弄ばれる女たち　外国人に夢見る女

私が二十代後半の時知り合った女性がいる。

高田薫子(たかだかおるこ)37才。

彼女のことをかおちゃんと呼んでいた。

かおちゃんとは私の職場のお客さんとして知り合ったが、すぐに仲良くなって食事など行くようになっていた。

その頃の私の悩みをよく聞いてもらっていて、お姉さんみたいな存在だった。

かおちゃんは年上だったけどとても可愛らしくて、美容にもよく気を使っており、いつも華やかな服を着て、それがとても似合っていた。

初対面の時もすごく感じが良かったことを覚えている。サラサラの黒髪ロングで、肌は白く、嫌味のない話し方をしていた。

しょっちゅう美容やヨガなどに時間を使っていて、私から見ると優雅な生活を送る人だった。

かおちゃんはバツイチで、二度目の結婚をしていた。

結婚二年目くらいで、子供はなし。旦那さんはかおちゃんの年上で職場恋愛で結婚したらしい。

未婚の私はよく結婚について聞いたものだったが、かおちゃんは

「うちはもう既に冷めてるよー」

とあっけらかんと言っていた。

でもかおちゃんはよく旦那さんと出かけていて、話題のレストランもいち早く夫婦で行っていたり、週末は夫婦で買い物したりと、そんなに冷めているのかな？と思うくらいだった。

かおちゃんと知り合って数ヶ月のことだった。

たまたま家も近くて、夜二人で飲みに出かけた時のことだった。

「実は私ね、好きな人がいるの」

「え？」

まあ確かに、ちょっとそういう浮気でもしていそうな空気は出ていたからそこまでは驚かなかった。

「彼と知り合って半年ぐらいなんだけどね」

聞くと半年ほど前に海外へ旅行に行った時に知り合った台湾人の男性とずっと連絡を取り続けているとのことだった。

彼はリゾート地で働いていて、かおちゃんはそのリゾート地へ友人と旅行で行った時にその彼と知り合ったというのだ。

一週間程度の滞在でかなり仲良くなり、また会いに行くと約束して別れたらしい。

それから毎日のようにLINEをしているというのだ。

かおちゃんは英語はそこまで得意じゃなかったようだが、彼とコミュニケーションを取りたいがために英会話に通うようになり、更には中国語も勉強していた。

その彼が今度仕事で日本に来るとのことでかおちゃんは舞い上がっていた。

「あんまり時間ないけど会いに来てくれるみたいなの」

キラキラした目でかおちゃんは言った。

「その彼ってかおちゃんが既婚者って知っているんだよね？」

「もちろん知っているよ！」とのことだった。

彼の方は独身で、年はかおちゃんより１コか２コ上だった。

彼はとにかく仕事で忙しくて女性との出会いもないし、恋愛している余裕がないとは言っているらしいが、LINEはマメに返してくれるのでかおちゃんの心の隙間がそれで埋まっていたのかもしれない。

でもなんでかおちゃんは浮気なんかするのだろうか。

きっと理由があるだろうし、頭ごなしには「浮気はやめなよ」とは言えなかった。

とにかく舞い上がっているかおちゃんが、なんだか幸せそうだったので、よかったね！なんて言っていたのだった。