アホな奴らの密室殺人計画

登場人物
たなでん(22)・・・電気屋の息子
世路(22)・・・タナデンの高校の同級生
アロマ(22)・・・タナデンの高校の同級生。苗字は天見。
こす(22)・・・タナデンの高校の同級生。苗字は小杉。
しょうや(22)・・・タナデンの高校の同級生

○田中電気・前(夜)
川崎の商店街の一角にある田中電気。
年季が入った田中電気の看板。

○同・2階・タナデンの部屋(夜)
スーツ姿のたなでん、普段着のアロマ、こす、が部屋の中で円卓を囲んで話している。
たなでん「アロマとこす、悪いな、急に呼び出して……」
アロマ「いやいや、久しぶりに連絡もらえて嬉しかったよ、高校以来だよね?」
たなでん「そうだね」
こす「あれ、それくらいしか経ってないっけ?」
アロマ「それくらいって、だって数えたら4年半だよ?」
こす「そんだけ?たなでんと俺は中学以来会ってないよ」
たなでん「あ?俺とお前中学ちげぇじゃねーかよ」
こす「え?あ、そっか」
アロマ「こすアホさ増した?」
こす「うん、バイトばっかしてっからな」
たなでん「お前高1の時からずっとバイトしてたよな」
こす「うん、金持ちなりたいし」
たなでん「まだ言ってんのかよ」
アロマ「でも全然お金貯まってなかったよね」
たなでん「確かに、よく寝坊しててその都度、10キロ離れた家からタクシーで学校来てたもんな」
アロマ「そうそう!PTAの人かな?って思ったらこすっていう」
こす「いいって、俺の話は。アロマはまだ美容院の学校行ってんの?」
アロマ「もう卒業して、1回美容師になったんだけど、実は今別の専門学校行ってて」
たなでん「え!?なんの?」
アロマ「警察官」
たなでん「え!すごいな!」
アロマ「まぁ、行ってるだけだから」
たなでん「なんでまた?」
アロマ「美容師やってた時、お客さんで警察官の人がいてさ、その人がカット終わって店出た時に、目の前でちょうど主婦の人がバッグ引ったくられてさ!そしたらその警察官が、すかさず追っかけて犯人とっ捕まえたんだけど、まあそれがかっこよくて……俺もあれやりたいな〜って思って警察官目指そうと」
たなでん「アロマはすぐ影響受けるな」
アロマ「たなでんは?電気屋ついだの?」
たなでん「ううん、俺は最近金融会社に転職して」
アロマ「え、金融?すごい!」
たなでん「の事務」
アロマ「事務かよ!」
たなでん「事務も大変なんだよ」
アロマ「え、実家は手伝わなくて良いの?お父さん1人で大変じゃない?」
たなでん
「今、世路が手伝ってくれてんだよ」
アロマ・こす「せろ!?」
アロマ「え、高校中退した?あのセロ?」
たなでん「うん、実は、今日呼んだのも世路が話あるからで……」
その時、作業着姿の世路がドアを開け、重苦しい表情を浮かべて部屋に入ってきて、円卓の前に座る。
世路「……悪かったな、今日は、集まってもらって」
アロマ「1階で働いてたなんて、気付かなかった」
世路「中退してから、実はずっと、たなでんの電気屋手伝ってたんだ」
こす「世路……」
世路「ん?なんだ?元気そうだなこす」
こす「……」
たなでん「実は俺も今回の要件は聞いてないんだ。一体どうしたんだ?世路」
世路「……人殺しを、手伝ってほしい」
アロマ「……え?」
たなでん「……世路、何言ってんだお前?」
世路「大丈夫、跡はつかない方法をとる」
たなでん「跡つかない?どういうこと?」
世路「密室殺人だよ」
たなでん「アホだな、ないない、はい、解散、ごめんな2人とも」
と、立ちあがろうとするたなでんの腕を、世路が握る。
世路「頼むよ、お前たちしかいないんだよ」
こす「……世路」
たなでん「第一、誰を殺すって言うんだよ」
世路「俺が、高校中退した原因、知ってんだろ?」
たなでん「(頷き)」
アロマ「高2の時、野球部のしょうやをボコボコにして病院送りにしたやつ?」
世路「(頷き)あいつ、また俺の妹と付き合い始めたんだよ」
アロマ「また?」
たなでん「5年前もってこと?」
世路「(頷き)俺がしょうやのことボコボコにしたのも、妹に暴力振るってるって知ったから」
たなでん「あいつ、そんな奴だったのかよ」
アロマ「また付き合って、また暴力振るってるってこと?」
世路「(頷く)」
アロマ「何それ!許せない!殺そう!」
たなでん「流されんの早いな!お前警察官なりたいんだろ?殺そうとしてる奴すぐ取り締まれよ!今すぐ夢叶うチャンスだぞ!」
アロマ「正義ゆらいできてるんだよ」
たなでん「どういう意味?」
アロマ「でも、普通に殺すんじゃなくて、どうして密室に拘るの?」
世路「……いや、なんか、密室って、バレにくいんでしょ?」
たなでん「やり方によるだろ。どういう密室殺人やろうと思ってんの?」
世路「それをお前らに今日相談したかったんだよ」
たなでん「俺ら?」
世路「どうすれば良いんだよ、密室殺人って?」
たなでん「知るわけねーだろ!え、何もプランなし?」
世路「うん」
たなでん「無理だろ!え、いまから皆でそれを考えようとしたってこと?」
世路「もちろん」
たなでん「無謀すぎるよ……」
こす「……世路、久しぶり」
たなでん「今じゃねーだろ!」
世路「久しぶり」
アロマ「密室って、部屋に死体だけで、他なんの痕跡もない状況だよね?」
世路「そうだな」
アロマ「じゃあ、世路がしょうやの家に行って、殺してから、家の鍵奪って、閉めれば密室になんない?」
たなでん「バカだなお前、鍵が無くなってる時点で外から入ってきたこと疑われるだろ」
アロマ「あ、じゃあ、小窓の隙間開けといて、そこから鍵投げて家に戻すのは?」
たなでん「小窓開いてる時点で密室じゃないよ」
アロマ「あそっか」
こす「あ、しょうやをギリ動ける程度に生かしておいて、俺らが出ていったらドアと窓閉めておいてね、ってお願いするのは?」
たなでん「やってくれるわけねーじゃねーかそんなの!」
世路「通報されたら終いだしな……」
アロマ「むずいな密室〜」
こす「あ!いっそのこと、もうしょうやに自分で死んでくれってお願いするってのはどう?」
世路「あ!それだと確かに密室になるし」
たなでん「だから、そんな簡単にしょうやが受け入れてくれるわけないだろ!」
世路「……クソ」
たなでん「やっぱ限界だよ、工業高校出身の俺らで密室殺人考えんのは」






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