細かい私

○桜藤高校・2階廊下

白石篤樹(16)、野球の練習着を着て、廊下を歩いていると、教室から女子の話し声が聞こえてくる。
立ち止まり、こっそり教室を覗き見ると、女子3人が楽しそうに喋ってる。

女子1「ぶっちゃけさ、清潔感ある男子が一番じゃない?」

女子2「分かる!肌と匂い気遣ってる男子少なくない?」

女子3「野球部とか絶対そういうのいなそうじゃない?」

女子1「でもいたらギャップだよね!」

篤樹、聞きながら何か思いつく。

○白石家・優の部屋(夜)

白石優(17)が、机で勉強している。
机の棚は、難関私立の赤本と教科書が科目ごとに綺麗に整頓されている。
机の上に置いてあるデジタル時計が鳴り響く。時刻は18時。
優、タイマーを止め、壁に貼ってある自作の1日スケジュールを確認する。
スケジュールには、『18時〜20時 日本史明治以降復習』と書かれている。

○同・浴室(夜)

篤樹、椅子に座り、Foorinの『パプリカ』を歌いながら、体を洗っていると、乳液が目に止まる。

篤樹「♪手にはいっぱいの乳液つけて〜」

と、乳液を手に取り、顔に塗る。

○同・優の部屋(夜)

優「あいつ……」

と、浴室から聞こえる篤樹の歌声に苛立ち、すぐに紙に何やらメモを取る。

○同・浴室(夜)

優、髪を洗っていると、床に何かを発見し、指で取ると、2粒の砂。
洗い流そうとシャワーの蛇口をひねろうとすると、乳液が目に止まり、手に取る。裏を見るとラベルに赤い線が引いてあり、乳液が線を下回っている。

○同・篤樹の部屋(夜)
篤樹、ベッドにうつ伏せになり足をパタパタさせ手首に香水をつけている。
優、血相を変え、部屋に入ってくる。
優「篤樹!」

篤樹「え、なに?」

優、手に持ったメモを読み上げる。

優「入浴中のパプリカ大熱唱、あれなに?」

篤樹「ごめん、なんか歌いたくなって」

優「気散るのでやめてほしい。あと浴室にまた砂落ちてた2粒、今後流し忘れないで」

篤樹「あ……はい」

優「あと、私の乳液勝手に使ったでしょ?」

篤樹「え、いや……」

優「誰かが使用したら分かるように赤い線引いてあるの」

   と、乳液のラベルの赤線を見せる。

篤樹「でも、母ちゃんかもしんねーじゃん」

優「普段あんたそんな顔てかってないでしょ」

篤樹「……細かいよ姉ちゃん」

優「悪いけど、受験終わるまでは私に合わせてもらうから、あと香水返して」

   香水を取り上げ、部屋を出ていく優。


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