症だったんだろうけど、通してうさちゃんがひどい鼻声なのもなんかいいなぁ。花粉症の男というキャラクター要素の一つになってる気がする。鼻ぐすぐすしてるのなんか愛しいもん。
「…あれ、指どしたん?」
「ああ ……かまれた」
「女?」
「んーん …ゴマモンガラ」
この会話好きだ。
「んーん」と「ゴマモンガラ」の言い方とんでもなく好き…。子供みたいにあどけなくてかわいらしい。「ゴマモンガラ」は魚らしいけど彼は一体どんな生活してるんだろうなぁ…。猫要素(招き猫)もちゃんと入れてくれる優しさ。
突如始まるあやとり。途中ただバッテン✖︎しただけみたいな死ぬほどシンプルな形になってしまってこれうさちゃんどうやってとるんだろう?って思ったタイミングで ふふwって素で笑っちゃってるDにほっこり。いつもの光景☺️
自分の好きなものをちゃんとわかってる🐰と自分の好きなものがぼんやりしてる👓。好きな食べ物までまるっきり正反対。人は正反対の2人というのに惹かれるのだ。
ヒモと掛けてるっていうのもそうなんだけど、紐っていうのは何かと何かを繋いだり結んだりするモチーフですね。ちなみにこの毛色は赤色らしい。(当時xの公式垢で言ってたと思う)
【2話 ングラライ国際空港】
1番好きなのはこの回かもしれない。
ていうかングラライ国際空港ってほんとにあるんだね!偶然人との会話中に出てきて知って驚いた。架空の言葉かと思ってた。そしてンゴロンゴロ保全地域はじめ、他の「ん」から始まる言葉も実在するんだ!? 2人とも語彙力バケモンやん。本来ならこの要素だけで友達になれそう笑
しりとりの中に「ギン」が出てきてにっこりしたり、「くるみ」「未来」の流れでミスチルだ!!ってなったりするのもたのしい。(どれも偶然だろうけど)
しりとりと言えばロコちゃん以前にしりとりネタやってるんだよね。(https://youtu.be/QLXljHM0xwc?si=cInsd3xQmLU5RS66)
しかもちょっとかぶるとこもある。ロコちゃんってしりとりが似合うよなぁ。
お互いの電話の内容せつないねぇ…。
🐰がお母さんを「かーちゃん」って呼んでんの解釈一致すぎる。「はぁい」が優しくて好き。
プリンを食べる2人。豪快に掻っ込む👓とゆっくりマイペースに食べる🐰。食べ方も正反対。先に食べ終わった👓が🐰の方見ながら「おいし?」って聞くの、声色も何もかもすごく好き。慈愛を音にしたらこんな感じだと思う。おいしそうに食べるのを見守るという行為ってすごく愛があるよね。🐰の神妙な「うん」も好き。
ぱーんち!のじゃれあいもかわいい。ここでも笑っちゃってるD w
この話ではずーっとしりとりをしてるけど、「ん」がついても終わらないしりとりは永遠の隠喩な気がしてて。でもそんな永遠はあっさりとお互いの電話が鳴る音で途切れる。で、電話の向こうは現実で、しかもお互いが知り得ない、関われない領域。だから電話が終わってもお互いそれに触れないのがいい。この時間はたまたま2人の人間の人生が交差した、ほんとに一瞬の時間で、この瞬間だけは永遠だけど現実じゃなくて夢みたいな、ほんとは一瞬で消えてなくなるようなおぼろげなものだってお互いわかってる。けどそれには触れない感じ。(深読みしすぎ…)
「プリン」で終わってプリンを奢って、「ビール」で終わってビールを奢る。最後、🐰は「暇になったやろ?」で、👓は「ありがとう、ゆきこさん」でお互いのその領域(電話の内容)にちょっとだけ踏み込むのがいい。
ほんと、プリンもビールも人の金なんだよなぁ。カノジョの金で買ったプリンを分け合い母親の金でビールで乾杯する…。どうにも締まらない2人なのがかえって愛しい。ほんと欠けてる2人だよなぁ。
【最終話 アマチュアポーズ】
スーツケースごろごろしながらランドリーにやってくる👓に、あー、そっか、出てくんだ、、って察して、2人の偶然の邂逅と一緒に過ごしたであろうわずかな時間を思って切なくなる。
「さっき家帰ったら新しいヒモで遊んでた」
1話で「ヒモ」がダブルミーニングなの聞き逃してもここで気付けるの親切。私はこっちで気づいてあの時のそういうことか!!ってなりました。
カノジョが新しいヒモで遊んでるからいらなくなった「古い紐(ヒモ)」を🐰にあげるんだ?
洗濯機の中で2人の思い出とか時計の針とかここでの時間がぐるぐる回る。
「あのさ、そろそろ洗濯機買おうかなーって思ってるんやけど………割り勘する?」
ん??どういうこと?そういう意味??ってなってるところに
「一緒に住むかって!言ってんの!」
あらら!そーいうこと!?溜め方があれやん、告白やん!!ってなってから気付くタイトル「アマチュアポーズ」。センスよ……。(毎回言ってる)
「洗濯機割り勘する?」は確かに言葉選びがアマチュアすぎるなぁ…笑
はぁぁってでっかいため息ついて出ていく👓の後を、鉢植えの植物抱えていそいそついてく🐰。ここも好きポイント。カノジョの家から引き取ってきたであろうあの鉢植えの植物。パジャマにサンダルという着の身着のまま状態にもかかわらずわざわざあんなデカい鉢植え抱えてきたってことは元々👓が持ち込んだ物なのか、カノジョの私物だけど毎日水やってるうちに愛着がわいたのかわからないけど、なんにせよ👓が大事にしてたものでしょう。それをちゃんと抱えて持って着いてく🐰が好きだなぁと思った。「自分を大事にしてくれる人」もそうなんだけど、「自分の大事なものを手放さずにいさせてくれる人」はもっと貴重だから絶対手離しちゃだめだよと思う。
そして、あーあってなんだか諦めの表情してる👓を嬉しくてたまらない顔でチラ見しながら並んで歩いてく🐰というエンディングでした。
見返してて思ったけど、一緒に住もうって言ったのは🐰だけど、あのあやとりの紐を受けとった時点でもうそれは決まってたのでは、とも思う。
この回1好きな台詞は「どこにいても僕らが立ってる場所が僕らの未来」。 好きすぎる台詞。コインも決めてくれない、2人の行く先にあるのが2人の未来!
はたしてこの2人はうまくいくのか?
たまたま2人の人間の人生が交差した隙間に生まれた人生のほんのちょっとの瞬間みたいなのがあのランドリーでの時間だったんだろうけど、それを場外へ、そして未来へ持ち越すことに決めた2人に幸あれ!
もうちょっとつづく。
ランドリーというモチーフがあまりに好きでして。まずは2人が出会って過ごしてるあの舞台。あそこでの時間って絶対にいつまでも続くわけがないってわかってるのに、どうしてか永遠感がある。永遠というかあそこの中だけ時計の針が止まってる感じ。またはぐるぐるしてて進んでないような感じ。洗濯物がぐるんぐるん回ってるのも時計の針のような意味で進まない時間って感じがする。背後でずーっと洗濯機の回る機械的な音が鳴ってるのも非現実感がある。
作品が通してモノクロなのも一因なのかな? 夢の世界はモノクロに見えるという人もいるというし、どこか現実から切り離されてる感じがする。
あと最終話まで見て、そっか!🐰は洗濯機買えないからランドリー来てたのか!って初めて気付いて。たしかにこの2人は2人して自分の力だけで生活できてないんだよね。それぞれ事情は違うけど、🐰は洗濯機買うまとまったお金がないから、👓はカノジョに頼まれてるからランドリーに来てて。そんな甲斐性無し×2だからこそあそこで出会ったわけで。
2人を中心に見ると、お互いに他人に頼って生きてた=1人では生きていけなかった2人が出会って、依存してたもの手放して2人で生きてくお話だよね。
半人前の象徴のようなランドリーでの交流が2人という関係においては唯一で絶対で、だから永遠なようで有限という感じだったけど、洗濯機を割り勘することでその世界(ランドリー)から脱却して2人で生きてくという構図が美しすぎた。
時が止まってたような、夢のような世界から現実に踏み出したので、今度はもう永遠ではないけど、2人の未来に向かって時が流れ出すというハッピーエンド!
舞台であり象徴であり隠喩でもあるLaundry…。 あまりに魅力的なモチーフでした。
そしてこの、リアルだけど夢みたいで、どこかに存在するような物語の中にしかないような不思議な世界観に息づく主人公2人。堂前さんと兎さんが演じるからこその2人!2人にしかできない2人でした。
大好き!!
みんなLaundry見返そう🙏🏻
おわり!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?