
再びバングラへ。使ってくれる人を考えたデザイナーであること。
私は今、再びバングラデシュに来ている。
バングラに着いてから数日経つが、今回は2回目なので、前回とは感覚が全然違うと思った。
初めて来た時は、「これからどうなるんだろう」「本当にうまくやっていけるんだろうか・・・」「絵理子さんの代わりとして、しっかりものを作らなければ、、、、」そういった緊張と不安ばかり募っていた。
ただ、今回は少し違う。確かに、毎回緊張はするけれど、前回に比べて不安はあんまりなかった。なんだかhomeに帰る感じがしたから。。。
みんなのことも、マトリのことも、バングラのことも、私はまだまだ知らないことだらけだけど、みんなが作り出すアットホーム感が不安を解いてくれるんだと思う。
改めて、名前の通りの工場だなって、感じる。
さて、自分のマインドだが、つくる責任感が圧倒的に前回と違うなとも感じている。
今回の一番の目的は、ゼロ1でプロダクトをつくること。そして絵理子さんが来る前に一通りのプロダクトを進めて、絵理子さんが滞在中にベストを出せるように事前準備をしておきたいから、そのために渡航前から気合いが入っていた。
そうして始まったサンプル作成。
持ってきた型紙と、自分でデザイナーズで作ったラフサンプルを、すぐにモルシェドバイに共有して、作り始めた。(バイはベンガル語で男性に対する尊称)
実は今回はたったの2週間の滞在。でも前回よりもアウトプットを増やし、前回の自分を絶対越える、と自分と約束して来たから、全ての時間を大事に使いたい。
この前は、まず形にしてみることでかなり精一杯だったけど、今回はゼロ1プラス、頭を使ってサンプルを微修正しながら、ベストなものを作る。
そんなこんなで、初日は本当に丸一日作り修正し、を繰り返していた。
自らを解放してから、とりあえず自然体でやってみようが、前よりもできるようになった。
そう。正直振り返ると、依頼されたように、周りの期待を裏切らないように、こういうバッグを作らなければいけない、という柵に縛られ、面白いものなんて皆無になってきていたからだ。
自分の立場を言い訳にするのはよくないって思うけど、でも自由に何か作るなんて、今はないよなってなぜか思うようになってしまっていた。
それは本当に、マザーハウスのプロダクトをデザインするのはすごくすごくすごく(×100くらい)、難しいから。
マザーハウスのお客様が使いたいと思うデザイン、MD開発チームが求めるデザイン、絵理子さんが思う曲線、自分の思う曲線、それらは全て違って、自分が作っても少し違うことの方が多くて、「私センスないのかもしれない。マザーハウスのデザイナーなんて、できるんだろうか・・・?涙」そういう自己嫌悪がよくあった。(今も時々あるが。)
でも私はそのくらいで諦めたくないし、今自分ができていることがあるなら、必ず成長できる。細かいことの積み重ねだから。そう思いながら、絵理子さんとも話したりしながら、少しずつ進んできた。
周りを気にしていては本当に良いものは作れない。もちろん、品質とかそのうち気にしなければいけないことは出てくるけど、それはその時。
今私がやることはゼロベースで、1を生み出すこと。
そこに先入観や固定概念が入ってしまっては本当につまらないものができてしまう。
実は最近、布で新しい商品を作るために、ある型紙を作っていたんだけど、絵理子さんに見せたら「これはレザーで作った方が断然いいよ。なんだかコンサバだよ。。。」と言われて、「くそ〜涙。何が違うんだろう。。。。」と落胆したが、すぐに何が違っていたのか?本当に深く考えた。
そして振り返ってみると、"想像しながら"作っていたことに気づいた。
「あんな感じにしてみよう」「あれをつけてみよう」・・・そんな風に。
その想像によって作られた型紙は、先入観とかが入り混じったものになってしまっていた。
だから、もうぜーんぶ投げ捨てて一から生地をざくざく切りながら、折りながら作り上げた。「うん。おもろいのできたんじゃないか?」そう直感で感じた。
そして何よりも、すっごく!!楽しかったんです!!
既視感から逃れて、新たなものを生み出すには、内なるものを、想像ではなく手を動かしながら形にする。ことなんだと思う。
想像って、自分の内に秘めているものでなくて、情報の結集に過ぎないなって気づいた。
だからほんとに奥底に眠ってるものを引き出すには、手を動かして感覚で起こしていくのがベストウェイなのかもしれない。
あともう一つ、大事な気づきが、この素材は、自由な形ができるってことだった。だからレザーにはできない形もやってみれるなぁって、その素材と対話しながら作ることでわかった。
そしてゼロ1のプロセスが終わったら、ネクストステップに入る。そこから、「これはお客様が実際に使ったら使いやすいか?」「このサイズは使う人にとって適切か?」・・・・など実際に自分で使ってみて、違うと思ったら頭で考えて、微修正する。
そんなプロセスを私は大事にしていきたいと思った。
やっぱり最後は使う人のことを考えたデザイナーでありたい。
デザインはどんな形であれ、人の日常を助けるもの(あるいは向上させるもの)であると思うから。
つい先日、絵理子さんのデザイン哲学という全社研修があったのだが、いくつか印象に残った言葉があった。
その中で、このnoteに入れたい言葉が、これだ。
「大事なのは、作り手のためじゃなくて、使い手のため。」
絵理子さんから学ぶことは本当にたくさんあるが、この言葉は最近の私にとって、とっても響いた言葉だった。
まずは心のままに、手を動かしてみて、できたものを使い手のためにデザインしていく。
それを心に留めて、職人たちとキャッチボールしながら、今日も手を動かします。
渡したラフサンプルの構造が少し複雑だったようで、考え込むモルシェドバイ。。。
