夢を見た男
○マンション・寺西の部屋(深夜)
枕を持つ、寺西十夢(30)。
寺西N「ついにこの日が来た。枕。1ヶ月待って、ようやく届いた」
寺西、説明書に目を通す。
説明書には『あなたの見たい夢、お見せします』の文字。
寺西N「枕の下に本や写真を入れるだけで、見たい夢がそのまま見れる。スマホの画面を入れることも可能。こんなに優れた商品が生み出される時代に生まれて来れて幸せ、母ちゃん、ありがとう」
説明書には『あの人と、あんなコトが、夢の中で出来るかも♡』
寺西N「ダメだ、読んでるだけで、ムズムズしてきた。色々悩みに悩んだが、今日は、これで試してみようと思う」
お気に入りのグラビアアイドルの写真集を枕の下に入れる寺西。
時計を見ると、12時前。
寺西の隣に、風呂上がりの、寺西珠理奈(30)が入ってくる。
珠理奈「あんたsなにニヤニヤしてんのあんた?」
寺西「……いや、別に」
珠理奈「相変わらず気持ちわりーな、早く寝ろよ」
寺西N「言われなくてもそうするつもりだ。ったく、いつから妻はこんなに口が悪くなったのか」
寺西「消すよー」
珠理奈「あいー」
寺西、珠理奈に背を向ける。
寺西N「あ〜シンプルにクッション性も最高〜。どこまでも沈んでいきそう……」
○寺西の夢・遊園地
お客さんで賑わう遊園地。
立ってる寺西。
寺西「ん?ここは?」
女の声「とーむくん」
寺西、振り返ると、水着姿のグラビアアイドル水瀬ヒカリ(23)がアイスクリームを両手に持っている。
寺西「う……!ひ、ヒカリちゃん」
ヒカリ「どっちがいい?白のバニラか、それとも、もっと白のバニラか」
寺西「ええ、どっちも白、うわぁ、迷うなぁ」
ヒカリ、谷間に片方のバニラを落としてしまう。
ヒカリ「ひゃ!冷たい!」
寺西「だ、大丈夫?」
ヒカリ「うん、大丈夫」
寺西「今、おしぼり貰ってくる、ついでに、新しいの買ってくるね!」
ヒカリ、寺西の腕を掴む。
ヒカリ「どっちがいい?」
寺西「……え?」
ヒカリ「白いバニラか、それとも、(谷間を見て)もっと白いバニラか」
寺西「……え、いいの?」
ヒカリ「早くして、溶けちゃう〜」
寺西「あぁ……じゃあ……」
寺西、谷間を凝視し、顔を埋める。
○マンション・寺西の部屋(深夜)
寺西、珠理奈の方を向いて、下を出しぺろぺろしている。
スマホをいじっていた珠理奈、明かりで寺西の顔が見える。
珠理奈「(舌打ち)キモ、あっち向けよ」
と、おでこを思いきり叩いて、顔を反対方向に向かす。
○寺西の夢・遊園地
寺西、頭を押さえている。
寺西「いったぁ〜」
ヒカリ「大丈夫!?」
寺西「うん、頭冷えただけだと思う」
ヒカリ「勢いよく食べるから〜」
寺西「えへへ」
寺西の表情が変わる。
ヒカリの頭上に、ラインの吹き出しが出てくる。
寺西「ヒカリちゃん、上のなに?」
ヒカリ「うえ〜?」
ヒカリ、上を向くが、見えないのか、ポカンとする。
ヒカリ「何もないですよ〜?」
寺西、一歩近づいて、よ〜く見てみると、妻・珠理奈のアイコンと、知らないユウヤという男が、ヒカリの頭上で、LINEで会話している。
珠理奈『旦那、今寝たよ』
ユウヤ『寝顔送って』
珠理奈『旦那の?』
ユウヤ『違うよ!じゅりの♡』
珠理奈『昨日見たじゃん……♡』
ユウヤ『いいじゃん、見せて♡』
ユウヤ『じゅり?』
ユウヤ『おーい珠理奈〜?』
寺西「ゆうや……?」
○マンション・寺西の部屋(深夜)
寺西、パッと目が醒める。
寺西「ゆうや?」
横を見ると、寝ている珠理奈。
珠理奈「ゆうや……」
と、寝言を言っている。
枕を見ると、珠理奈のスマホが、寺西の枕の下に。
寺西、恐る恐るスマホを取る。
画面を見つめる寺西。
○珠理奈の夢・白い空間
珠理奈が、ポツンと立っている。
珠理奈「ん?ここどこ?」
目の前に、珠理奈とユウヤの思い出の写真が投影される。
珠理奈「……ユウヤ?」
周りを見渡すが、何もない。
珠理奈「ユウヤ?なに?夢?」
目の前の写真が、LINEのテレビ通話の画面に切り替わる。
薄暗い、寺西の顔。
珠理奈「……あんた?」
寺西「離婚だ」
珠理奈「……え?」
寺西「離婚だ、この不倫女」
珠理奈「……え、いや、ちょっと何言ってるのあんた?」
寺西「いつまで寝てるんだ」
珠理奈「寝てる?起きてるんだけど」
寺西の画面が移動し、珠理奈の寝顔が映る。
珠理奈「私……」
寺西の声「離婚だ!この不倫女!不倫、不倫、ふりーん!!!」
○マンション・寺西の部屋(深夜)
ベッドから起き上がる珠理奈。息が上がっている。
横を見ると、寺西が目を開けている。
珠理奈「ごめん、起こしちゃって。なんか変な夢見て」
寺西「夢じゃないよ。夢だったけど」
スマホ画面を見せる寺西。
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