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『harmonized finale』-何かが変わりそうな夜を経て-[CatherInTheRelay/感想/レビュー/考察?]

私の感想を書くにあたっての"姿勢"については、こちらの記事を御覧ください音楽の感想文を書くという変な趣味について

今回はナツさん主催の企画『Cather In The Relay』の記事になります。多くのもの好きが集まって行うユニゾン文章企画ですので、ぜひ他の方の記事も御覧ください!(推理編トレーラー解決編トレーラー企画まとめ記事)



本記事は後編になりますので、ぜひ前編からご覧ください!


また、本記事をお読みいただくにあたり、『銀河鉄道の夜』の話を理解いただければと思いますので、要約した記事についても掲載させていただきます。


今回も自分の意見200%でお送りします!


「推理」や「考察」なんて言葉で表せば聞こえは良いが
そのどれもが「正しいか・正しくないか」の判決を迫られる
もしもその判決が下されないのであれば
その"パズルはさながら闇に落ちた"ように言葉を変える

『harmonized finale』-陰謀論編-



『銀河鉄道の夜』が訴えるテーマとは?

宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」は、実は未完成の作品である。未完成と言うと語弊があるかもしれないが、著者が亡くなるその直前まで書かれていたため、作者が存命中に正しい形で脱稿されたものではないというものだ。

さて、そんな『銀河鉄道の夜』が訴えるテーマは諸説ありますが「本当の幸せとは何だろうか?」というものが有力です。

最終章で「幸せ」という言葉が多くの場面で出てくることから、私自身も主題はそこに置かれていると考えていました。

そんな文学作品をオマージュしたことを"ほのめかす楽曲"が『何かが変わりそう』であり、
"主題を語った楽曲"が次曲である『harmonized finale』であるならば?


では、そう感じた理由をこれから記載していこうと思います。



『harmonized finale』との共通点

前編記事でも記載しましたが、『銀河鉄道の夜』の結末は「主人公・ジョバンニが友人・カムパネルラと「どこまでも一緒にいよう」と誓ったものの、彼は亡くなってしまった」というものでした。

本楽曲は「I miss you(あなたを失って)を通過して」から始まり、「be with you(あなたと居る)を懇願して」で締めくくられます。

もし、”I”がジョバンニを、”you”がカムパネルラを指すのであれば、この物語との辻褄が合うと考えたのが取っ掛かりでした。

そして、何よりも「『銀河鉄道の夜』の根幹が全く『何かが変わりそう』に書かれていない」という違和感


前記事同様に、歌詞と物語で共通する部分について触れていこうと思います。


「harmonized finale 星座になる」

歌詞の中でも重要な言葉である「星座」は、もちろん『銀河鉄道の夜』とも関係があります。

本作では「ケンタウル祭」「白鳥の停車場」や「鷲の停車場」、「サウザンクロス」「サソリの火」といった言葉が出てきます。そのどれもが夏の星座であり、「ケンタウルス座」「白鳥座」「鷲座」「南十字星」「サソリ座」のことを指しており、それぞれの星座で必要な人々が乗り降りしたりすることで物語が進むのが本作品の特徴です。

すなわち、それぞれの人々が星、星座になるような表現が物語を通して行われているわけです。加えて、”鳥を捕る人”なる人物が物語には登場しますが、その人は「子ぎつね座」であるという説もこの物語のユニークなところであり、本歌詞と共通する部分であると考えることが出来ます。


「ずっと続けばいいな けど 終わりが近づいてるのもわかるよ」

最終章において、ジョバンニはカムパネルラに対して「ずっと一緒にいよう」と何度も繰り返し投げかける描写があります。最初は、ジョバンニが異常なまでにカムパネルラのことを好きでいるため、何度も繰り返し言っていいると考えましたが、捉え方によってはジョバンニはカムパネルラが居なくなってしまうことを予感して、何度も同じ言葉を投げかけていたと考えることも出来ます。歌詞を見た時にこの一節は、物語には書かれていないジョバンニの心理描写を巧みに表した文だなと強く感じました。


「大切な言葉ならポケットでそっと待ってる」

この歌詞については少し曲解が入りますが、『銀河鉄道の夜』において、列車内で車掌が巡回してそれぞれの乗客に行き先が書かれている切符を見せるように尋ねる描写があります。この描写において、ジョバンニは自分が銀河鉄道のチケットを持っている認識がないため自身のポケットに手を入れてそこにあった紙を車掌に見せると「これは何処まででも行ける特別な切符です」と言われる箇所があります。

大切な言葉の真意はわかりませんが、推測で言うのであれば「(カムパネルラと)どこまでも一緒に行きたかった」というジョバンニの思いがチケットとして、ポケットに仕舞われているという表現とも取れます。また、カムパネルラの視点からすると「(そこで)ずっと待っている」と問いかける描写でも同時にあるのかもしれません。


「光に包まれる街で」

楽曲最後のサビであり、最大の盛り上がりを迎える直前のフレーズ。
『銀河鉄道の夜』でジョバンニが丘の上で目が覚め、目から涙がこぼれていたと書かれた一文の後に、「街はすっかり灯りで照らされさっきよりも熟したようでした」と表現される一節があります。

物語は銀河での旅を終え、物語自体も終わりに向かう場面。
それと同じように、楽曲が終わりに向かうタイミングで同じように街が光で明るく照らされていることが謳われています。


「理由のない涙もあるけど 思い続けていれば会えるから」

また、こちらは前編でも記載しましたが、ジョバンニは銀河鉄道の旅から目が覚めた際には、銀河での旅の記憶が夢のように曖昧になっていることから、目からは”何故か”涙が流れているという状態でした。このことを指す歌詞がこの一文なのかもしれません。

また、その後ろに続く歌詞もまた、カムパネルラとの再会をいつかは成し遂げられるという想いが書かれた歌詞のようにも感じられます。


本楽曲が語る「本当の幸せ」とは?

さて、『harmonized finale』と『銀河鉄道の夜』の共通点について記載しましたが、本楽曲においては1つ忘れてはいけない要素があります。
それは、『harmonized finale』が劇場版『TIGER & BUNNY』の主題歌であるという点です。
田淵自身がもしもインタビューなどにおいて「ストーリーを意識した楽曲」と言っていた場合は、この説は根底から音を立てて崩れるのですが、本楽曲が発売された際のインタビューでは、以下のように語っています。

EMTG:ストーリーそのものを意識したところはありました?
田淵:ストーリーはそんなに聞いていなかったんですけど、曲が流れて終わった時に、作品を含めて、「あ、終わったんだ」っていう感じが出ればいいなって。テレビアニメから続いて映画になって、その終着点を歌で押し出せればいいかなって思いましたね。

ユニゾン流バラード!? タイバニと3度目のタッグを組んだ「harmonized finale」

よかった。ここまで読んでいただいといて、「歌詞はタイバニのストーリーを意識して作っている」なんて結末になったら、読まれている方も「???」ってなるし、書いてる方もたまったもんじゃなかった。

それはさておき、インタビューで本楽曲は「終着点」を表現した曲であることが謳われています。その想いはCDの帯にも現れており、帯には「いつかは必ず終わるから。」と書かれています。

歌詞も触れた通り「終わりが近づいている」や「さよなら」といった言葉が見られることから伺えますが、

はて、本当にそうだろうか?


確かに楽曲全体を通して、もの寂しげな雰囲気は感じるが「終わり」という意味合いはそれほど強く感じない。

むしろ、強く感じるのは「再生や再会」といったイメージではないだろうか?


本楽曲の歌詞で印象的な「ここからまた始まっていく」という一節

終わりを謳ったはずの本楽曲において
真逆の意味を表す一文


「終わりがあるから、始まりがある」
誰が言ったかわからない名言から着想を得ている可能性も考えられますが、


映画『銀河鉄道の夜』は最後

『ここより始まる』

という言葉で締めくくられている

ここから取られていたら?



また、本楽曲がもし「銀河鉄道の夜」をオマージュしている場合

本楽曲が語る幸せとは?


彼と一緒にいられた日々が続くこと

「今日が今日で続いていきますように」

これが本楽曲が謳っている

「本当の幸せ」なのかもしれません




謝辞

Cather In The Spy 10周年企画『Cather In The Relay』大変楽しく参加させていただ来ました。企画主催者のナツさんはもちろん、参加された沢山のもの好きの皆様、本当にありがとうございました。(毎日欠かさず読ませていただいておりましたが、感想は後日必ず…あと、全然推理当たらなかったw)
また、本記事それから前記事も読んでくださったもの好きの皆様にもこちらで感謝申し上げます。

この場を少しお借りして「陰謀論」という言葉を使った経緯について書かせてください。(こんなの書くから毎回無駄に長くなる)

インターネットの隅っこの隅っこにある本ブログですが、毎回記事を書くにあたっては"文字に残す"という責任を多少感じながら、下調べは可能な限り行って、考えた説について自信を持って投稿しています。しかし、今回の『harmonized finale』については、少々異なる感覚で書いておりました。

考察などを書く時に感じる「歌詞と集めた情報がハマっていく感覚」とは異なり、今回は「歌詞を集めた情報にハメ込んでいく感覚」に近かったのが大きな違いかもしれません。

というのも、本楽曲をある現存する作品のオマージュと考えて記事を書こうとした場合「星が物語に関係していて、主人公と親密な関係にある人物が悲しい結末を迎える」といった要素があれば、今回のような記事はある程度形になってしまうと思ったためです。

なので、今回は考察ではなく”陰謀論”という記載にしました。個人的に「陰謀論」を見聞きするのは嫌いじゃないのですが、毎回思うのは「めっちゃおもろいけど、あまりに出来過ぎじゃね?」ということと、「結局、本当かどうかは当事者が口を開かない限りわかんないじゃん!」っていうことです。水曜日のダウンタウンの「松本人志 ロシアのスパイ説」なんて最たる例です!(わかりますかね?この例え?)

今回はそれに近しい感覚が自分の中にあったので、そう記載いたしました。これを書きながら思いましたが、「陰謀論」と「推理・考察」なんて本当に紙一重の差なのかもしれません。ことユニゾンの楽曲記事については、「一聴じゃわからない贅沢な暇つぶし」の成れの果てなので、尚更かもしれません。

実はもう少し色々書きたかったことが最後の方あったのですが、心が折れたので今回はこの辺までとさせていただきました。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
こういった解釈もできるのかも?くらいで楽しんでいただければ幸いです!

UNISON SQUARE GARDEN 20周年本当におめでとうございます
そして、Catcher In The Spyも10歳の誕生日おめでとう


おまけ!

「カムパネルラ」
イタリア語でCampanellaは「鐘」を意味する単語

かくしてまたストーリーが始まる
祝祭の鐘はなる

kaleido proud fiesta


『銀河鉄道の夜』を代表する花「リンドウ」は8月から11月ごろに開花すると言われており、季節としては秋の花になります

「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だね。」
カムパネルラが、窓の外を指していいました。

銀河鉄道の夜より

2014/8/27
夏の終わり、秋の始まりを予感する頃に『Cather In The Spy』は発売されました


字が汚いのでお見苦しいのですが...
こんな感じでした


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