新感覚!解決しないミステリー小説ロンドの旅Part2ソナタの旅 Chap2アントワープの事件
21.告白
歴代の団長が使用してきた重厚感のある木製のデスクの引き出しからノートパソコンを取り出し、ソファに戻った。係員は手を少し震わせながらカップを持ち上げコーヒーを一口に含み瞳を閉じる。気を落ち着かせるよう意識しながら、話を続けるようだ。団長はパソコンを起動させ文字を入力するソフトを開き、係員が先ほど話した内容を記した。
待たせて悪かったね。続きを聞かせてくれるかい?
はい、もちろん。僕の持ち場である舞台袖に待機していると、反対側にいるはずのあの子の母親が現れたんです。そして僕にこう言いました。"とても気分が悪いから水を持ってきて欲しい"と。僕はその場を離れるわけにはいかなかったので、別の係員に電話でお願いしようとしたのですが、母親はそれを静止しました。
ふむ。どのように静止したのかな?
…高額のチップを渡されて、"ぜひ君にお願いしたい"と言われました。それで本当は良くないことと思いつつ、その場を離れ飲み物を探しに行ってしまったのです。
そうか。良く話してくれたね。
…舞台袖には東側と北側に出入り口がありました。僕は今回の会場にはあまり慣れていなくて、最初東側から出たのですが、たまたま目の前にいた会場スタッフの方に尋ねると、北側から出ればすぐに販売機があると教えてもらい舞台袖に戻ったんです。そしたら----。
そこで何かを見た…?
そ、そうです!ナ、ナイフのようなもので娘さんの楽器の弦に傷を付けている母親の姿を見ました!た、たしかに見たんです、この目で!
係員は興奮して急に立ち上がり声を荒らげた。団長はソファに腰をかけ、コーヒーを飲んで落ち着くよう促す。自身も一口含みながらこれまでのメモを見返した。
取り乱してしまい、すみません。
そうなっても無理はない。君はそれほど衝撃的な事実を目の当たりにしてしまったんだ。
…はい。その時、僕は慌てて母親に何をしているのかと尋ねると彼女は走ってその場を立ち去ったのです。
そうか、ありがとう。これ以上この話を続けるのは君に取って大変なストレスになりそうだ。あとは僕に任せて、家へ帰ってゆっくりしてほしい。
ありがとうございます。あの、こ、この先は一体どうなるのでしょうか?
まずはあの子とうちの娘の精神面をケアすることを最優先にしたい。そのうえで、君の話を参考にしながら、あの子の家族とも話をしてみることにするよ。勇気を出して話をしてくれて本当にありがとう。君が話してくれなければ真実に辿り着くのは難しかったかも知れない。
わかりました。もし何かあればまた話しますのでいつでも言ってください。
ありがとう。あ、最後に。他にこの話を打ち明けた人は?
家族にだけは話しました。誰にも言うなと言われましたが団長にだけは話さないといけないと思ったんです。
そうか…よく話してくれた。本当にありがとう。
そうして係員は団長室をあとにしたが、それは団長が目にした彼の最後の姿となったのである。数日後、遺体となって発見され警察には自殺と断定された。団長は彼からの告白と死に因果関係があると思い、警察へ調書を提出すると共に、一部の楽団幹部にも事のあらましを共有した。しかし、母親が楽器に細工した物的証拠はなく、自殺との関係性を立証するには至らない。その間、幼馴染は楽団を辞め、後を追うように娘も退団して、ドイツの"練習生"の話は自然消滅となる。団長が苦悩の末に出した"オーディション"は何とも悲惨な結果で幕を閉じたのだった。
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