最後の一品モノがたり:回収したレザーから生まれる「世界に一つだけ」のバッグの向こう側
2020年からスタートした、回収したバッグやレザーの端材から生まれたリメイクプロダクト「RINNE」シリーズ。今年は、クリスマスシーズンに限定色、赤と緑が発売されました。
携わったおふたりにとっても、実はRINNEは思い入れの強いプロダクト。RINNEの思い出とともに、今回の開発での想いをお伺いしました。(聞き手:広報・角田)
根形(写真左)「最後の一品店。」二代目店主。入社4年目。数店舗経験したのち、公募で「最後の一品店。」へ。
前田(写真右)商品開発チーム担当。入社5年目。1年目の舞浜イクスピアリ店配属時から「モノづくり」に携わりたいと志望し続け、社内インターンを経て現在は商品開発チーム。
モノづくりとの関わり
ー 自己紹介もかねて、まずは普段のお仕事をお聞きしてもいいですか。
根形) 二代目店主として秋葉原の最後の一品店。で日々お客様をお迎えしています。その他にも「”めぐる”最後の一品店。」の企画を通して全国のお客様へ最後の一品を届けながら、ジュートバッグをはじめ使われなくなった資材を活用した限定プロダクト開発をしています。
もともと民族衣装が好きで、社会で注目されていないモノやヒトの良さを引き出す仕事をしたいと思ってマザーハウスに入社したというのもあって、プロダクトの新しい魅力を見つけられる「最後の一品店。」に異動を希望したんです。なので、店舗運営と平行して新しいプロダクトの魅力を引き出したモノづくりにも関われる、いいとこどりをしています(笑)。
前田) 私はバングラデシュの自社工場のみんなと一緒にバッグの開発をしています。最近だとバッグはHinodeやYokaze、Round Moon、他にもクリスマスのノベルティやお店の飾りなども作りました。
私はもともとモノづくりがずっと好きで、中高生時代から木工でお皿を作ったり、草木染や陶芸をするような学校に通っていたんです。その興味と途上国への興味がかけ合わさってマザーハウスに入社しました。新卒1年目からモノづくりをしたいと志望しつづけた結果、縁あって開発の仕事に異動しました。あっという間に入社5年目です。
ー 先日はじめてバングラデシュに出張されてましたよね。
前田) 5月に初めてバングラデシュに行く機会がありました。話は聞いていたのですが、スタッフみんなの「いいものをつくりたい」という熱量が本当にすごかった。日本にいると中々見えないけど、マトリゴール(自社工場)の中でどういうトライをしていて、それをどうやったらより良く作れるようになるかを、実際に一緒に手を動かしてできたことが嬉しかったです。そのモチベーションをどう維持していくか、実際に日本人スタッフが行く意義を以前より一層考えるようになりました。
マザーハウスらしさがつまったRINNE
ー お二人とも幅広く活躍される中でモノづくりに取り組まれていると思いますが、今回RINNEシリーズがテーマということで、まずはどんなシリーズなのか教えていただけますか。
根形) RINNEは2020年7月からはじまったシリーズで、「モノを生み出すだけではなく、その終わり方までデザインすることも作り手の責任として、新たな循環を生み出す」という考えの元に生まれました。
役目を終えたお客さまのレザーバッグを回収・解体して、マトリゴールに送ります。そこから職人がランダムな組み合わせでバッグをおつくりするので、組み合わせが幾通りもあり、世界にひとつだけの出会いをお楽しみいただけるのが特徴です。
ー 3色の組み合わせだから、最大で3つのバッグから生まれ変わったかもしれないですよね。作った職人がいて、日本で手にされた方がいて、回収・解体した方がいて、もう一度バッグとして生まれ変わらせた職人がいる。たくさんの人の想いを経てきたバッグですね。
ー デビュー4年だと前田さんと同期でもありますね。
前田)入社してちょっとしてから発売になりました。当時いた舞浜イクスピアリ店ではRINNEがとても人気がありました。RINNEだからこその「選べる楽しさ」をつたえたくて、マネージャーと一緒に当時のディスプレイのルールを破って(笑)お店にあるRINNEを全て並べたりしていました。特にかわいいRINNEは前の方にディスプレイしたり、珍しいレザーパーツについてお伝えしたり工夫をこらしていたので、RINNEには思い入れがあります。
回収したバッグがもう一度バッグに生まれ変わるところも、1点しかないものをお客さまにお届けするコミュニケーションも含めて、マザーハウスらしいプロダクトだと思っています。
ー 「最後の一品店。」にとっても、RINNEは大切なプロダクトですよね。
根形) 最後の一つまで届けることが、この「最後の一品店。」の使命であり、お店の役割だと思っているので、できあがったプロダクトだけではなくお客さまの手元で役割を終えたバッグに命を吹き込むというところでRINNEは大事なプロダクトですね。循環という意味で、お店のコンセプトを体現しているプロダクトでもあります。
ー 根形さんご自身にとっても、RINNEは大切なプロダクトなんですよね。
根形) 発売になったときにデザインがまずかわいくて、さらにコンセプトがとにかく好きだったんです。このRINNEは、私が京王新宿店にいた時に出会った子なんですが、倉庫から届いた箱を開けた瞬間、赤と緑が目に飛び込んできて「バングラデシュの国旗カラーだ!!!」と(笑)。絶対に自分のところにお迎えしたい、と思いました。ちょうど「最後の一品店。」の社内公募があった直後に入荷してきたので、受かったらご褒美として絶対にお迎えしようと思っていました。そこから「最後の一品店。」への異動が決まり、RINNEを体現するお店を作るんだと決意のもとに迎えました。
「世界にひとつだけ」を生み出す
ー 今回赤と緑というところで、なぜ赤と緑を作ろうと思ったんですか。
根形) 以前からお客さまに「赤の入ったRINNEはありませんか」というお声を月に1~2件いただいていたんです。「最後の一品店。」では、全店でも一番豊富なRINNEのバリエーションをご用意しているんですが、それでも色を指定してのお取り寄せは難しいんです。その気持ちにお応えしたかったのと、年に一度のクリスマスギフトのシーズンにウキウキした気持ちを感じていただければと思って赤と緑にしました。それと・・・赤と緑はバングラデシュの国旗カラーです!笑
ー クリスマスらしい色で特別感がありますよね。赤はやっぱり人気なんですね。
前田) 発売当時も赤のRINNEをご希望のお客さんがいらっしゃいました。赤自体、秋冬の限定色などでお作りすることが多いので、ベーシックなブラウンやネイビーと比べると少しレアかもしれないですね。
ー 今回特に生産上で難しかったところはありますか?
前田) 通常であれば職人が手に取ったレザーでランダムな組み合わせになるんですが、今回は赤か緑がボディーパーツのどこかに必ず入るように選びおつくりしています。特定の色を使うことはそこまで大きな問題にはならなかったですが、それ以外のレザーをいかにランダムに色の偏りがでないように組み合わせられるかを考えるのが一番難しかったです。
すべてが1点ものでバリエーションが豊富なこともRINNEの大切な魅力なので、マトリゴールの職人たちと話し合いました。ジアさん(マトリゴール生産管理マネージャー)がこういうバリエーションが作れたよとLINEをたくさん送ってくれたりしました(笑)
同じ緑でも、使われているパーツが違ったり、カーキがあったりダークトーンがあったり、他のパーツの配色が違ったり・・・すこしの違いで雰囲気が変わるので、面白かったですね。
ー 本当に1つしかないんですね・・・。選び方のおすすめはありますか。
前田) ワンポイントとして持ちたい方にはカラフルなのもいいですよね。このサイズだからこそ挑戦しやすいと思います。
根形) RINNEをお客さまと一緒に選ぶのは本当に楽しいんですよね。
前田) あの子とかこの子とか呼んじゃいますね。
根形) 呼んじゃいます(笑)。私はつるつるしたレザーのフラップの子が好きなんです。キレイ目なお洋服にも合わせやすいですよね。
前田) 色合いが大人っぽいシックなまとまりだと、コーディネートを選ばず合わせやすいですよね。同じ赤系・緑系でも色々あって、選びがいがあると思います。
「やるべきこと」を考え、伝えていく大切さ
ー RINNEでも、それ以外でも、今後やってみたいことはありますか?
根形) いっぱいあるなぁ(笑)本当にまだアイディアなんですが、お客さまから自分のもとに戻ってくるRINNEも欲しいというお声を頂いたことがあります。以前あったミニチュアの手乗りバッグのRINNEバージョンがあったら素敵ですよね。
前田) 素敵ですね~。小物ならいいかも。バッグにしようとすると、ある程度の大きさのパーツがとれないと作れないので・・・。今後も、回収したバッグがきちんと循環して、またお客さまに届くサイクルを回し続けることが大事ですよね。バングラデシュという国でもできることが増えてきています。マトリゴールは本当にすごくて、やりたいという気持ちがあったり、やる意義があることはできちゃうんです。だからこそ、何を作りたいのかという個人の意思が大事なんです。自分にとっても、マトリゴールにとっても、何ができるか考えています。
根形) もっともっとバングラデシュのこと、マトリゴールのことなどモノづくりの背景を伝えていきたいと思っています。お客さまと一緒に行くファクトリーツアーも復活させて、一緒にRINNEを作るのも楽しそうですよね!
限定カラーのRINNEをご覧になるお客さまにメッセージ
根形) 世界にひとつしかない一品で、「自分だけの特別」を感じていただいたり、愛着を持っていただけたら嬉しいです。
前田) RINNEのすごいところは、全くRINNEのことを知らない方が「これかわいい」と言って選んでくださるところだと思っています。ぜひお気に入りを見つけていただきたいです。