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vol.5 アメリカの公立小学校事情とそこから見えること

美枝です。

日本で教育を受けて育ち、今、アメリカで子育てをしている日本人ママたちに、今のアメリカの学校事情や、「アメリカで子育てしていて、思うこと」を聞いてみました。

Yさん、Nさん、Mさんは、みんな小学校2年生の子どもをNY近郊で育てています。子どもたちは、みんな違う公立学校に通っています。これまで、私の息子が通う学校について書いてきましたが、他の学校に通うママ達の意見から、今のアメリカの一般的な学校事情が伝わればいいなと思います。

1)コロナ禍でのICT事情
Mさん:アメリカの小学生は、教科書がないから、学校にお弁当・水筒と、ipadしか持っていかないよね。(遠足みたい!)

Yさん:私の子どもの学校は、ハイブリッド型だけど、ipadは1人1台づつは支給されてない。普段は、教室にパソコンが数台あって、みんなでシェアして使っているみたい。家にPCやipadがない家庭には、申請すれば学校が貸し出ししてくれるそうだよ。

Nさん:9月〜は、コロナ禍で、週の半分は通学、後の半分は家でリモートラーニングするハイブリッド型学習をしている。そのため、リモートラーニング用に、ipadが全員に支給されるようになった。

Mさん:私が住んでる隣町の学校は、リモートラーニング用のipad支給がなく、家にipadがない子は学べず、その分学習の遅れ・差が出てきてると聞いたよ。

(まとめ)このコロナ禍で、アメリカの周辺公立学校にもipadの導入が進んでいる様子です。しかし、アメリカでは地域によって住民の貧富の差が大きく、それが税収に影響します。そのため、公立学校の教育環境も、地域・学校によって差があるのが現状と感じました。

2)クラス内で、多様性がベースになっている
Yさん:子どもの学校では、学習障害がある子も同じクラスにいて、専門の先生がその子についている。私の子どもは、その子の様子や、先生と話をすることで、自分との違いについて考える。同じクラスに「差」があることが自然に受け入れている。それが、良いと思う。

Nさん:私の子どもは、ENL(English as a Native Language;英語が母国語でない子どもたちに英語スキルをフォロー)を受けている。同じように、クラスにENLの先生が来て、授業中にフォローをしてくれるらしい。それが、当たり前と感じているみたい。

Mさん:いろいろな国籍や人種の子がいるから見た目も違う。学習の進度も個々に合わせて、先生は授業内で課題を与えたり、宿題も変えたりしている。先生が、「みんな違う」という感覚をベースに持って、指導していると感じる。

(まとめ)違いがあることが自然なので、「多様性」が、アメリカには根付いていると思います。そのため、例えば、他者と比べて、平均値に以上になろうとする意識はなく、子どもたちは「そのままの自分」を認める自己肯定感が育ちやすいと感じます。

3)「間違ってもいい!きっとできるようになる!」(Growth Mindset: しなやかマインドセット)がベースにある
Yさん:子どもの先生は、消しゴムは使わなくていいよと言うらしい。もし間違ったとしても、クロスアウト(ばってん)をして、書き直せばいいと。「間違いを残しておく=間違ってもいいよ。」「間違う過程も大切だよ」というメッセージが伝わってくる。

Nさん:先生が、子どもたちを「否定しない」と感じる。違う時も、"I am not sure."と言う言葉を使って、直接、指摘や批判をせず指導していると感じる。

Mさん:先生は、スペルが間違っていても1つ1つ直さない。なぜ直さないか聞いてみたら、「1つ1つ直すより、文章を書きたい気持ちを優先して、どんどん書かせる方が良い。スペルは、本を読んで正しいスペルを目にしていると、だんだん覚えていくから」と言う答えだった。

(まとめ)間違いばかりを指摘すると、子どもの否定につながり、やる気がなくなります。できるようになると信じて、やりたい気持ち(できる部分・強み)を伸ばしていく(Growth mindset)指導をすると、子どもは自分らしく、どんどんと挑戦できると感じました。

4)「答えは一つではない」:自分なりの考えをまとめ、伝え、聞く練習
Mさん:アメリカでは、幼稚園の頃から、自分の考えを伝え、みんなの意見を聞く練習をする。例えば、Show&tell(先生が「好きなフルーツ」等のテーマを決め、子どもたちは、家からそれを持っていって、みんなの前で「なぜ好きなのか?」を話し、みんなの話を聞く)小学校に入ると、まず先生は、自分の意見をしっかりまとめさせる。そして、それを仲間に伝えてディスカッションするワークが多いと感じる。

Nさん:子どもの学校では、動物の生態を調べ発表するという授業があった。各自が調べて自分の考えをまとめるのは通常だが、発表の仕方(枠組み)を、自分で決めていいと言うのに驚いた。本にまとめてもいいし、ジオラマを作っても、何でもいいとのこと。結局、子どもは、本にまとめた。すごく大変だったが、枠組みがない分、子どもは創造性を働かせて、自分らしい本をまとめあげた。答えは1つではなく、何かを伝えるのに、色々なアプローチがあっていいんだと感じた。

Yさん:wonder studioという授業枠があり、それがおもしろい。まず、自分で調べたいテーマ(wonder)を決め、そのテーマのどんな項目を調べるかも、自分で決め発表する。図書館に行き、自分で本を探して調べ、フレキシブルに考える。自分で考えて、何かを作りあげる練習を、通常の授業の中でしている。

(まとめ)先が見えないこれからの未来に、自分で何が良いのか考える主体性、それを相手に伝えるディスカッション力、そして、「正解は1つではない」ことを知ることは、必要な力だと感じます。アメリカの小学校では、この3つは、様々な授業の中で大切にしていると感じました。

全体を通して

アメリカの違う公立小学校の事情を話し合う中で、それぞれの違いや共通項にあると感じるものを挙げてみました。ママ達は、日本で教育を受けてきたので、自分が受けた教育との違いに戸惑いながら、アメリカの今を見て、これからの未来を生きる子ども達にとって、何がいいのかを感じようとしています。

日本も今年は学習指導要領も改定されて、これから教育が変わっていくと聞きました。日本がどう変わっていくのか、これからを生きる子ども達には何が必要なのか?を考える上で、この記事が参考になれば幸いです。

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