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小説の種03◆オレとアイツのRosalita

 ネブラスカ、ボーン・イン・ザ・USAのリリースとボス初来日までの間に成人していたワケだが。その間、その後、まぁ色々あった。創刊されたばかりだったスイッチの編集部の門を叩いたり(青山の小さな雑居ビルの一室だった)、荻窪にある老舗魚屋が初めてデパートに出店するオープニングスタッフに抜擢されたり。
 代々木オリンピックブールでのボスのライヴ後、某大学の二部に通うM田とは疎遠になっていた。仕事がオフのある日。パチンコ帰りに地元を歩いているとシルバーの箱スカが、ゆっくりと横につけてきた。如何にもガラの悪そうなヤツが乗っていそうで警戒していると。開いた窓から声をかけてきたのはM田だった。
 車に乗り込んで浦所バイパスを流しながらお互いの近況を話した。別れ際までは、たわいのなさすぎる会話だった。ただカーステで流していたのはボスだったし、" Rosalita "も " Sherry Darling "も一緒にいる間に聴くことができたから満足していた。最後にオレは、もうすぐ輸入レコード屋で働くことになりそうだと報告した。夢みたいな話じゃないか、と喜んでくれた。M田は大学を中退してモデルをやることになるかも知れないと言った。
 ヤツもまた夢を叶えるんだと思っていた。あんな事件に巻き込まれるまでは。

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