ミステリー小説 ロンドの旅 Chap3.東京の事件 8.対峙
このまま黙っていても埒が明かないな。僕は早くソナタに会いに行かなくてはならないんだ。話を進めようじゃないか。
私は、お前が心を入れ替えてくれればそれだけでいいんだ。
ん〜、何のことかサッパリだよ。
白い歯をこぼし、朗らかな笑顔のいつもの彼に戻りつつあった。
さあ、はっきりさせよう。君はソナタと組んでいることを認めたが、正確には「組んでいた」じゃないのかい?
…なぜ、そう思う?
時系列で話していくよ。まず君はGPSを使いソウルで僕らの居場所を彼女に伝え、僕らのもとへ先生を仕向けた。そしてこの国へ誘導しまた先生を使って、僕らへ例の暗号を渡した。ここまではまだ君たちは仲間だった。
ほう。それで?
そのあと、ハプニングが起きた。先生の事件だ。星は高確率で2.5だった。ここで僕はある矛盾に気付いたんだ。僕に暗号を渡し次の場所へ誘導している一方、先生の事件を引き起こしこの国へ留まらせようともしている。両方がソナタの仕業と考えるのは不自然…つまりどちらかが別の人間、いや、"君たち"が企てたフェイクではないかとね。
フェイクねぇ。ソナタからの暗号がお前の手元にあるのも事実、先生の事件が報道されたのもまた事実だ。いくら"上"でも報道機関を操り偽情報を流すことなんてできないさ。
そうだね。そうなると何がフェイクなのか?暗号?いや…先生が自分の身に危険が迫っているのを気づいていながら、命懸けで僕に残してくれたメッセージだ。ソナタからの直接の依頼だろう。であれば、答えは…
ほし
そう。星の数だ。
…ははは。星の数は"上"からの情報だろう?そんなもの私がどう操作する?
そうだな。この作戦はもう1人協力者がいなければ成立しない。もう、分かるね。
…めらい
ああ。彼女は"上"との連絡係をやってくれていた。僕は彼女を信じ任せていたから、自分の端末は持っていても一切触ることはなかった。だが彼女は"上"との連絡用端末だけではなく、君とソナタ…いや正確には君との連絡用にもう1台端末も持っていたんだ。外観の見た目が"ほぼ"同じものをね。そして、先生の奥様と僕の電話中、君は彼女へ星2.5の偽情報を流すよう指示した。僕らは捜査のためここに残ると踏んだが、奥様からの言葉により僕は出国を決意し、君の思惑とは外れてしまったけどね。
寝室のほうから足音が聞こえ、こちらへ近づいてきた。
"あの人"と結婚してからパパはおかしくなったのよ!
来たか、メライ。体調はどうだい?