さいはてにあめがふる―道北旅行記④(終)
6/18(火)
稚内、あるいは最果て
天気の気になる旅でしたが、最終日の朝は晴れていました。
ゆっくりする時間がないことを惜しみつつ、あちこち写真を撮って回ります。
個人的に稚内の街は好きな要素ばかりで、日がな一日、市内の散歩でもいいくらいです。
そんな稚内の街の中でもとりわけ好きな場所は、最北の駅からほど近い場所に位置しています。
それはバームクーヘンを1/4に切って置いたような、不思議な形をした構造物です。山間の道路によくある覆道のようにもみえます。
この変なトンネルらしき物の名前は「稚内港北防波堤ドーム」。……覆道でもトンネルでもありませんでした。
ここに何があるのでしょう。
ここには何もありません。
大昔はこのドームにまで鉄路が延びていて、この場所で樺太へと渡る船へ乗り換えていたということです。しかし、今となってはどこへも行けません。
まっすぐに延びたドームの最奥まで歩いてみても、その壁の向こうにあるのは荒々しい北の海なのです。
私たちはどこへも行けません。
それゆえの最果てです。
最果てを堪能したあとは、残念なことに私の暮らすコンクリートジャングルへ帰らなければなりません。旭川空港まで、長いドライブのはじまりです。
最後に、初日とは別の原生花園へ寄って、この旅の締めくくりとしました。
にわかに曇ってしまった空の下、湿原の遊歩道を歩きます。 人影はほとんどありません。
空と大地だけが視界にあって、その最も簡素で最も満ち足りた風景を、私は心から愛しています。
この旅はこれでおしまいです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。