見出し画像

中曽根陽子の今月の探究 2025年2月

今日から東京と神奈川では中学入試が始まりました。
お子さんを送り出して、このレターをお読みいただいている方もいらっしゃることでしょう。
最善が尽くせますように。
受験生と皆さんのご健闘をお祈りしています。

さて、先月、映画『小学校 それは小さな社会』(英語名 The making of a Japanese)を観てきました。

話題になっている映画なので、ご覧になったという方も多いかもしれません。

まだご覧になっていない方もいらっしゃると思うので、ネタバレにならないようにお伝えすると、世田谷区のリアルな小学校の1年生と6年生の特別活動を中心とした1年間の学校生活を描いているドキュメンタリーです。

入学後集団生活に慣れていくために、さまざまな決まりを覚えていく1年生。

そして、6年生は1年生のサポートをする役割を担います。

学校では、集団生活に適応していくために必要なこととして、さまざまな決まりが作られ、それを守ることを学んでいきます。統制的ではあるけれど、それによって団体生活を送れるようになる、成長の過程とも言えます。一方で、統制的な指導によって萎縮してしまう子どもの姿もありました。

この映画の中で、特別活動に詳しい大学の先生が「特別活動は、児童生徒が学校の中で様々な役割を担い、集団生活を学び、責任感や協力する力を成長させ、自分らしさを磨いていく活動。しかし諸刃の剣でもあることを知っておく必要がある」と説明されていました

淡々と小学校の日常の風景を撮っているのですが、そこに描かれている子どもたちと教師のやりとりを観ていくうちに、さまざまな感情が湧き起こってきて、観終わって3日経った今もモヤモヤしています。そんな私の感想をあえてまとめると次の三つになるかなと思います。

先生は一生懸命頑張っている・・・
子どもたちも一生懸命頑張っている・・・
でもその頑張りはどこに向けての頑張りなんだろう。

事実 先生は一生懸命頑張っている・・・
映画に描かれているのは、朝早くから夜遅くまで学校の中で生徒のために頑張っている先生の姿でした。1年生の担任は、集団生活を滞りなく送れるように、ある時は厳しく、ある時は優しく指導をします。6年生の担任は、生徒に自らの殻を破って成長してほしいと願いながら、最高学年としての自覚を持つことを求めます。

学校は、勉強するだけでなく、「社会生活の中でのよき態度やよき行動〜日本人の行動規範」を体得する場であるということ。一方で生徒に対しては、ダメ出しが目立つのが気になりました。そして、それは先生同士の振り返りの機会でも共通していて、一生懸命やっていることにダメ出しされる先生もあまり幸せそうではなかったです。

事実 子どもたちも一生懸命頑張っている・・・
1年生は手の挙げ方、廊下の歩き方、靴の揃え方、掃除のやり方など、学校生活の中で勉強だけでなく社会生活を営む上で大切な行動規範を教えられ、規則を守ろうと一生懸命努力します。6年経って、子どもたちは1年生のお手本となることを求められ、実際立派に育っているのだけれど、外側に軸があるので、正解探しに陥りがちな面も見受けられました。

解釈 でもその頑張りはどこに向けての頑張りなんだろう
先生の指導や声掛けにはもちろん悪意はなく、その指導によって子どもたちが成長していることも確かなんだけれど、同時に、まわりのために責任を果たす奉仕の姿勢をベストとすること、迷惑をかけない行動が大切という価値観が優先され、全体主義、同調圧力を生みかねない面もあります。
個を発揮しづらい環境の中で、生きづらさを感じる子どももいるだろうし、世の中が大きく変わっていく局面で、こちこちマインドを育みかねない状況にはやはり違和感を感じました、でも、先生もそういう価値観の中で育って大人になったのだから、その正しさを信じて(中には100% 信じてなくても、そうしなければ続けられないのかも)毎日の指導をしているわけですから、先生を責めるのも違うと思う。

先生も生徒も頑張っているのだけれど、それが何のため、誰のためなのか、何を実現するために行われるのか、その最上位の目的がはっきりしないまま、行われていることが多いのではないかと感じました。

じゃあ、どうしたらいいの?

それぞれが様々な価値観を持っている中で、何がいいとか悪いとかという議論はあまり意味がないと私は思います。

でも、子どもたちには、その子らしく健やかに育ってほしい。そのためには、やはり、頭ごなしに指示命令するのではなく、自分で考えられるような関わりを意識して、しなやかマインドを育てていってほしいと思いました。そうすることで、特別活動もイキイキしたものになっていくのではないかと思うのです。

私にできることとして、講演活動を通して、しなやかマインドを育む方法をお伝えしていきたいと思います。

そして、これはなかなか簡単じゃないのは承知ですが、やはり、私たち自身が、どんな社会を作りたいのかを考えて行動をしていく当事者意識をもつことが必要なのではないか。

そんなことを思っています。

これほど人の心を揺さぶるドキュメンタリー映画も珍しいと思いますが、それは誰もが(日本の公教育を受けたことがある人なら)経験したことがある情景が描かれているからでしょう。そして、その時の思い出や感情が蘇ってきて、琴線を揺さぶるのだと思います。

全国で公開されるようです。

ぜひ観てください。そして感じたことを周りの人と話してみてください。

 マザークエストメンバー登録(無料)の方にメルマガをお届けいたします。詳しくは、こちらから。

東洋経済education × ICT編集部が選ぶ「年末年始に読みたい「教育書」厳選10冊」に選ばれました!




いいなと思ったら応援しよう!