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とある元旦の朝
年末年始は本当にいろんなことが起きる。
新年を迎えられなかった人、新年を迎えたばかりだったのに...という人。
表に出てこないだけで、実際は色んなことが起こっている。タイミングを図ったかのように。
ある年の元旦の朝。
管轄の警察署から119通報だった。
護岸沿いにて、「釣り人から、焼死体があるとの通報で現場に向かっている。」との情報。
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出動指令「火災 人が燃えたあとがある。」
出動先 「〇市△護岸付近」
署から約5分の距離である。
消防隊と救急隊で現場に向かった。
元旦とは言っても、西海岸沿いに初日出を見に来る見物客の姿はない。
居るのは釣り人ぐらい。
現場は護岸沿いの遊歩道だった。夕方は海岸線に沈む夕日が綺麗な場所だ。
付近に着くと、パトカーが数台止まっており、まだ薄暗い闇の中、スロープの前に立ち入り禁止テープが貼られているのが見えた。
歩道から護岸に降りるためのスロープを下ると、肉が焼けた匂いと、石油系燃料混じったなんとも言えない匂いがする。
近づくほど匂いが強くなっていく。
スロープから下を覗くと、そこに黒焦げの人が倒れており、後の壁には影のような焦げ跡がついていた。
近くで観察すると、頭部は炭化している。顔の皮膚が焼け表情がない。
顔から下も表皮がめくれているのが一目瞭然だった。皮膚の緊張が無くなった箇所からは体液が染み出している。
その場で死亡判断となった。
傍らには、白い容器に残された灯油のような液体、半分溶けたライター、炭化した煙草の箱、350mlの酎ハイの空き缶が無造作に散らかっていた。
少し離れた場所には、焼けていない黒いパーカーと腕時計が置かれていた。
身元が分かるものは一切ない。
夕方は人通りがあるので、人気の無くなった深夜に火災が起きたのだろう。
世間が盛り上がっている大晦日か、新年を迎えた頃なのか。
何を思ったんだろう?
いつまでも途切れることのない波の音が聞こえている。待機時間が長く感じた。
ちょうど朝日が西側まで届き始め、まぶしかったのを覚えている。
焼死体が出たため、火災調査担当の部署へ引き継ぎとなったので、その後の話や詳細は分からない。