新感覚!解決しないミステリー小説 ロンドの旅Part2.ソナタの旅 Chap2.アントワープの事件
4.邂逅
ソナタの服装はルンビニから変わらず、青色のトレンチコートにヒールのない黒色のロングブーツ、インナーのセーターは白色でパンツは黒色を身につけていた。この時期のアントワープの気温からするとやや薄着だし、歩きづらい格好ではないが徒歩で目指すには被害者の自宅と思われる場所は途方もない距離である。しかも、さっきまでの歩きやすい舗装された道とは異なり、真っ暗な畦道をひたすら進まなければならない。そして、数日間食事をしていないことによる栄養不足がソナタを肉体的にも精神的にも追い詰めていった。電話を借りてロンドへ助けを求めようとも考えたが、彼らにも危険が及ぶ可能性があることと、旧友からの報告のこともあり軽率な行動は控えることにした。そんな時、後ろからやってきた1台の車がソナタの横で停まり運転席から人が降りてきた。
あなた、こんなところを1人で歩いて大変でしょう。
ブロンドでグリーンアイを持つ鼻の高い白人女性がソナタに話しかけた。身長170㎝ほどのスレンダーで美しい外見で、スキニージーンズがよく似合っている。
私は…
すべてを打ち明けて助けを求めたい気持ちでいっぱいであったが、また罠かも知れない。適当にあしらい、目的地を目指して歩き続けるしかないのだ。しかしそんな気持ちとは裏腹に、急に目の前が真っ暗になりソナタはその場に倒れ込んでしまった。女性はソナタを抱き抱え車に乗せて運転席に戻りその場から離れ、自宅に着くとソナタを後ろから脇の下に腕を通して引き摺りながらソファまで移動させた。
ソナタはキッチンから聞こえてくる音で目を覚ました。コートは着ておらず毛布がかけられていて、目の前には飲み物とパンとサラダ、スープがフードカバーの中に収まっているのが見える。重い体を何とか起こすとカラッカラの身体が水分を欲しているのに気付く。そうしてボーッとしていると1人の女性の声が聞こえてきた。
あら、ごめんなさい。起こしちゃったかしら。これはさっき作ったばかりだから良かったら召し上がって。…それにしてもあなた、死にそうな顔してるわよ。
…あなたは?
何とか声を振り絞った。
ああ。私はこの家の者よ。うちは代々みな音楽家をやっているわ。それよりも早く何か口にして温かいお風呂に入ったら?沸かしておいたから。
音楽家?もしかしてここの住所は…
ええ、そうだけどなんで知っているの?
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