私とポリアモリーの出会い

「恋に落ちるってさ、自分でコントロールできることじゃなくない?なのになんで、"あなた以外を好きにならない"って約束するんだろうね?」

もうほぼ10年前(!)になるが、大学の図書館のカフェスペースで、友人が、私に投げかけてきた疑問である。彼女は哲学めいたお喋りが好きで、いつもこういう、一言では返せないような問いかけを投げてくる。

私はその場の思いつきでぱっと返答しては、さらに返ってくる「それはどうして?」「でもこうだったら、こうはならないのかな?」という止まない追及に、時にわくわくしたり、時に窮したりしながら、ぐいぐいと引き込まれるように長時間のお喋りをしていた。今でも彼女は、私の大好きな友人だ。(…とは伝えたことがないので、急に宣言してしまい、恥ずかしいが)

この時の議題はたぶん「浮気」とか「不倫」だったのだと思う。

モノガミーを実践していた私は、「たしかに、人を好きになるとかならないとかって、コントロールできないな」と納得しつつも、「それでもコントロールするように頑張るんじゃない?」などと返したような気がする。問いかけばかりがくっきりと残っていて、少し記憶があやふやだ。

友人は「でも岡本太郎の親は、ほかにパートナーがいても公認だったみたいだよ」と重ねて喋った。その時、「ポリアモリー」という言葉は用いられなかった。二人とも知らなかったからだ。

私は「でもさあ…」と言って、言葉につまった気がする。でもさあ、絶対不満に思ってたはずだよ。でもさあ、そんなの許されるはずがないじゃん。でもさあ、皆我慢してるんだよそういうの。

彼らがどういう人間で、どう思っていたのかなんて聞いたことも調べたこともないのに。「そういう」のが、常識や規範が、いかに歴史的に変遷してきたかをまさに学び取っているその最中に、「でもさあ、」と零れてしまった自分。に気が付き、立ち止まってしまった。

初めてモノガミーに対して、「はたして、そうなのだろうか」という疑問の種が植え付けられたのは、あの瞬間だったと思う。

議論はいろいろと膨らみ、友人は「約束できないから、結局約束しても破ってしまうから、約束したいんだろうね」と独りごちていた。そうなのかなあ、と腑に落ちない感じをもちながらも、いつもの議論の一つだったから、たしか私たちは特に何事もなく解散した。長いこと寝かせられ、忘れていたくらいだった。

その後もポリアモリーとは、ばらばらと別の分野から、さざ波(?)のように寄せては返すような、段階的な出会いだったように思う。

百合漫画に傾倒するうちに中村珍氏の『羣青』を読み、一気にはまり、いつしかエッセイ漫画、『レズと七人の彼女たち』の最新話を熱心に待ち望むようになったり、
ポリアモリーを実践していた俳優・今井雅之氏の訃報であったり(そこでようやく「ポリアモリー」という単語に触れる)、
そうこうしていると、いつの間にかきのコさんのインタビューを記事を読む機会があったり(あの時私はフェミニズムへの関心が強く、wezzyという媒体を熱心に読んでいて、そこからだったかもしれない)、
または恋人との、パートナー以外とのセックスをどう処理するか(風俗やプロならOKなのか?素人はダメなのか?恋愛感情があったらダメなのか?)という話し合いの中であったり。

趣味の漫画、時事ニュース、フェミニズム、実際の人間関係…。あらゆる角度から、10年間、少しずつ少しずつ降り積もるように、「ポリアモリー」をあてられてきた人生(?)だったように思う。

その分、私の実践は曖昧で、「私はポリアモリーだ!」とか「無理!絶対モノガミー!」みたいに断言することはできず、なんかこう…なんというか…好きな人の好きな人も好きになれたらよくない?とか、私が誰かほかの人を好きになっても、この関係が終わらなければいいなあ…。あ、でも傷つく気持ちも不安になる気持ちもわかるけど…。のようなもにゃもにゃしたスタンスである。

今の生活もなかなかモノガマスで、無理やり言葉で表すならば、「ポリアモリーのアライ」くらいの立ち位置になるだろうか。もしかしたら数年後にはポリアモラスな生活をしているかもしれないし、ばりばりのモノガミーをやっているかもしれない。

けれど、私はきっとこれからもずっと、ポリアモリーという生き方について、考えて続けていくことになるだろう、と確信している。

私にとって、ポリアモリーに触れることは、じっさいの関係性や「私の在り様」を問い続けることだ。私はどのようにあなたを大事に思っているのか。私はどのようにあなたに愛されたいのか。私はあなたとどのようになりたいのか。

」について考える。「あなた」について考える。「私とあなた」について考える。

あらゆる関係性において。


…ということで、実際のライフスタイルがモノガミーである人、ポリアモリーである人問わず、以下の楽しいイベントをお手伝い中なので、ぜひ触れてみてほしいと思っています。



ポリアモリーウィーク2021 〜恋人はひとり、じゃなくてもいい。〜

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