弄ばれる女たち チョロいアラサー女

約10年前。私が21才の時、アパレルショップに就職した時に知り合った女性、佐藤直子さん29才。

佐藤さんは見た目がキツめの人で性格もちょっとキツめで態度の大きい人だった。

黙っていれば可愛い顔だが、私からするとちょっと古臭いメイクだった。全盛期のアムロちゃんみたいな細いアーチ眉に、猫みたいな目。外ハネのアイラインを入れていて、チークも濃い目に入れていた。

「私いくつに見える?」

なんて聞いてきて、知らねえよ…と思ったりしていた。ちゃんとアラサーに見えていたが、「若く見えるでしょ?」なんて図々しく21才の私に言うような人だった。

佐藤さんは私の店舗ではなく、隣の県にある商業施設の中の店舗の店長だった。私より半年ほど早く、店長として採用され入社していた。

人の少ない店舗だったので、私の店舗からよく応援に行かされた。とくに新人だった私が行くことが多く、初めて応援で行った時に佐藤さんとは知り合った。

黒髪が好きで染めていなかった私に「若いのに地味だね」なんて初対面で言ってくる女だった。

「私見てみなよ。髪染めたりパーマあてたりして、化粧もちゃんとしてるから若く見えるでしょ?あんたもそのくらいやりなよ。地味過ぎるわ」

まあ地味なことは認めるが、古臭いメイクにチリチリに傷んだ髪の毛のアナタにはなりたくないけどね…と思った。

佐藤さんも私も同じ市内に住んでいて、隣の県のお店に行くには大きい駅から出ている直行便のバスに乗って行っていた。

1時間に二本程度しかバスがないので、出勤時間が同じなら必然的に同じバスに乗ることになる。

ある朝バスに乗ったら佐藤さんが後から乗ってきたことがあった。

バスに揺られる50分間私は寝たかったのに佐藤さんと同じ時間だといつも寝られなかった。

佐藤さんはお喋りな人で、自分の話を聞いてくれる人なら誰でも良かったのだろう。わたしにもベラベラ喋ってきた。

職場に着いて「先にタバコ一本吸っていい?」と言われ、外にある喫煙所のベンチで佐藤さんはタバコに火をつけた。

タバコを吸わない私は隣のベンチに座った。

「あんたって彼氏いるの?」

「いないですよ…。佐藤さんはいるんですか?」

「いるよ。2個上なんだけどね、付き合ってもうすぐで半年かな。」

佐藤さんはニコニコ幸せそうな顔で言った。

「今までで一番優しい人なんだー」

へえ、こんなキツい女の人でも優しい男が好きになるのか。と思った。

「今まで本当にひどい男ばっかりでさ、浮気されたり、暴力ふるわれたりね、すっごいDV男とも付き合っていたから、今の彼みたいな人初めてなのよ」

DV男…そっちの方がひっかかるな。

DV男はヤク中である日大喧嘩して這って家から逃げ出したこともあるそうだ。

佐藤さんは顔立ちは確かにいい方だったが、よく見ると鼻が少し潰れているような感じで、なぜだろうと思っていたが、この時「元カレに殴られて歪んだのか、薬のやり過ぎなのか…」などと考えていた。

佐藤さんの今の彼は、佐藤さんより二才年上で、背は低めだがオシャレで顔も好きだと言う。

「私背の高い男の人苦手だから、今の彼くらいがちょうどいいんだよねー。」

佐藤さんは男性と歩くときも自分の方が先を歩きたいタイプらしい。

佐藤さんは今の彼のことをペラペラ喋ったが

「何している人なんですか?」

と聞くと

「うーん、まあ会社員みたいな感じかな。」

と濁した。

「写真とかないんですか?」と聞くと、画質の悪い顔があまりわからない写真を見せられた。

佐藤さんは私が質問すると少し濁すことがあった。もしかして不倫とかじゃないだろうな…と思った。

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