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引出しから女児

これはネコ型ロボットが未来からやってくるアニメの話ではない。

災害はいつもながら急に起きる。

この日も24時間勤務が終わる朝の指令だった。

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出動指令「3歳女児、タンスの下敷き」

出動先 〇市〇町678 △アパート204



災害場所は直ぐに分かった。

出動先のポイントが、当時住んでいた家の近くのアパートに落ちている。


母親は相当パニックを起こしていたと思うし、119番を取った指令員も大変だったろう。情報が錯そうしていた。

その間にアパートの201号室に到着。

室内に入ると、縦横高さ50cm×80cm×120cm程度の木製のタンスが、引手側を下にして倒れている状態だった。

母親が取り乱している。

女性1人の力では到底起こせそうにないが、大人の男が2人いれば何とかなりそうな印象だ。


しかし、おかしい。

タンスが完全に床に密着しているし、子供の姿が見えない。

サイズ的にも人が押しつぶされ、ペチャンコになるような重さではない...


母親「タンスの引き出しで遊んでいたんです!」

母親は相変わらず取り乱している。



「とにかく、タンスを起こすぞ!」

「準備よし!1、2、3!」


消防隊特有の合図のあと、タンスが起こされた。案の上、そんなに重くもない。


すぐさま母親が駆け寄ってきて、下から2番目の引き出しを引くと。


引き出しの中で、おかっぱ頭のかわいい女の子が、くの字になっていた。

特に痛がる様子もなく、怖がる様子もなく、きょとんとしている。

もちろん生きてる。

何でこんなに人がいるの?と言わんばかりの表情が忘れられない。



色々と話を聞いているうちに状況が分かってきた。

引き出しの中で遊んでいる時にタンスが倒れてきたが、体格が小さかったため、上手い具合に身体が引き出しの中に収納されて怪我がなかったのだ。


帰り際、安どと疲れが混じった表情の母親と対照的に笑顔を振りまいていた女の子が印象的だった。


女の子が出てきたときの表情に思わずホッコリしたが、我が子もタンスで遊ぶことがあるので、家に帰ってからタンスの固定状況を確認したのは言うまでもない。


子どもの事故のほとんどは、大人の注意で予防できると言われている。

減少し続ける日本の子供達、重大事故は絶対に防いほしい。




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