【声劇台本】舞台上の狼(男1)
男性セリフ集にある、ステージの人狼という長台詞を改変して、1人用の台本にしました。
【本編】
こんな夜中に、こんな廃墟になった劇場に足を運んでくれて、
感謝するぜ。主役様。
…なーに、からかってるつもりはない。
でも、本当に来てくれるとはな…。
覚えてるか?
ここが現役だった頃、初めてお前と出会った。
初めて観た舞台でお前と出会った。
今でも昨日のことの様に覚えてる。
お前はどうだ?
俺がお前に宣戦布告した時のこと。
俺は誰にも負けない役者になる。
お前なんか目じゃねぇ、ってな。
お前はそれに対して自分も負けないって、返しやがった。
あの頃はお前以外の奴なんて見えてなかった。
でも、色んな役を演じるたび、色んな人と演じるたび、自分の弱さに立ち止まった…。
でも、そんな俺を奮い立たせてくれたのは、お前だ。
やっぱり、俺のライバルはお前なんだよ。
ふっ…湿っぽくなっちまったな…こういう事言うのは気恥ずかしいぜ。
…だからって、明日は手を抜くんじゃねぇぞ?
明日の舞台…俺はお前を喰い殺す。
…ビビった顔すんなよ?
急に態度変えるからびっくりしたか?
相変わらず、舞台から降りたら弱虫君だな。
言っておくが、演技でだからな。
俺の全力でお前を喰ってやる。
…正直羨ましかったぜ、お前が主役に選ばれて、
俺とお前の何が違うんだって
…でも、それと同時に納得もした。
俺とお前は違う。
そして、俺にはお前に出来ない演技が出来る。
だから、俺はお前のライバル役に選ばれたんだろうな。
お前の実力は俺が誰よりも認めてる。
だからな、少しでも下手打ったら、俺はお前を喰い殺す!
舞台ってのは、
やるかやられるかだ。
お前も知ってるだろう?
舞台には色んな奴がいる。
周りと協力して、舞台を壊さず調和を重視する者。
舞台から振り落とされないように必死にしがみつく者。
そして…俺みてぇに演技に、舞台に狂った馬鹿野郎…とかな。
舞台ってのはさ、色んなジャンルがあるだろ?
でも、俺たちみてぇな舞台狂いの狂人共は、
どんな舞台でもその裏っ側で舞台という名の命を賭けたデスゲームで
スリルを味わってんだよ!
…なぁ、もう分かってるだろ?
お前自身もこっち側の人間だって…。
いや、俺よりも先にそっちに足突っ込んでんだよ。
俺はやっとお前に追い付いた。
そして、これから追い越す。
…たちが悪いよなぁ。
お前は恐怖、不安、戸惑い
…そんな物を抱えたか弱い仔羊みてぇな面をしてやがるくせに、
その中で燃えるお前の瞳は……
恐怖の中で静かに期待しているその瞳は…
羊の皮を被った狼だよなぁ!?
…なぁ、明日は狼同士の喰らい合いだ…
互いの牙がどっちの喉に突き刺さるか…
楽しみだなぁ?