赤ちゃんが泣くのに応えるその先に
赤ちゃんが泣いてすぐに抱っこしたら抱きぐせがついてしまうから、
泣いてもしばらく放っておいたほうがいい。
赤ちゃんが泣いたらそのたびに抱っこして、
赤ちゃんの要求に応えるようにしてあげたほうがいい。
これ、どっちの選択肢が正しいと思いますか?
ひと昔前は、けっこう前者のような意見がよく聞かれました。
実際にこのように若手に指導している保育園も少なくなかったと思います。
しかし愛着関係の大切さが説かれるようになってからは、
子育てにおいては後者のかかわりのほうが望ましいということが
だんだん広まってきたように感じます。
なにを要求されているのかはっきりとはわからなかったとしても、
泣いている赤ちゃんにそのつど温かく反応を返してあげることで、
その人と赤ちゃんのあいだに「愛着関係」といわれる「絆」が生まれてきます。
赤ちゃんは温かな反応を返してもらうことによって、
「この人は自分のことを守ってくれる」
「この人がいたら自分は安心だ」
「自分はここにいてもいい存在なんだ」
「自分にはちゃんと価値があるのだ」
といったことを感じられるようになっていくのです。
それは世話をしてくれる大人や自分自身、
この世界に対する基本的な信頼感に繋がっていきます。
そして自己肯定感や生きることへの意欲にも育っていくのです。
ですから子どもたちが育っていく上で、
それもかなり初期の段階において、
この「愛着関係」を適切に築けているということが
とても重要になってくるというわけなのです。
冒頭でも書いたように、
この考え方はここのところ
だいぶ知られるようになってきたとは思うのですが、
それでもやっぱりいまだに古い考え方で保育をしている人や、
実際の自分の育児と結びついていない親も見受けられます。
「甘えたいから泣いてるだけなので、しばらく放って様子見てるんです」
なんて言えてしまう保育士さん(状況にもよるので一概には言えないんですが…)。
小さい子どもが転んで泣いていても
横で立って泣きやむのを待っているだけの親や、
四六時中かまっていられないから
とりあえずあきらめて泣きやむまで泣かし続けているんですが
と相談してこられる親。
泣いて泣いて、
反応をもらえずに泣きやんだ先にあるのは
いったいなんでしょうか。
「自分に応えてくれる人はいない」
「自分は反応してもらえる価値がない」
あきらめ、無意欲、無反応、存在意義の喪失…。
どうにも健全な成長にはほど遠いワードが並ぶようです。
くりかえしになりますが、
赤ちゃんは泣いて反応を返してもらって、
欲求を満たしもらうことによって、
少しずつ安定と自立の道を進みます。
古い考え方や一斉保育のなかでのかかわりに縛られている保育士さんや
子どもの発達に関する知識がまだ不十分な親御さんたちには、
根気強くこのことを伝えていかなければいけないなと思うのと同時に、
忙しすぎる現代社会において
泣く赤ちゃんにそのつど向きあえる精神的余裕や
準備が整っていない人へのケアをどうしていくかを
考えていかなければいけないなと思う今日この頃です。