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救急車内のすごい違和感

沖縄の長い夏も終わり肌寒くなった頃の出来事。

季節の変わり目は体調を崩す人が多い。小さい子供はなおさらである。

熱がでてケイレンを起こす事案は結構多いのだ。

ケイレンには、全身が突っ張たり、腕をバタバタさせたり、一か所を凝視したりと色々なパターンがある。
ただ共通しているのが、大概の母親がパニック状態で119番通報することである。

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出動指令「1歳男児、ケイレン発作中」

出動先「○市〇町△アパート201」



署から数キロ離れた住宅地にあるアパートだった。

現場に向う途中、救急車内の端末に追加情報が入った。


「通報者は母親、パニック状態、案内人なし。」


例にもれず、母親は気が動転しているようだ。(こればっかりは仕方ない)



救急車が現場近くまで来たとき、アパートの前に小さい子を抱きかかえた若い母親が見えた。薄着の服装などから、慌てて降りてきた様子が伝わってくる。

すぐに救急車の後ドアを開け、男児を抱いたまま救急車内の椅子に座ってもらった。男児ケイレンは治まっていた。

一通りの観察を終えて、少し離れた小児対応の病院へ向けて出発した。


始めは慌てていた母親も、子供の顔色が戻ってきていることに安心した様子だった。男児も手を動かして母親の服を引っ張ったり活発に動いている。


僕は病院に引き継ぐための書類を書き始めた。



ふと顔を上げた。

ん???

何かおかしい。


視界1mぐらいの距離にあるのは、''おっぱ〇''なのか?

状況を飲み込むのに時間がかかったが、やはり''〇っぱい''なのである。なぜか左側だけが出ている。


男児が母親とジャれる →Tシャツを引っ張る →左の胸がこんにちは →母親は気づいていない。

と、ここまでは予想できた。


自分の''おっぱ〇''が出ているのにも気が付かないほど、自分の意識が子に向いているのか。


僕は気づいていないフリをして書類に顔を戻した。


救急車の後部に、僕と左胸をポロリした若い母親とその子供。

とにかく違和感がすごかった。


「早く病院に着いてくれ」「いやそれはそれでヤバい」と勝手に葛藤をしているうちに僕は煩悩で顔をあげてしまった。


それと同時に、若い母親は「ハッ」となって左胸を収納した。


僕の煩悩が伝わってしまったのか知る由もないが、母親の子に対する愛情をひしひしと感じた出来事だった。















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